【プレミア12】侍J応援団は“ONE TEAM” 選手いない阪神から最多参戦「負けは応援のミス」

プエルトリコ戦で3ランを放った鈴木誠也をベンチでお出迎えする侍メンバーたち【写真:Getty Images】

「日本を応援しているのだから」選手個人は関係なし

 野球日本代表「侍ジャパン」は台湾で「第2回 WBSCプレミア12」(テレビ朝日系列で放送)グループBのオープニングラウンドを戦い、無傷の3連勝でスーパーラウンドへ駒を進めた。連日熱戦が繰り広げられたが、戦っていたのはグラウンドの監督コーチ陣や選手だけではない。異国の地の左翼スタンドからは、侍ジャパンを鼓舞する声援が響いていた。

「絶対勝つぞ日本! きょうも勝ちましょう!」。6日、プエルトリコ戦が行われた桃園国際野球場の左翼席には日本人の応援団が駆け付けていた。トランペットに太鼓、旗振り……。その光景は日本で見るものと全く同じだ。代表の久保芳秀さんによると、この応援団は日本野球機構(NPB)の特別許可により12球団の応援団から有志で集まったという。

 台湾に遠征してきたメンバーは13人。最多は阪神の応援団の5人だったという。今回の日本代表チームには惜しくも阪神からの選出がなかったが「そんなのは関係ないです。選手個人ではなく、日本チームを応援しているのだから」と久保代表。クライマックスシリーズではライバルだったDeNAや巨人の選手たちも、今は同じチームのメンバー。それは応援団にとっても同じだった。

 今回の侍ジャパンはロッテと阪神を除く10球団から選手が招集されている。応援団はその選手たちの応援歌や各球団のチャンステーマをすべて覚えて演奏した。「(曲を)覚えてくださいとこちらからいうわけではなく、自主練をしてくれている」。メンバーは会社員から自営業まで様々な職種が集まる。それぞれが忙しい日常の合間を縫い、各応援団員同士で教え合ったり、自主練で腕を磨いたりしてきた。それだけ代表の応援にかける思いは強いのだ。

 そもそも、レギュラーシーズンはペナントや日本一の座を争うライバルチームの応援団同士。一体、どのように交流を深めているのだろうか?

応援団同士の軋轢は過去の話「今は横の繋がりが強い」

「シーズン中も毎試合、応援団同士は挨拶をしにいっています。それにオールスターではセントラル、パシフィックで一緒に応援するし、ウエスタン、イースタンで分かれる時もあり、応援歌を教え合って覚えるタイミングにもなっている」。以前は応援団同士で軋轢があったこともあるが、それは過去の話。「昔はいがみ合いもあったけれど、応援団も変わった。今は横の繋がりが強い」と、それぞれが交流を持っているという。

 応援団も侍ジャパンが勝つために、異国の地までやって来ている。5日のベネズエラ戦は8回に6点を奪って逆転するまで打線は抑え込まれ、投手陣も4失点と苦しい試合展開に。この日の試合後、応援団は“反省会”を開き、この日の応援について話し合ったという。

「今日(6日)は早い段階で点を取ろうと、ミーティングで話しました。試合に負けたら試合の途中で応援の気持ちが切れたんじゃないかとか、応援でミスがあったからだと思います。応援団がいなくて勝てるなら、僕たちはいりませんから」。心はグラウンドで一緒に戦っている。会話こそ交わす機会はないが選手とは“チームメイト”なのだ。

 その応援の力に背中を押されたのか、プエルトリコ戦では3回に鈴木誠也外野手が3ランを左翼スタンド中段に叩き込み、侍ジャパンは4-0で勝利。7日のチャイニーズ・タイペイ戦にも8-1で勝利し、3連勝でスーパーラウンド進出を決めた。悲願の優勝を目指す気持ちは選手も、応援団も同じ。台湾の地まで駆けつけた応援団もまた、懸命に戦っていた。(臼井杏奈 / Anna Usui)

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