「カジノ」論議低調 閣僚辞任で空転 野党追及戦略も一因

カジノを巡る論戦が活発化しなかった衆院の予算委員会=6日、国会

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を巡る臨時国会の論戦が低調だ。カジノ管理委員会の人事案が提示されないことに加え、相次ぐ閣僚の辞任で審議が空転。野党は「カジノ隠しだ」と政府に反発するが、閣僚の言動に対する追及を優先させる野党自身の戦略も一因と言える。12月9日の会期末まであと1カ月。横浜市をはじめ各地で誘致競争が激しくなる中、IRが抱える課題を問う議論は深まらないままだ。

 「臨時国会中に人事案を提示することを目指し、任務にふさわしい人材について政府内で検討を進めていきたい」

 8日の参院予算委員会。日本維新の会議員の質問に対する政府側の答弁はこれだけにとどまり、質疑はわずか数分で終わった。6日の衆院予算委でも野党議員がカジノ管理委について質問したが、メインのテーマにはならなかった。

 政府は、IRの立地区域に関する選定基準などを定めた基本方針案を9月に公表。10月にはカジノ規制を担うカジノ管理委設置を来年1月7日と閣議決定した。臨時国会は管理委の在り方などを巡る活発な議論が見込まれていたが、国会同意が必要な委員長を含む委員5人の人事案はいまだ提示されていない。

 「人事案はしっかり議論する必要がある。政府は早く提示すべきだ」。野党議員には、カジノに対する世論の反発を避けたい政府が意図的に提示を遅らせているとの見方もくすぶる。

 議論が活発化しない背景には、「政治とカネ」の疑惑を巡って相次いだ閣僚の辞任も影響している。

 菅原一秀前経済産業相と河井克行前法相が辞任し、国会審議は一時空転。立憲民主党の真山勇一氏(参院神奈川選挙区)は法務委員会でカジノの問題点をただす考えだったが、法相辞任で審議日程が過密化し、今国会で質問に立てるかも不透明という。「閣僚が辞任する間にも、開業に向けた手続きはどんどん進んでしまう」と危機感をあらわにする。

 一方、IR整備法を所管する衆参の内閣委員会は、野党議員の質問通告が事前漏えいした問題で、「流出なら責任を取る」と明言した北村誠吾地方創生担当相への追及が先鋭化。立民の早稲田夕季氏(衆院4区)や国民民主党の議員が収益上の問題点を取り上げるなどしたものの、IR論戦は低調だ。ある議員は菅義偉官房長官(2区)に横浜市のIR誘致をただす質問を準備していたが、事前漏えい問題で持ち時間が終わり、IRには触れなかった。

 「事前漏えいは永田町の問題で国民には響かない。足元の問題をしっかり取り上げないとだめだ」。立民議員の一人は党執行部が閣僚の責任追及を重視しているとし、カジノを巡る審議が活発化しない現状に不満を募らせる。

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