MotoGP:ウイーク前から自信を覗かせていたビニャーレス。13番手から2位を得たマルケスのタイヤ選択

 第18戦マレーシアGPを制し、2019年シーズン2勝目を記録したマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)。一方、王者のマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は2019年ワーストグリッドとなる13番手からスタートしたが、序盤で一気に追い上げて最終的には2位表彰台を獲得している。そんなマレーシアGPを二輪ロードレース専門誌『ライディングスポーツ』が分析する。

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 ビニャーレスが第18戦マレーシアGPで2019年シーズン2勝目を記録した。ビニャーレスは、前戦第17戦オーストラリアGPのレース中盤以降をリードし、最後にマルケスの先行を許したものの、最終ラップの最終セクターまでマルケスとトップ争いを繰り広げた末に転倒リタイアに終わり、オーストラリアGP連勝を逃したビニャーレスだが、「転倒ノーポイントに終わったが、多くのことを学んだ。ペースもよかったし、マシンも好調さをキープしている。セパンでもう一度、挑戦したい。準備は整っている」とマレーシアGPを前に自信をのぞかせていた。

 一方、オーストラリアでシーズン11勝目を記録したマルケスだが、2018年のマレーシアGPでは優勝しているものの、セパンはマルケスにとっては優勝経験の少ないコースのひとつ。125cc時代の1勝、MotoGPクラスで2勝と通算3勝に止まる。

「セパンもヤマハとドゥカティが得意とするサーキット。目標は再び優勝争いをすることだが、どのような週末になるか状況を見ながらセットアップを合わせていきたい」と、マルケスは慎重な構えを見せていた。

 ヤマハサテライト、ペトロナス・ヤマハSRTのファビオ・クアルタラロ、フランコ・モルビデリが初日からセッショントップタイムを記録して行くなか、ビニャーレスもマルケスもフリー走行を通して、レースに向けた準備を着実に進めていたが、マルケスはアベレージはいいものの、一発のタイムでやや苦戦気味。ビニャーレスは一発のタイムもアベレージも満足する結果を得ており、この差が予選Q2の結果の差となって現れる。

ファビオ・クアルタラロの後ろにピタリとつけるマルク・マルケス

 予選Q2ではフリー走行から好調だったクアルタラロをマークしていたマルケス。2回目のアタックもクアルタラロの背後についてコースインする。後ろに着かれることを嫌ったクアルタラロは、ペースを落として走行し、マルケスを先に行かせようとするが、マルケスは離れない。残り時間がなくなり、クアルタラロはラストアタックを開始。マルケスも続いてアタックに入るが、2コーナーでハイサイド転倒を喫し、結果的に2019年シーズンワーストグリッドとなる11番手に止まった。

「1コーナーから2コーナーへの切り返しが少しアグレッシブすぎたかもしれない。正直、転倒したことよりも11番手からのスタートになったことが残念。体中が痛いが、大丈夫。決勝に向けての準備は進んだが、さすがに11番手からのスタートは難しい」と、マルケスは厳しい表情を見せた。

 一方、ビニャーレスはクアルタラロにポールポジションこそ譲ったものの、0.103秒差の2番グリッドを得た。「フロントローからスタートすることが最も重要だ」とビニャーレス。

マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

「今日のところはとりあえずいい仕事ができたと思う。FP3(フリー走行3回目)が絶好調で、予選Q2でも今の自分にできることはすべてやり切った。わずかコンマ1秒差の2番手なので十分に満足している。明日はさらに前進し、決勝では1コーナーでトップに立って、序盤から全力でプッシュしていきたいと思う」

 決勝ではビニャーレスが1周目からトップに立ち、マルケスも好スタートで1周目のコントロールラインを2番手で通過。しかし、この時点でビニャーレスとは0.485秒の差があり、さらにマルケスはジャック・ミラー(プラマック・レーシング)と接戦のポジション争いを余儀なくされたことでペースを上げられず、ミラーを振り切るのに序盤の3周あまりを費やし、ようやく単独2番手となったときには、ビニャーレスに約1秒半ほどのリードを取られていた。

 5周目にベストラップを記録して追い上げるかに見えたマルケスだったが、序盤のバトルでタイヤを消耗しており、ビニャーレスとの差を縮めることはできない。さらにミスもあってその差はさらに広がり、ビニャーレスの独走を許してしまった。

マルケスに約3秒半のリードをとって2019年2勝目を上げたマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

 ビニャーレスは終盤、マルケスに約3秒半のリードをとって、オランダGP以来となる2019年シーズン2勝目を記録した。「金曜日からしっかりと準備を整えてきた」とビニャーレスは決勝レースを振り返る。

「1周目を終えた時点で大きな可能性を感じることができた。序盤からリードを広げ、そのあともプッシュし続けた。本当にいい仕事ができた。前回のオーストラリアも勝てると思って臨んだレースだったが、とても悔しい思いをした。それだけに今日こうして優勝できたことがうれしい」

 一方、最終的に2位でフィニッシュしたマルケスは「すばらしいレース、すばらしい1周目だった。2015年のムジェロでは予選13番手から追い上げたが、それに並ぶ最高のレースだったかもしれない」とコメント。
「昨夜、去年のレースの自分の走りを見て、どういう走りをしたかを思い出した。今日はとてもいい1周目になったが、最初の3周でタイヤが消耗してしまい、少しタイムを落した。ビニャーレスは僕たちより速いペースで走っていたから、今日の目標を表彰台獲得にしたんだ」

13番手から2位表彰台を獲得したマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)

 決勝は前日のほぼ同時間帯の予選よりも9度ほど路面温度が高く、ビニャーレスを含めてほとんどのライダーが前後ミディアムタイヤをチョイスしたが、マルケスは序盤にポジションを挽回するためにリアにソフトタイヤを選んでいた。レース終盤はストレートでもリアタイヤがスピンするような状況だったというが、この選択が2位表彰台を引き寄せたとも言えるだろう。

 ビニャーレスはこの勝利でアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)を交わしてランキング3位に浮上した。マルケスは獲得ポイント数を395ポイントとし、MotoGPクラスの年間最多獲得ポイント記録を更新。次戦の最終戦バレンシアGPは、ビニャーレスにとっても、マルケスにとってもホームレースとなる。

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