私道封鎖

 学生のとき、民法を学んでいて袋地、囲繞地(いにょうち)という言葉を初めて知った。袋地は公道に接していない土地で、それを取り囲んでいるのが囲繞地。袋地に住む人は他人の土地を通らないと外に出られないので、囲繞地の通行権が認められている。とはいっても、通行を妨害されないかと不安だろうなと思った▲これと同じようなことが長崎市内で起こっている。青山町の住宅団地を通る私道の所有者が住民に私道の買い取りや通行料を求め、住民と対立。所有者は車が通れないように道の一部を封鎖してしまった▲歩いて通ることはできるのだが、車での往来ができなくなった不便さは大変なものだろう▲住民側は通行妨害の禁止などを求め長崎地裁に仮処分を申し立てた。裁判所は近く判断を示すとみられているが、ここまでこじれる前に何か手だてはなかったのか▲古い団地では、同様に内部を通る道が私道になっているところも多いという。ネット上では、住民や所有者への賛否、行政の対応への批判とともに、私道に面した団地で暮らしている人から不安の声も上がっている▲長崎市の田上富久市長は、全国的な課題だとして全国市長会で問題提起を検討する考えを表明した。一団地の問題ではあるが、どのような結末になるのか全国から視線が注がれている。(豊)

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