メクル第412号 「日本の強さ見せる」 レスリングU15アジア選手権代表 須田宝

アジア選手権で「日本の強さを見せたい」と誓う須田宝さん=大村市内の自宅ジム

 6月の全国中学レスリング選手権(せんしゅけん)男子52キロ級で、日本一に輝(かがや)いた大村市立郡(こおり)中3年の須田宝(すだたから)さん(14)=OMURA(オオムラ) TOP(トップ) TEAM(チーム)=が、22~24日に台湾(たいわん)で開かれる「U15アジア選手権」に日本代表として出場します。「日本の強さを見せて、優勝(ゆうしょう)して帰ってきたい」。初めての国際舞台(こくさいぶたい)を前に、決意を新たにしています。

 レスリングを始めたのは5歳(さい)の時。二つ上の兄・快晴(かいせい)さんの友人に誘(さそ)われて、兄弟一緒(いっしょ)に始めました。最初は試合に勝てなくて、あまり興味(きょうみ)を持てませんでした。

◆因縁(いんねん)相手に雪辱(せつじょく)

 小学2年生になり、キックボクシングが好きな父洋一(よういち)さん(41)が自宅(じたく)に作ったジムなどで自主練習するようになると、徐々(じょじょ)に勝てるように。全国少年少女選手権で3位に入り、初めてメダルを獲得(かくとく)。「相手を倒(たお)して勝つことが面白くなった」。5年の全国大会前には「ぜったいなってやる全国1位」と宣言(せんげん)し、見事に有言実行を果たしました。
 中学生になって立てた目標は「中3で日本一を取る」。1、2年のときに出場した全国中学選手権では、いずれも4回戦までに敗退(はいたい)。悔(くや)しくて、高校の合宿に参加して自らを鍛(きた)えました。高校生に勝つなどして自信をつけると、2年の11月、全国中学選抜(せんばつ)選手権で優勝。最終学年の全国中学選手権を迎(むか)えました。
 初戦から準(じゅん)決勝までの全5試合を10-0と圧倒(あっとう)。決勝は、小学6年の時、準決勝で負けた西内悠人(にしうちゆうと)さん(高知)が相手でした。今度は負けまいと、自分から積極的に攻(せ)めました。珍(めずら)しい左利きからの片足(かたあし)タックルなどでポイントを先取し、見事6-2でリベンジ。またも宣言(せんげん)通り日本一を手にし、最優秀(さいゆうしゅう)選手にも輝(かがや)きました。

◆久々(ひさびさ)の敗戦に涙(なみだ)

 そんな飛躍(ひやく)した1年の中でも、とくに印象に残っているのは今年9月の茨城(いばらき)国体。高校生がほとんどの少年男子フリースタイル51キロ級に、中学3年で出場しました。1、2回戦で高校生を倒(たお)し、準々決勝進出。本気で優勝を狙(ねら)っていました。
 4強を懸(か)けた相手は、この夏の全国高校総体(そうたい)王者。「自分が攻められないくらい攻めてきた」。2-7と先行されましたが、残り50秒から反撃(はんげき)。鋭(するど)いタックルから、5-7まで追い詰(つ)めました。が、抱(かか)えた相手をひっくり返せば…というところで、無情(むじょう)にも試合終(しゅう)了(りょう)。久しぶりの敗戦に、悔し涙(なみだ)が止まりませんでした。「相手にうまさがあった。これから自分が身につけていかないといけない部分」と、今後の課題を見つけました。

9月の国体で、高校生相手に片足タックルからポイントを挙げて勝利

◆練習漬(づ)けの毎日

 課題克服(こくふく)のため、月・水・金曜は所属(しょぞく)チームの道場で約2時間、浜崎宏監督(はまさきひろしかんとく)(43)らとみっちりスパーリング。4歳から中学3年までの男女約20人が所属するチームの最年長として、子どもたちの面倒(めんどう)を見たり、教えたりすることも欠かしません。
 火・木曜は、自宅ジムのロープや公園のベンチなどを使い、洋一さんが組むフィジカルメニューをこなします。週末は、県内外の高校に出稽古(でげいこ)。学校生活以外の時間のほとんどをレスリングに費やしています。
 「努力した成果がそのまま結果に出る。きついけど、結果につながると思えば頑張(がんば)れる」。自宅ジムに集まって練習を共にする地元の子どもたちや大人の人たちの存在(そんざい)も、支(ささ)えになっています。
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 大みそかに呼吸(こきゅう)不全の状態(じょうたい)で生まれ、生死をさまよった宝さん。医師(いし)から「障害(しょうがい)が残るかも」と言われましたが、1カ月の入院の末にすくすくと育ち、今や日本一のレスラーにまで成長しました。将来(しょうらい)は「オリンピックで金メダル」との夢(ゆめ)を描(えが)いています。
 その夢に向かい、次に挑(いど)むはアジア選手権。韓国(かんこく)やインドなど強豪国(きょうごうこく)は多く、強引に大技(おおわざ)を繰(く)り出す選手との対戦もありそうです。「自分から攻めて、決めるところを決めたい」-。世界のトップを目指し、大きく羽ばたいていきます。

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