【プレミア12】侍J、スーパーRでは「内角の使い方」が鍵か 前回大会の韓国戦も“教訓”に

野口氏が気がかりと指摘した侍ジャパンのオリックス・山本由伸【写真:Getty Images】

鈴木誠也の活躍は「非常に大きい」も…「ちょっと気がかりなのは今永と山本」

「第2回 WBSC プレミア12」(テレビ朝日系列で放送)はオープニングラウンドの全日程が終了し、11日からスーパーラウンドがスタートする。野球日本代表「侍ジャパン」は台湾で行われたオープニングラウンドを3戦全勝で首位通過。スーパーラウンドでは、同組だったチャイニーズ・タイペイを除くメキシコ、米国、韓国、オーストラリアの4か国と対戦する。

 2009年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)以来の世界一を目指す侍ジャパンだが、米大陸とアジア(開催国の日本を除く)の国にはそれぞれの最上位に来年の東京五輪出場権が与えられるため、どのチームも必死。激しい戦いが予想されるスーパーラウンドを勝ち抜くためのポイントはどこになるのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は「内角の使い方」がポイントになると指摘する。

 日本は2連勝同士の対戦となった7日のチャイニーズ・タイペイ戦に8-1で快勝。4番の鈴木が2戦連発の2ランを含む3安打4打点と活躍し、3試合目で初の2桁11安打を記録するなど打線も上向きだ。野口氏は「鈴木は完全に乗りましたね。普段の鈴木誠也というより、調子のいい時の鈴木誠也になりました。『誠也に回せばなんとかなる』とチーム全体の雰囲気がなるので、非常に大きいと思います」と言う。

 ただ、1失点で凌いだ投手陣については「ちょっと気がかりなのは今永と山本です」と指摘。先発の今永は3回4安打と走者を出しながら無失点に抑えたが、最終回に登板した山本は1回2安打でこの試合唯一の失点を喫した。

「今永は単純にコントロールの問題ですね。力みからなのか、球が暴れすぎた。ただ、今永はシーズン終盤もあまり良くなかった。コントロールミスで、右の内角を狙った球が真ん中高めに入って打たれたりとか、左の外角を狙った球が高めに入って打たれたりとか、そういう感じのやられ方はしていました。それが、この試合でそのまま出てしまった感じでした。スーパーラウンドに向けて、なんとか調整してほしいですね。彼が頑張ってくれないと、日本の左の先発が苦しいのは間違いないですから」

メキシコ、米国、韓国との対戦では「内角の使い方、使いどころがすごく重要になってくる」

 一方で、9回に登板した山本については配球面で気がかりな部分があったという。この試合では會澤が先発マスクを被ったが、野口氏は「8回までは配球も本当に良かったと思います。ただ、9回の山本のところだけ、急にインコースが少なくなった感じがしました」と振り返る。

「もう少し勇気を出してインコースを攻めてもいいのかなと思いました。山本は、内角を攻められるボールが真っ直ぐだけではない。右打者の内角なら、真っ直ぐとツーシーム両方いける。左打者なら真っ直ぐとカットボールがある。攻める球種としてはそれぞれ2つあります。球の強いピッチャーだけに、やはり内側を使うというのは大事なことなのではないかなと思います。この試合では点差があったから大事にならずに済みましたが、1点差の8回なら同点になっていたわけですから。

 何が何でも内角で打ち取るというわけではなくても、外を生かすための見せ球としての内角でもいいわけです。内角の強い球を大事にしていったほうがいいのかなと感じました。山本に関しては、去年はセットアッパーだったのが今年から先発に変わって、その時点で内角の使い方を変えてきていると思います。内角を攻められるピッチャーだけに、というところですよね」

 野口氏が、国際大会で内角の使い方が大事だと訴える理由はいくつかある。7日に、同じB組で消化試合となってしまったベネズエラ-プエルトリコの一戦を解説した際にも、改めて気付かされることがあったという。

「ベネズエラとプエルトリコのバッテリーでも、内角を攻めて外角勝負、という配球をしていました。内角を見せて意識させるというのが必要なことなのだろうと改めて思いました。中南米系の選手との対戦では、そういう球が必要なんだろうなと。メキシカンリーグなどのレギュラーシーズンでやっていた選手たちには、そういう相手に対してやってきているものが身についているので、ああいうところでそういう配球が出るのだと思います。なので、攻め方は参考にしたほうがいいのかなということですね。

 メジャーリーグを見ていても、スライダーばかり投げるピッチャーはポストシーズンでやられてしまうので使いづらくなる、ということがよくあります。そういうピッチャーは、レギュラーシーズンでは抑えていても、ポストシーズンでは出しづらい。スーパーラウンドでは、メキシコ、アメリカに加えて韓国も中南米系に近い選手が多い。前回のプレミア12みたいに、大谷のような圧倒的な真っ直ぐを持っているピッチャーが出てくるなら外だけでいいかもしれませんが、今回はそうはいきません。内角の使い方、使いどころがすごく重要になってくる」

前回大会の準決勝では9回に逆転されて韓国に敗戦「変化球ばかりを打たれた」

 韓国に9回に逆転された前回大会の“教訓”もあるという。

「前回のプレミア12の準決勝では、9回に少し弱気になったのか、変化球ばかり韓国の打者に打たれました。変化球勝負はいいかもしれませんが、その過程の中で内角を意識させることは改めて大事だと感じます。あの試合でも、則本(楽天)は8回は真っ直ぐをバンバンいって抑えて『今日は大丈夫だ』と思いましたが、9回になったら変化球が多くなって打たれてしまった。最後の仕上げは変化球でも、その途中でしっかり使っておかなければいけないものは使わないといけません。韓国に逆転された9回を教訓に、ということは必要になってきます。

 今回、選出されているのは、そういうリードができないキャッチャーではない。3人とも、それがしっかりできるキャッチャーなので。あとは勇気ですね。そして、投手陣もそれが投げミスになるようなメンバーではありません。しっかり投げきれる投手ばかりですから。ここまでも投手陣は良い働きをしていますが、インコースをうまく使うことによって、もう少し楽になるかもしれません」

 決勝にはスーパーラウンドの上位2か国が進出する。1試合も負けられない戦いになることは間違いない。世界一に向けて、侍戦士たちの「勇気」もポイントの1つになりそうだ。(Full-Count編集部)

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