豊田佐吉の“織機革命”以来、世界をリードし続ける「豊田自動織機・刈谷工場」(愛知県・刈谷市)
お昼のベルが鳴り、皆さん足早に食堂へと向かう。そこは約1000人を収容する巨大食堂、ものの10分ほどで満席になる。
この日の特別メニューは「近大ぶり丼」。養殖魚の研究で知られる近畿大学などとコラボした一品で脂がのった切り身が美しい。他にもパスタなど数多くのメニューが並ぶ。
1000人もいたら、さぞかしキッチン側には長い行列ができて大混雑かと思いきや・・・あれ?それほどでもない。実はこの食堂には、混雑を緩和する工夫が詰まっているのだ。
その一つが、ホール側でパスタを調理するスペース。すべてのメニューをキッチン側で提供すると大勢の人で溢れかえってしまう。そこで人気メニューの一つ、パスタをホールの端に移動させたのだ。
サラダバーやスープバーもホール側にある。自分で取り分けねばならないメニューは、手際の良し悪しが人の流れを左右する。そこで、この2つもホール側に持ってきたのだ。
混雑緩和はそれだけじゃない。会計は「オートレジ」。食器の裏に磁気のタグが付いていて、レジ台にのせるだけで金額が表示される。支払いは従業員証をかざすだけ。効率よく人が流れていく。
さらに食べ終えた食器は“ベルトコンベヤー”にのせるだけで洗い場へと直行。いかにも工場らしい“ムダ減らし”の数々である。
「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」。
これは自動織機を発明した豊田佐吉の精神を言葉にしたものである。言い換えれば、「常に“創意工夫”を怠るな」という意味合い。佐吉の精神は“食堂”にも息づいていた。 【工場fan編集局】