マイカー購入はローンを組むか、運用資産を崩して一括か?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、車の購入を考えている26歳の男性。欲しい車を手に入れるためにローンを組むか、投資に回しているお金を切り崩して一括購入するかで悩んでいます。マネーフォワードから生まれたお金の相談窓口『mirai talk』のFP秋山芳生氏がお答えします。

車の購入をする場合に、一括で購入すべきか、ローンで購入をすべきか悩んでいます。投資に回しているお金を崩せば、欲しい車を一括で購入できますが、その場合、投資額が著しく低下しリターンが見込めなくなるため、ローンを組んだ方が良いかと思い始めました。

現在、AIによる投資に400万円(利回り3~5%程度)、株式に100万円を投資しています。いずれも、長期的に運用するつもりです。AI投資の方は手続きをすれば、数日のうちにお金を引き出すことが可能です。ちなみに将来、結婚する予定はありません。

<相談者プロフィール>

・男性、26歳、未婚

・職業:会社員

・居住形態:賃貸(一人暮らし)

・毎月の世帯の手取り金額:24万円

・年間の手取りボーナス額:148万円

・毎月の世帯の支出目安:16.5万円

【支出の内訳】

・住居費:5.3万円

・食費:3万円

・水道光熱費:0.6万円

・教育費:なし

・保険料:なし

・通信費:0.7万円

・車両費:0.5万円

・小遣い:3万円

・日用品:0.5万円

・その他:2.9万円

【現在の資産状況】

・毎月の貯蓄額:7.5万円

・現在の貯蓄総額:250万円

・現在の投資総額:500万円

・現在の負債総額:なし


秋山:運用しているお金を取り崩して車を購入すべきか、ローンを組むべきかというご質問ですね。ご質問いただきありがとうございます。

車は資産になる?

現在5千円ほど自動車関連の費用がありますが、カーシェアリングやレンタカーを利用されているのでしょうか? 今回は、自分の車は持っていないが新たに購入を検討しているという前提で回答していきたいと思います。

住んでいる環境や家族構成などによって車の必要性が変わってきますが、「本当に車が必要なのか?」「乗る頻度は月にどれくらいなのか?」がしっかりイメージできていないと、「買ったけれど結局乗らなかった……」「タクシーを使った方が安上がり……」ということもあるので注意が必要です。

また車を「資産」だと考える方もいますが、ランニングコストがかかる上に、売却の際に価格が下がっていることが多いので、費用がかかる「負債」となることを意識してください。

それでも「車が必要!」ということでしたら、車を買う場合にどうしたら良いかという視点でお答えしていきたいと思います。

金持ちのほとんどは中古車を購入?

車の購入費はいくらを想定しているのでしょうか? 現金が250万円あり、現金では足りない分を投資から切り崩して出そうと考えているのであれば、高額な車の購入を考えてらっしゃるのだと思います。

車の購入は、新車か中古車によって値段が大きく異なります。新車は「新車プレミアム」がのっていると言われ割高になりますが、買った瞬間に中古になるので価値が下がりやすいです。リセールバリューを考えても、新古車や中古車のほうが価格が下がりづらいと言われています。

「億万長者で最新モデルの車を買うのは4分の1以下である」

この一節はトマス・J・スタンリーとウィリアム・D・ダンコが、アメリカの億万長者を調べた名著『となりの億万長者』からの引用です。本著によると、金持ちのほとんどが新車を購入せず中古で済ましていると言われています。資産を増やそうとしているのであれば参考になされてはいかがでしょうか。

値引きを引き出す、あの手この手

また購入したい車種は決定しているのでしょうか? 複数の車種を比較してみることで自分にぴったりの車に出会えることが多いので、ぜひ比較をしてみてください。

一部の車やディーラーを除き、新車でも中古車でも、値引き交渉が可能なことが多いです。特に他社の車と比較していると伝えてから価格交渉することで、「あちらのディーラーには負けられない!」と交渉に応じてくれることもあります。

新車の場合、オプションも含めた金額合計が見えてから値引き交渉することが重要です。値引きし終わったあとに追加でオプションなどをつけると、オプションに対して値引きが受けられないこともあります。

また、同じ車種でも、それぞれの店舗やディーラーによって値引き額が異なることもあります。時間があれば同じ系列の複数の店舗に行って比較してみるのも良いでしょう。

ランニングコストを考慮した購入計画を

また購入後のランニングコストについては、以下が発生すると思います。

・駐車場
・ガソリン費
・自動車保険
・高速料金(ETC)
・外出時のパーキング代
・車検
・自動車税
・その他メンテナンス費用(洗車、オイル、タイヤ交換など)

現在、貯蓄や投資にまわせている金額が7.5万円とのことですが、この中から車のランニング費用を出すとすると、貯蓄や投資にまわせるお金が少なくなっていくと思いますので、しっかりと計算してからの購入をおすすめします。

自動車保険に入るならネット系損保がおすすめです。保険料を抑えられることが多いので、複数社比較されると良いと思います。

ただし、自動車保険の中でも「車両保険」は、必要のないケースが多いです。車両保険は事故があった際に車両の修理代を保険でカバーしてくれるものですが、使ってしまうと等級が下がり、保険料が上がってしまいます。また自分の車の修理については、5万円まで、10万円分までが免責となっていることも多く、擦り傷などの小さな事故だった場合は使えなかったりするので、使い勝手が悪い場合もあります。

長期保有前提の投資なら、税制優遇制度の活用を優先させて

ご質問いただいている、車の購入のために投資を切り崩すべきかですが、私としてはあまりおすすめできません。

ご質問者様も意識なさっていますが、資産形成は長期投資が王道といわれています。投資の目的にもよりますが、直近で使う可能性のあるお金は運用にまわさないこと、そして“投資の握力”とも言いますが、長期間保有する投資の姿勢をつくることが肝要です。簡単に売ってしまう癖がつくと長期投資が成功しない可能性もありますので、慎重に考えていただければと思います。

また、AIによる投資とのことですが、ロボアドバイザーを活用しているのでしょうか? ロボアドバイザーは、自動でポートフォリを形成してくれたり、リバランスをしてくれるので便利ですが、自分でインデックスファンドを組み合わせた場合に比べて、手数料が割高になることや、つみたてNISAやiDeCoに対応していないというデメリットがあります。

最近は、投資信託の信託報酬が非常に安くなってきていますし、長期で資産を形成したいのであれば、低手数料で税制優遇制度をしっかり取り入れていただければと思います。

運用資産は崩さず、ローンを組んだほうがいい理由

理想的には、現在の預貯金の範囲内で購入するのが良いと思います。しかしながら、どうしても欲しい車があるのであれば、足りない分はローンを検討することになるかと思います。現在は低金利が続いているので、運用で得られる期待値より、金利の低いローンを組めるなら借りたほうが有利になることがあるからです。

自動車ローンには、ディーラーの提携ローンや銀行のマイカーローンなどがありますが、総じて銀行や信金のマイカーローンの方がディーラーローンより安いことが多いです。

ディーラーで車を購入する場合は、ディーラーローンを勧められることが多いと思いますが、そのディーラー経由で借りなければならないわけではありません。冷静に複数の金融機関を調べて比較することが重要です。マイカーローンには1%台の金利もあるので、より安いものを選択してください。

最近では残価設定ローンなど、下取りを前提にしたローンを勧められることも多いと思います。残価設定ローンはあらかじめ3~5年後の買取価格(残価)を決めて、その差分を支払っていくものですが、このローンは残価もふくめた購入費用全体に利息が発生します。また、3~5年後に乗り続ける場合に買取価格を含めると、残価設定ローンでない場合に比べて割高になることもあるので注意が必要です。

今しかできないことにお金を使うのも大切

ここでもう一度、先ほどのランニングコストと自動車ローンの毎月の返済額を合算して購入すべきかということと、購入する場合はいくらの車にするのかを考えていただければと思います。

筆者も20代の頃に憧れの車を購入したものの、仕事が忙しくて月に数回しか乗ることができませんでした。そして、自動車ローンの支払いや維持費(ガソリン代、駐車場代、車検、自動車税など)がかさんで貯金がなかなかできなかったことを覚えております。

一方で、お金は使うものでもあります。貯蓄と資産形成だけが目的にならないよう、20代だからこそできることに使うのも良いことだと思います。車を所有して行動範囲が広がったり、人生を謳歌できることもあるので、ご自身にとって何が重要なのかを考えてバランスをとった判断をしていただければと思います。

以上、参考になれば幸いです。良き人生をお過ごしくださいませ。

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