勝田貴元にかかるWRCレギュラー参戦の期待。マキネン「不必要なプレッシャーはかけたくない」

 11月9~10日に行われたセントラル・ラリー愛知/岐阜2019。このイベントで総合優勝を飾った勝田貴元の2020年プランについて、TOYOTA GAZOO RacingWRTチーム代表のトミ・マキネンは勝田の2020年シーズンについて「不必要なプレッシャーはかけたくない」と述べるに留めた。

 2020年11月に開催されるWRC世界ラリー選手権第14戦『Rally Japan(ラリー・ジャパン)』を見据えたリハーサルイベントに位置づけられたセントラル・ラリー。設定された全14SSの一部区間は来年の本戦でも使用される可能性が高かったこともあり、エサペッカ・ラッピやエルフィン・エバンス、テーム・スニネンといったWRC参戦ドライバーもレッキ(下見走行)に訪れた。

 そんなセントラル・ラリーでは唯一のWRカーとなったトヨタ・ヤリスWRCが総合優勝。2020年ラリー・ジャパンに向けて走行データを蓄積した。

 マキネンは「週末を通して、素晴らしい経験をした。サービスパークや各ステージ、ロードセクションにも多くのファンが姿を見せてくれた。なにより、ラリー・ジャパンの復活をうれしく思っている」とセントラル・ラリーを総括する。

「2020年のラリー・ジャパンは我々のチームにとってホームラウンドとなるから、がんばりたい」

 優勝した勝田貴元も「今までヤリスWRCをドライブしてきたドイツやスペインとは大きく違うドライビングスタイル、クルマのセッティングが必要でした。来年に向けて、そのためのいいデータを持ち帰ることができましたし、僕自身のドライビングも大きく向上させることができたと思うので、収穫の多い週末でした」と述べている。

 その勝田は2019年シーズン第6戦チリのWRC2クラスで優勝したほか、第10戦ドイツ、第13戦スペインではヤリスWRCで最上位クラスに参戦するなど、大きくステップアップした1年となった。

「シーズン前半はR5車両を使った参戦がメインで、ラリー・フィンランドで初めてヤリスでWRCに参戦するチャンスをもらいました」と勝田。

「そこでクルマの乗り換えや、クルマ自体の違いなどを学びながら、その経験をR5でのドライビングに活かすこともできました。ペースノートについては、今年からダン(ダニエル・バリット)と組むことになって、いろいろな意味で新たな経験になりました」

「また、ダンはエルフィン・エバンス選手と長年コンビを組んでいたので、ワールドラリーカーを走らせるために必要なペースノートの内容などについても知っています。その点も踏まえ、ラリーごとに改善していきました」

「僕自身、ドライビングと経験値、ペースノートのすべてが成長した1年だったなと思います。これももちろん、トミ(マキネン)やチームがしっかりとしたプログラムを組んでくれたおかげです」

「一番印象に残っている大会はラリー・チリですね。チリは2019年がWRC初開催だったので、僕自身もラリー・ジャパンが復活した場合、どんな雰囲気になるのかなと思いながら臨んだんです」

「ラリー・チリは初開催だったにもかかわらず、本当に多くのファンがいて、ラリー人気の高さを感じました。ヨーロッパラウンドよりも盛り上がっていたんじゃないなと思うくらい、ファンの多さとアツさに圧倒されました。そんなイベントで優勝することができたので、今年一番印象的なイベントになっていますね」

 ヤリスWRCで参戦したWRCラウンドでも大きなミスなく完走するなど、着実な成長を感じさせる勝田。ファンとしてはWRC最上位クラスへのレギュラー参戦を期待したいところだが、育成プログラムを統括するマキネンは「不必要なプレッシャーはかけたくない」と述べるに留めた。

「ラリーは経験値がなによりも重要というモータースポーツのなかでも特殊な競技だ。そして経験を積むには、できるだけ多くマシンをドライブし、かつ集中して取り組む必要がある」

「我々はタカモト(勝田貴元)を鍛え上げるべくプログラムを展開している。(ヤリスWRCなど)彼にとっては新しい装備も用意し、とにかく学びの場を作り続けている。将来のことについて、彼に不必要なプレッシャーはかけたくないんだ」

「今回、セントラル・ラリーを訪れてくれたすべての人に感謝を伝えたい。タカにとって、この大会はいろいろな意味を持つイベントだったし、彼個人はもちろん、我々チームにとっても、来年に向けた貴重な経験になった」

「今回集めたインフォメーションを活用し、来年のラリー・ジャパンで速さを発揮できるはずだ」

© 株式会社三栄