亡き夫の豚すき焼き 妻と息子らが継ぐ 下仁田「コロムビア」

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のれんに手を添える邦江さん。営業時間は正午~午後2時、午後5~7時で不定休だ=31日、下仁田町

 名物の豚肉のすき焼きで知られる群馬県の飲食店「コロムビア」(下仁田町下仁田)の店主、栗原実さんが今年1月、81歳で亡くなった。人気ドラマ「孤独のグルメ」(テレビ東京)にも登場し、多くのファンが通う地域の名店だ。「お父さんが人生をかけた店。つぶしたくない」と跡を継いだ妻の邦江さん(77)が家族で味とのれんを守る。

◎店の名物 昨年4月の放送後に客層広がる

 昭和の風情が漂う町中心部の路地裏。藍色ののれんに白地の「すき焼」が映える。独特の匂いが染みついた畳敷きの店内に鉄製の鍋がずらりと並ぶ。県産の豚肉や特産の下仁田ネギなどをふんだんに使った名物「豚すき焼き」(1300円)を目当てに、県内外からファンが訪れる。

 実さんの父、英五郎さんが1958年に始めた。当初はバーと喫茶店を兼ねていたが、何年か後にすき焼きを提供するように。実さんは中学生の頃から店を手伝い、67年に結婚した邦江さんも支え続けた。

 豚肉を選んだのは「値段が安くてお客さんも食べやすい」との思いだった。知る人ぞ知る店だったが、昨年4月に「孤独のグルメ」に登場すると客層がさらに広がった。

 忙しかった昨年の暮れ、年齢のことなども考えて邦江さんが「息子に継がせてのんびり暮らそうか」と水を向けたものの、実さんは「商売をやっていた方が良い」と返した。インフルエンザにかかった実さんが病院に運ばれたのは、矢先の今年1月。再び店に立つことなく、その月の9日、そのまま息を引き取った。

 実さんの急逝に「さみしいとか通り越して現実と思えなかった」(邦江さん)。それでも店じまいは考えなかった。「お父さんがああ言ってたし、商売があれば、人に頼らなくても生きられるから」

 長男の一博さん(48)や次男の雅彦さん(46)ら家族が手伝う。「お父さんとそういう話はしたことなかったけれど、ここは残したいね」。そう言って邦江さんは店を見つめた。