自身の血液成分使う「APS療法」 長崎県内初導入 変形性膝関節症に注目の治療法

「安全性が高く、長期間の効果が期待できる。選択肢の一つとして考えてほしい」と語る北原部長=佐世保中央病院

 佐世保市大和町の佐世保中央病院(碇秀樹院長)は、膝関節の軟骨がすり減ることで炎症を起こす「変形性膝関節症」の治療に、患者の血液から抽出した抗炎症成分を使う「APS療法」を長崎県内で初めて導入した。安全性が高く、長期間の効果が期待できる治療法として注目されている。
 変形性膝関節症は、老化や肥満、過重労働が原因で膝の軟骨がすり減り、骨や関節が変形する病気。歩くと痛む、膝の曲げ伸ばしができない、などの症状がある。末期になると痛みが取れず、立ったり歩いたりする動作が困難になる。国内の患者は1千万人に上るとされる。
 原因となるのは、軟骨の破壊成分を作り出すタンパク質「炎症性サイトカイン」。発症すると関節内で働きが活発になり、炎症を悪化させる。血液には、このタンパク質の働きを抑制する「抗炎症成分」が存在する。
 APS療法は、遠心分離機を使い、患者の血液から「抗炎症成分」を高濃度で抽出し、関節内に注入。軟骨破壊を抑制し、炎症の緩和が期待される。
 従来は、症状が軽度か中等度の場合、鎮痛薬の投与やヒアルロン酸注射などで治療する。重度の場合は手術で人工関節を入れたり、骨を切って矯正したりする。
 しかしヒアルロン酸注射は効果が短く、手術は膝を切開するため感染症などのリスクがある。APS療法は患者自身の血液を使うため安全性が高く、治療にかかる時間も1時間程度と短い。効果の持続期間も長く、海外では2年間症状が緩和した例もあるという。
 欧州では治療法として承認されており、米国は臨床試験で有効性の確認を進めている。日本は昨年導入したが、有効性が検討段階のため、保険適用外の自由診療となっている。
 佐世保中央病院は4月に導入。9月末までの半年間で、64~88歳の男女計9人を治療した。整形外科の北原博之部長によると、歩くときに杖がいらなくなるなど高い効果を得られた患者がいる一方、効果が低かった患者もいたという。
 北原部長は「症状が重くなる前にAPS療法をすれば悪化を止められる可能性がある。選択肢の一つとして考えてほしい」としている。

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