「人手不足」関連倒産(10月)

 「人手不足」関連倒産は、2019年1-10月で334件(前年同期324件)に達し、前年同期を3.0%上回った。年間(1-12月)で過去最多を記録した2018年の387件を上回る可能性が出てきた。
 人手不足は中小企業ほど深刻なしわ寄せを受けており、今後の「人手不足」関連倒産の動向が注目される。

10月の「人手不足」関連倒産は37件、2カ月連続で前年同月を上回る

 2019年10月の「人手不足」関連倒産は37件(前年同月比48.0%増、前年同月25件)で、2カ月連続で前年同月を上回った。
 内訳は、代表者や幹部役員の死亡、入院などの「後継者難」が24件(前年同月12件)で最多。次いで、人員確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」が5件(同6件)、幹部や中核社員の独立、転職などの退職から事業継続に支障が生じた「従業員退職」が4件(同5件)。
 その他、賃金上昇が収益を圧迫した「人件費高騰」が4件(同2件)だった。

産業別 建設業とサービス業他が並んで最多

 産業別では、建設業(前年同月3件)とサービス業他(同9件)が共に9件で最多。次いで、小売業7件(同ゼロ)、卸売業6件(同4件)、不動産業3件(同1件)、情報通信業2件(同1件)、製造業1件(同3件)。運輸業(同4件)、農・林・漁・鉱業(同ゼロ)、金融・保険業(同ゼロ)は発生がなかった。

地区別 7地区で発生

 地区別では、全国9地区のうち7地区で発生した。関東12件(前年同月9件)を筆頭に、近畿(同5件)と中国(同1件)が各7件、北海道(同ゼロ)、中部(同1件)、九州(同5件)が各3件、東北が2件(同3件)。四国(同1件)と北陸(同ゼロ)は発生がなかった。都道府県別では、最多が東京8件(同5件)で、広島5件(同ゼロ)、大阪4件(同ゼロ)が続く。

人手不足関連倒産月次推移

2019年1-10月の累計も前年同期を上回る

 2019年1-10月の「人手不足」関連倒産は累計334件(前年同期比3.0%増)で、過去最多を記録した前年を上回って推移している。
 内訳は、「後継者難」が204件(同13.9%減、前年同期237件)、「求人難」が66件(同43.4%増、同46件)、「従業員退職」が38件(同72.7%増、同22件)、「人件費高騰」が26件(同36.8%増、同19件)だった。「後継者難」は6割(構成比61.0%)を占めて最多だが、唯一、前年同期を下回り、「求人難」や「従業員退職」の急増ぶりが目立つ。

2019年1-10月累計 飲食店を含むサービス業他が最多

 2019年1-10月累計の産業別では、サービス業他が98件(前年同期比8.8%増、前年同期90件)で最多だった。次いで、建設業61件(同4.6%減、同64件)、小売業38件(同90.0%増、同20件)、卸売業37件(同32.7%減、同55件)、製造業36件(同30.7%減、同52件)、運輸業30件(同66.6%増、同18件)が続く。サービス業他の中では、飲食店19件(同14件)が最多。
 地区別では、9地区のうち近畿(30→46件)、九州(43→55件)、中国(19→21件)の3地区で前年同期を上回った。一方、減少は関東(136→122件)、中部(38→35件) 、東北(26→24件) 、北海道(15→14件)の4地区。北陸(4件)と四国(13件)は前年同期と同数。

© 株式会社東京商工リサーチ