将来、学生の65%は今存在しない職業に就く。littleBits創始者アヤ・ブデールの「未来予想」

「ロボット農家」「ゲーマーセラピスト」……、2030年までには私たちの周りには今まで予想もできなかった職業が誕生するでしょう。ではそんな将来を担う子どもたちにどんな準備をしてあげればいいのでしょうか。littleBitsの創始者であるアヤ・ブデールの未来予想に、そのヒントがありそうです。

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2030年にはどのような職業が存在しているかわからない

皆さん、こんにちは。ブロックをつなぐだけで電子回路の仕組みが学べる電子モジュールキット「littleBits」の会社を創設したアヤ・ブデールです。

ところで最近、ハーパー・リー作の「アラバマ物語」という本を読みました。この本の中には、昔はじめて読んだときには共感できなかった部分がありましたが、今読むととても共感できます。

アラバマ物語 | ハーパー・リー, 菊池 重三郎, Harper Lee |本 | 通販 | Amazon

この物語の中で、ジェムとスカウトは人生ではじめて降った雪のあと、雪だるまをつくりたくなります。しかし雪だるまに必要な雪は充分にありません。そこでジェムは、土台を泥でつくって外側を雪で覆うというアイデアを思いつきます。彼らの父、アクタスは彼らのおもしろいアイデアにくすぐられ、こう言います。「これから君たちが将来どうなるかはまったく心配はいらない。君たちはいつもアイデアをもっているからね。なにを目指すかはわからないけど、エンジニア、弁護士、肖像画家、なんでもなれるはずだ」

この一節は、私にとって教育に対する考え方を変えていく重要性を非常に明確に示しています。私たちは21世紀の子どもたちのためにいろいろな準備をする必要がありますが、エンジニア、医者、ソフトウェア開発者など、今ある職業の人材を増やすための教育は必要ありません。

大事なことは、2030年にはどのような職業が存在しているかわからないということです。私が生きている間にも、実際にテレフォンオペレーターや旅行代理店のような安定した職業が、テクノロジーの発展により、データサイエンティストやソーシャルメディア・ストラテジスト、UXアーキテクトなどの新しい職業の誕生で、時代遅れになっていく姿を見てきました。

将来誕生する職業、キャリアはなにか

アメリカ合衆国労働省の調査によると、現在学生の65%は現状まだ存在していない職業に就くと言われています。私ははじめに2030年のキャリア、職業はどのようなものになるか想像しながらこの記事を書きはじめました。そして既存の職業のために発明されたテクノロジーに適応する、新しい職業(アニマトロニクス獣医とか?)を考え、次に新しい発見から突然誕生するキャリア(天体ファッションデザイナーとか?)を予想してみました。

考えていくうちに、さまざまな名詞や副詞を組み合わせる穴埋めゲームをしていることに気づき、まるで熟考し調べ上げたもののようなリストができあがりました。たとえば「ロボット牧場家」「ホロポーテーション学芸員」「ビジュアル生理学者」「データタペストリーメイカー」など……楽しすぎて考えるのをやめられません!

「ロボティクス獣医」必要なスキル:問題解決力、コンピューテーショナル思考、分析思考、プログラミング、論理思考、協調性

未来について予想する記事を書くとき、もっとも簡単に予想できるは「(未来がやってきたときに)この記事がどれだけばかげたものになっているのか」ということです(予想がまったく当たっていないかもしれないからね)。

しかし、ここに私が確信している予想を書こうと思います。今の学生に今の職業、キャリアの準備を提供することは意味がありません。また、今の学生に今考えられる将来の職業の準備をしてあげることも意味がありません。私たちがすべきことは、雪だるまをつくるために彼らの才能を引き出すためにサポートすることです。

世界経済フォーラム(The World Economic Forum)では、クリティカル・シンキング、問題解決力、クリエイティビティ、協調性、そしてデジタルリテラシーなどのスキルを促進するために、教育システムを完全に再構築することを推奨しています。特定の職業に向けて子どもが訓練するのではなく、考え方や振る舞い方、生涯学習のスキルを教えるのです。

「人工臓器農家」必要なスキル:分析思考、コンピューテーショナル思考、プログラミング、協調性

littleBitsでは、次世代のエンジニアを育成したり、プログラマーになるためのスキルを教えることをやめました。私たちがやりたいことは、子どもたちの情熱に火を点け、彼らの内なる発明精神を解き放ち、子どもたち自身に創造的な自信をもってもらうためにサポートすることです。そうすることで、彼らが生きたい世界を彼ら自身の力で発明できます。

またそれ以降、私たちは未来を心配する必要はなくなりました。なぜなら子どもたちは、いつもアイデアをいっぱいもっているからです。

「天空ファッションデザイナー」必要なスキル:問題解決力、クリエイティビティ、デザインスキル、エンジニアリング

アヤ・ブデール
創設者

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元記事こちら

From Robot Farmers to Gamer Therapists: Why We Can’t Prepare Students Today for the Careers of 2030

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