あのサッカー元日本代表が実業家転身…「うんち」を解析→「アスリート菌」発見で大成功

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鈴木啓太氏
鈴木啓太氏

 医療業界のみならず、多くの分野で「腸内細菌」への関心が高まっているが、まだまだ未知の世界でもあり日々、研究が進められている。元サッカー日本代表・鈴木啓太氏は、そんな腸内細菌の力が話題となる以前から、腸が健康の要であると自身の体で実感し、健康管理のため腸にこだわってきたという。現在は、アスリートの腸内細菌を研究するAuB株式会社の代表取締役を務める。「特許ビジネス」と「フードテック事業」へも参入し、元サッカー日本代表から青年実業家へと華々しい転身を果たしたように見えるが、その陰には倒産の危機もあった。人生の大逆転を遂げた鈴木氏に話を聞いた。

現役時代の強さの秘密

 現役時代のみならず、サッカー選手を志していた幼少期から「腸のコンディション」を重要視してきたという。

「調理師をしていた母から、『人間は腸が一番大事だから毎日“便”を見なさい』と言われてきたので、子供の頃から便を見ることが習慣になっています」

 確かに、腸のコンディションは便に表れる。鈴木氏の場合は、さらに「便がすっきり出るとパフォーマンスが上がりますし、残便感があるとパフォーマンスが下がるということを実感していました。最近は『腸活』がトレンドのようですが、私は子供の頃から腸活をしていました」

 その言葉どおり、現役時代には腸活の力を実感する出来事があった。

「2004年3月、アテネ五輪アジア最終予選のUAEラウンドのとき、代表選手23人中の18人が下痢を発症し、試合直前までトイレに籠もりコンディション不良のまま試合が始まったのですが、私は下痢もなく良いコンディションを保つことができました。普段から腸活をしていたお陰だと思うと同時に、アスリートももっと腸活に注目すべきだと思いました」

体験が科学的知見と重なる

あのサッカー元日本代表が実業家転身…松島幸太朗らの「うんち」を解析→「アスリート菌」発見で大成功していた!の画像2

 現役時代の自身の体験から腸活の重要性に気づいた鈴木氏は、アスリートの育成や多くの人の健康向上のために何かできないかと考えていた。そんななか、2015年6月の現役引退間際に「便を調べている人がいる」と聞き、すぐに便の記録アプリを開発したというベンチャー企業の社長に会いにいった。そして科学的な知見が自身の体験から考えていたことと合致し、嬉しさのあまり、その場で興奮気味に自身の構想を話した。

「食事、運動量、競技成績、健康状態など普段の詳細なデータが豊富なアスリートに特化して腸内環境を調べることで、見えてくるものがあると思います。そしてそれはアスリートの育成や一般の方々の健康向上に役立つと思います」

 鈴木氏の話に興味を示した研究・経営のプロフェッショナルの協力も得られ、事業化へと乗り出した。

引退会見後の逆風

 引退会見で腸内細菌を解析する会社を立ち上げたと発表した鈴木氏に、世間の風は冷たかった。

「『サッカー選手にビジネスができるのか?』『やめたほうがいい、どうやってやるつもりだ?』などと陰口を言われ、逆風の中の立ち上げでした」

 しかし、鈴木氏は大きな夢を抱いていた。

「アスリートの腸内細菌を解析できれば、アスリート特有の菌の発見をはじめ、まだ世に知られていないような新しい発見ができるんじゃないかと考えました。仮に“アスリート菌”が発見できれば、腸からもアプローチできることになります。“アスリートの未来を切り開く”という一心で起業しました」

 最初の起業から間もなく、設立当初のメンバーと方向性が異なることが露呈し、株式をすべて買い取らなければならない事態となり、またも逆風に立つことになる。

「ビジネスの厳しさ、難しさを痛感しました。しかし、一方では覚悟ができ、代表取締役として目指すビジネスをスタートしました」

茶色いダイヤ

 代表取締役として覚悟ができた鈴木氏は、自ら営業に走り出す。最初に営業に向かったのは、ラグビー日本代表の松島幸太朗選手だった。

「『うんちをちょうだい』と真面目に言う私に松島君は、『エッ?何言ってるの?』と、だいぶ引いてましたね。私の構想を話し、『君のうんちは宝、茶色いダイヤなんだ!』と説得しました」

 元サッカー日本代表の鈴木氏の人脈は広く、なんと500人を超えるアスリートから“茶色いダイヤ”を集めることができた。オリンピック金メダリストをはじめ、Jリーガーやプロ野球選手など27種目のアスリートから集めた検体は1000を超えた。

「大学や研究機関で集めた便のDNA解析を行いました。腸内細菌から、どの競技の選手かがわかるほど、腸内細菌には特徴があります。逆にいえば、腸内細菌を見れば選手としての体づくりをどうするべきかがわかります。腸内細菌の解析は世界レベルのアスリート育成に欠かせないアプローチなんです」

 競技によってアスリートの腸内細菌のバランスが異なるというから驚きだ。そういった研究の成果が実り、アスリート特有の菌を発見することができ、「アスリート菌」という商標を取得した。こうした鈴木氏の研究に多くの企業が注目し、現在は食品メーカーとの共同研究も進行中だ。

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倒産の危機

 今年4月には、腸内細菌を検査できるキットの開発、テスト販売に成功した。その一方で、鈴木氏は困難に直面していた。

「実はあの頃、創業以来もっともつらい時期を過ごしていました。資金があと2カ月で底をつくのが見えていて、金策に奔走していました」

 そんな鈴木氏の様子に、一部の社員は「何かある」と感じていたといいます。

「気合いと根性しかないと、とにかくたくさんのベンチャーキャピタルや投資家に会い、事業の素晴らしさをアピールしました。しかし、理解されない日が続きました。夜は眠れないし、冷や汗は出てくるし、自分が自分じゃない感じでした。もはや倒産しかない、とあきらめかけたときに、気合いと根性が実り、複数の投資家からの出資が決まったのです」

 そんな苦境でもあきらめず乗り越えることができたのは、バランスの良い腸内細菌に支えられた鈴木氏の強いメンタルのなせる業だろう。

アスリート菌ミックス

『AuB BASE』

 倒産の危機を乗り越え、これまでの研究から得た知見を生かし、酪酸菌を中心に29種類の菌を配合した「アスリート菌ミックス」を開発し、このアスリート菌ミックスを配合したサプリメント『AuB BASE(オーブベース)』が12月16日に発売される予定だ。

「一般の方を対象にした検証では、オーブベースの摂取により腸内細菌の多様性を平均7.5%、酪酸菌を3.7%増加させたとの結果が得られています。30~40代のビジネスアスリートをターゲットとし、毎日のコンディションづくりのお役に立てればと思っています」

 現在、クラウドファンディング「マクアケ」で、11月29日までオーブベースの先行販売を行っている。

「支援者へのリターンとして『AuB フットサル部』をつくり、ファンと一緒にフットサルを楽しみながら腸活ができるファンコミュニティプランを計画しています。多くの方に参加していただき、一緒に腸活を広めていけたらと願っています」

 サッカー元日本代表から実業家へ転身し、倒産の危機を乗り越え人生を大逆転した鈴木氏の夢は、さらに大きく膨らむ。

「子供の頃から母の教えてくれた腸活でサッカーもビジネスも乗り切れたと改めて実感しています。私にとって腸活は、人生を支える欠かせないものです。支えてくださった方々への感謝の気持ちを込めて、腸活を多くの人に伝えていきたいです」

(構成=道明寺美清/ライター)