JAXA、極地研究所、ミサワホームグループ 月面基地や未来住宅への応用を目指す「南極移動基地ユニット」を公開

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簡易施工、自然エネルギーシステムによるエネルギーの最適化、センサーによるモニタリング等を検証し、極限環境下での「持続可能な住宅システム」の構築を目指す。


国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)、大学共同機関法人情報・システム機構国立極地研究所(極地研)、ミサワホーム、ミサワホーム総合研究所の4者が南極・昭和基地で実証実験を行う「南極移動基地ユニット」を、10月29日、東京都立川市の極地研で公開した。

ミサワホームとミサワホーム総研は、2017年にJAXAが実施する「宇宙探査イノベーションハブ」の研究提案募集に「建築を省力化する工法技術」と「住宅エネルギーの自律循環システム」の開発による「持続可能な新たな住宅システムの構築」を提案し採択され、以来、地上における未来志向の住宅や、月面等の有人拠点への応用を目指して共同開発を進めてきた。

今回はその一環となるもので、JAXAはユニットの技術支援と検証データの分析、月面での有人拠点建設の展開を検討。ユニットの製造と検証データの未来住宅への展開、極地研はユニットの輸送と南極でのユニット機能検証支援を行う。

南極移動基地ユニットは、ミサワホームの鉄骨系ハイブリッド住宅を生産している名古屋工場で今年7月から製作されてきたもので、同社の技術の粋を結集したものだ。

鉄骨ラーメン構造に120㎜厚の木質壁パネルをベースに付加断熱仕様を施した構造体に開口部や換気設備、電気配線、内外装、PVモジュールなどをあらかじめ装備したユニット2基からなる。これを設置場所に運び現地で接合する。1ユニットは約6m×2.4m×3mのコンテナサイズで、2つのユニットの片側の壁部分が着脱可能なパネルになっており、これをジョイント部の床や天井にボルトで組み立て連結する。これで最大、床面積を約33㎡に拡張したり、1基づつのユニットに再度縮小したりできる。このユニットの結合部分がもっとも難しかったそうだが、これでC値1.0以下の高い気密性能というから驚く。しかも現地で主に作業するのは専門家ではない観測隊員。想定では4~6人で6時間程度で施工可能とのことだが、これが実現できると、職人不足への対応や災害仮設住宅、増築・減築の簡易化などの社会課題へのソリューションとして有効と考える。施工の簡易性や施工治具、作業支援センサーの南極での実効性の検証に期待は大きい。

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このほか、簡易メンテンナスと更新を容易にする「インタージョイントシステム」や、壁面にはPVモジュールを取り付け発電、集熱された太陽エネルギーを室内の暖房に活用する「カスケードシステム」を採用。さらにCO2濃度制御のセンサーと連動した「デマンド換気システム」でエネルギーロスのない換気が可能となっている。ユニットの断熱性能はUA値0.2W/㎡・Kと、ZEH基準を上回る国内最高レベル。南極では、こうしたエネルギーシステムの効果や最適化の検証を行う。加えてユニットには温湿度検知や火災検知など躯体や居住者の安全を見守るセンサーを搭載しており、各データを分析しモニタリングシステムの開発にもつなげる。

「南極は宇宙空間と環境は違えど、居住施設として求められる共通項目は多い。今回の要素技術は十分に宇宙でも応用できるのではと期待している」(JAXA宇宙探査イノベーションハブ・久保田孝ハブ長)。南極基地ユニットは、11月に東京港から

南極観測船「しらせ」で昭和基地に向け輸送。来年1月には現地に到着し2月~9月まで昭和基地から約1㎞離れた「見晴らしエリア」で越冬期間を通じて検証実験を行う。その後、約3800mの南極内陸の「ドームふじ」に輸送され、「氷床深層掘削計画」の居住空間(最大18人)として利用される。その間もセンサーによるモニタリングは継続され、今後の南極基地の建設に活かしていく予定だ。 未開の地であった南極で約半世紀にわたり建物建設を行っているミサワホーム。ある意味、木質パネル構造の原点が南極にあると言っていい。南極の建物開発によって磨かれてきたテクノロジーで日本の住まいをアップデートしてきた功績は小さくない。「南極の実証実験で得られた知見を未来の住宅開発にフィードバックしていきたい」と話すミサワホーム・作尾徹也専務。宇宙というフロンティアを見据えた新たな試みでどんな未来住宅が生まれるのか興味はつきない。

極地研での会見風景。右からJAXA・久保田ハブ長、ミサワホーム・作尾専務、ミサワ総研・桜沢所長、極地研・中村所長
ユニット製作を担ったミサワホーム名古屋工場の技術陣