P&G、国内の海洋プラごみを容器に使った「JOY」を来週から期間限定発売

P&Gの日本法人は6日、長崎県対馬の海岸で回収した海洋プラスチックごみを容器に使用した台所洗剤「JOY Ocean Plastic(ジョイ・オーシャン・プラスチック)」を来週から全国販売すると発表した。容器には約25%の海洋プラごみを使用し、期間限定で55万本を販売する。スタニスラブ・べセラ社長は、同商品を通して、「消費者にプラごみ問題について認知してもらい、解決に向けた取り組みに参加してもらうことで、業界に対しても影響を与えていきたい」と話した。(サステナブル・ブランド ジャパン=小松遥香)

ブランドマネージャーのシャオファン氏とべセラ社長

P&Gは2017年から、欧州と北米で、海洋プラごみをリサイクルして製造した容器を使いシャンプー「ヘッド&ショルダーズ」と台所用洗剤「フェアリー」を販売してきた。前者はこれまでに100万本以上、後者は320万本以上を売り上げている。

このほど国内で販売される「JOY Ocean Plastic」の容器には約25%の海洋プラごみのペットボトルが使われている。海洋プラは劣化が進んでいるため、安全性と耐久性を考え、混合割合が決まったという。容器は完全な透明ではなく、少し茶色味が残る。

販売する55万本には、長崎県対馬でボランティアによって回収された約6トンの海洋プラごみを使用。同社は欧米での事例と同じく、国内でも米リサイクル業者のテラサイクルと協働している。

JOYブランドマネジャーのゾン・シャオファン氏は「食器用洗剤という非常に身近なものだからこそ、より多くの方々に海洋プラごみ問題を知っていただき、行動していただくきっかけが提供できるのではないかと考えた」と、数あるブランドの中から「JOY」を選んだ理由を説明した。さらに同ブランドはこれまでにも環境に配慮し、生分解性の界面活性剤を使い、業界で初めて詰め替え用製品を導入するなどしてきたと話した。

商品の裏面には「ボトルの約25%に日本の海岸で回収した海洋プラスチックを再生利用。これを機にプラスチックの再利用や削減に取り組んで頂けたら幸いです」と呼びかけの言葉が書かれている。

今回、海洋プラごみの回収からリサイクル、容器の製造まですべて国内で実施。初めての挑戦のため、試作を重ね、時間も手間もコストもかかったという。

テラサイクルでアジア地域を担当するエリック・カワバタ氏は「P&G社の協力がなければ実現できなかった」と話し、シャオファン氏はコストについて「赤字ではない」と言うに留まった。国内の日用品市場における初めての大胆な試みではあるが、記者発表会ではその実現が容易ではなかったことをにじませる場面があった。これによる希望小売価格の変動はないという。

それでも同社は、55万本を売り上げた後の取り組みの継続についてこう話す。「今回の発売に対する消費者と社会の反響、コストとのバランスを考慮する必要があるが、積極的に考えている」。

P&Gでは全世界で、戦略やブランド構築の根幹に「サステナビリティ」を置くブランド改革を進めている。包装材に使うプラスチックに関しても、2030年までに、すべての包装材をリサイクルまたは再利用できるものにすること、同社の包装材の海洋流出をゼロにすることを掲げる。

べセラ社長は、アジアが最大の海洋プラごみの発生源であり、日本のプラスチック消費量は10年間で20%増加していると説明。「業界を代表する企業として、模範となる例を業界に示す責任がある。取引先の方々とのビジネスミーティングでも、自分たちの事業をさらに持続可能なものにするにはどのようにすればいいのかということを必ず議題に組み入れている」と話した。

「JOY Ocean Plastic」は、イオンやイトーヨーカドーをはじめとする全国チェーンのスーパーやドラッグストアなどで販売し、55万本が売り切れ次第、1-2カ月で販売期間を終了すると見込む。

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