北欧海運大手2社、H&MやBMWと連携しサステナブル輸送に着手

コンテナ船世界最大手のモラーマスク(デンマーク)と輸送ロジスティック大手のワレニウス・ウィルヘルムセン・ロジスティックス(ノルウェー)はこのほど、サステナブルな海運輸送の実現を目指し、コペンハーゲン大学や主要な取引企業であるBMWグループ、H&Mグループ、リーバイス、マークス&スペンサーと連携。持続可能な新バイオ燃料「LEO燃料(木材由来のリグニンとエタノールの混合燃料)」の環境的、経済的可能性を探り始めた。(翻訳=梅原洋陽)

携帯やタブレット、パソコンなどこの記事を読んでいるデバイスから、果物、ズボン、そして自動車まで、日々使う80%の製品は海を通って届けられている。地球のCO2排出量の2〜3%は輸送によるものだ。ゆっくりと着実に増えている貿易量に比例し排出量も増えるため、環境への影響を減らすことは喫緊の課題だ。

あらゆる製品においてサステナビリティの重要性が世界的に注目されている。そして、さまざまな業界のリーディングカンパニーはバリューチェーン全体の排出量を減らす方法を模索している。輸送やロジスティックスは製品を届ける主要な部分を担っているが、海運は陸路や空路とはとても異なる燃料事情がある。

「輸送業界は、研究室レベルではなく実際に世界の船で使用できる、特注の低炭素燃料を必要としている。そのため、今回のLEO連携のようなイニシアティブが取り組みを加速させるために重要」とモラーマスクのCOO(最高執行責任者)であり、健全で豊かな海を目指す取り組みを求める国連グローバルコンパクトの持続可能な海洋原則にも署名したソーレン・トフト氏は説明する。

リグニン(植物の剛性を生み出すバイオポリマー)は、リグノセルロース・エタノールをパルプ企業や製紙産業がつくる際に副産物として大量に取り出される。近年、バイオプラスチックのサステナブルな原料として注目を集めているポリマーは蒸気や電気を発生させるために燃やされている。

「私たちの顧客のサステナビリティへの関心は急速に高まってきており、この流れを喜ばしく思う。LEOはサステナブルなサプライチェーンへの大きな一歩であり、遠い未来ではなく現在の船に活用できる解決策になるかもしれない」とワレニウス・ウィルヘルムセンのCEOクレイグ・ジャシエンスキ氏は言う。

海運ロジスティックはBMWグループの製造や流通部門にとって重要な役割を担っている。バリューチェーン全体のサステナビリティを高め、LEOに参画するのは貴重なコミットメントだ。

H&Mのヘレナ・ヘルメルソンCOOは言う。「気候変動は現在進行系の現実であり、ファッションを含むすべての業界に関わる課題。私たちは地球の限界内で活動しなければならないという責任を認識している。製品がどのように顧客に届けられるかなど、すべてのバリューチェーン内でのインパクトを減らす取り組みをしている。その一環として、今回のイニシアティブによって低炭素輸送を実現する可能性を探る機会に恵まれた」。

コペンハーゲン大学は、船舶用燃料の実験・開発を行っている。2020年の第2四半期に、実際の船で使用する第2段階へ進むことを目指している。第3段階ではLEO燃料の生産拡大を行う。

モラーマスクの気候変動に関するチーフアドバイザーのジョン・コーネロップ氏は、「LEOはまだ開発段階のため、この燃料がより高くなるのか、顧客にも負担があるのかは分からない」とメディア『Supply Chain Dive』に語った。そして、「コストの観点からすると、サステナブル燃料は通常の石油燃料より高いことが多い。しかし、CO2の排出という社会が支払う高い対価についても考えることが重要」と付け加えた。

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