史上初8K時代劇「帰郷」が東京国際映画祭で上映! 仲代達矢も新人の気持ちに!? 杉田監督の演出とは?

国際コンテンツ見本市“mipcom”にてアジア発のワールドプレミア上映作品として注目を集めた、時代劇専門チャンネルが制作したオリジナル時代劇最新作「帰郷」が、凱旋(がいせん)上映として第32回東京国際映画祭にて特別上映された。上映後には舞台あいさつが行われ、主演の仲代達矢ほか、常盤貴子、北村一輝、田中美里ら豪華キャストが登壇した。

藤沢周平原作の本作は、信州・木曾福島を舞台に年老いた渡世人がふとした思いで故郷に帰るさまを史上初の8K時代劇として描いており、監督はドラマ「北の国から」の杉田成道氏が担当している。東京国際映画祭から特別功労賞を授与された仲代は、「こんなすてきな賞をいただきまして、長い間70年近く役者をやってて本当によかったと思ってます」と感謝の言葉を述べた。続けて仲代は、東京国際映画祭での上演を終えて「長い間、何十本と時代劇はやってまいりましたが、出演している私が一種の感動を覚えたのは初めてのことでございまして、今までにやったことのない時代劇だと思っております。ちょっと涙がこぼれました」と感激した様子。

仲代との共演について常盤は、「圧倒的な存在感でいらっしゃるので、最初はどうしようと思って震えたんですけど、でも仲代さんが温かいまなざしで包み込んでくださったので、胸をお借りして、私のできる限り頑張って飛び込んでいかせていただきました」と振り返った。主人公・宇之吉の人生においてキーパーソンとなる“運命の女性”を演じた田中は、「とても難しい役どころでしたが、杉田監督の演出一つ一つがほんとに美しくって、息遣いだったり、手とか触れ合っているうちに、どんどん若き日の宇之吉との距離が近づいていって、出会ってしまったんだなって」と杉田監督の演出を称賛した。

撮影時のエピソードについて聞かれると、仲代は「杉田監督の演出のもとで演じますと“はい、OK”と1発目もらいます。そうすると次に、もう一度違う形でやってほしいと言うんですが、どの形だか分からないのに“はい”と返事しちゃうんですね。それで適当にやると“もう少しない?”っていうふうにおっしゃいまして、まるで新人のような気持ちになって演出を受けておりました」と杉田監督の徹底した監督ぶりを懐かしんだ。何テイクも演じさせる杉田式の撮影方法に、北村は「本当の鬼は笑ってるんだなって(笑)。裸馬に乗って、落ちて、また馬に上がってきてと言われて、“1回だけならできます”って言ってやたんですが、カットがかからず、3回目ようやく思いっきり落ちて踏まれたら、監督が笑顔で“OK~!!”ってね。そのあとに監督が“大丈夫か?”と来てくれて、“大丈夫です”と答えたら“じゃあ次は土手から転げ落ちて”って(笑)。こんなに大変な現場はそうそうないなと思いました。でも本当に幸せな時間でした」と撮影の苦労を語った。田中も「ハードになればなるほど、杉田監督がほんとに満面の笑みで。“女の狂気はこんなもんじゃない!”ってけっこうしごかれました」と苦労を振り返ったが、「でも杉田監督の笑顔を見ると、やりたい、やらなきゃって思っちゃうんですよね」と笑顔で話していた。

最後に仲代は「この物語は人間の贖罪(しょくざい)の物語であって、郎ヤクザの宇之吉はふるさとへ、かつての罪を思い出しながら帰っていく。そのふるさとが私はあの世だと思うんです。あの世に帰っていく人間をこの映画は描いていて、ある意味では哲学的な映画だと思っております。もちろん娯楽の部分もありますけれども、最近は娯楽的なものばかり要求されている映像の世界では珍しい作品だと思います」と締めくくった。

物語は30年ぶりに故郷である信州・木曾福島に戻ってきた年老いた渡世人・宇之吉が、町で斬り合いに遭遇する。野獣のように、隙なくどう猛な動きをしている男が1人で10人を超える男たちを相手にしていた。その男の名は源太。彼を追い詰める男たちは宇之吉のかつての兄貴分・九蔵の手下たちだった。ある日、宇之吉は渡世人仲間の栄次と行った飲み屋で、おくみという女と出会う。そこで、おくみと源太は好いた仲だが、かねてからおくみに目をつけていた九蔵が、2人の仲を引き裂こうと嫌がらせを重ね、ついに源太が九蔵に切りつけ、追われる身になっていると知らされる。

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