訪日客向け 棚田を観光資源に 佐世保でモニターツアー 日本未来農業研究会 伝統文化体験を商品化

棚田で子どもたちによる「龍王太鼓」の演奏を楽しむ参加者=佐世保市鹿町町

 一般社団法人、日本未来農業研究会(長崎市)は、長崎県佐世保市鹿町町の棚田を観光資源として生かす取り組みを進めている。親和銀行(佐世保市)などと連携し、日本の伝統文化を体感できる訪日外国人向けの旅行商品として売り出す方針。11月に初めてのモニターツアーを企画。来年秋ごろの販売開始を目指している。
 ターゲットは欧米からの個人旅行客。ここでしか体験できないメニューを用意し、価格は1人150ドル~200ドルを想定している。研究会理事の前田晴郎さん(29)=鹿町町出身=の実家が所有する棚田約2千平方メートルを活用。遠くに北九十九島を望む。景色を楽しみながらランチを味わい、くつろげる日帰り旅行としている。
 9日のモニターツアーには、米海軍佐世保基地と在福岡米国領事館の関係者10人が参加した。棚田では、ミシュラン一つ星シェフが監修した料理を提供。食後には子どもたちが地元の「龍王太鼓」を披露した。
 江迎町では甲冑(かっちゅう)を身に着ける体験も企画。旧宿場町の景観が残る街並みを戦国武将になりきって歩いた。参加者は「特別な体験ができた」「全てが新鮮で、棚田で過ごした時間が特に印象的だった」と満足した様子だった。
 研究会は4月に発足。米のブランド化や棚田の保全などに取り組む。旅行業を取得し観光事業にも参入する予定。田植えや稲刈りを体験してもらうことも検討している。
 前田さんは「棚田をどうやったら残せるのか考えていた。人を呼び込み、地域にお金が落ちる仕掛けをつくりたい」と語る。
 取り組みは観光庁の「最先端観光コンテンツインキュベーター事業」にも採択された。連携する親和銀地域振興部の長尾和弘副部長は「地方創生の切り口として、5年後、10年後を見据えたソフト事業が必要。これからは、地域に眠る“原石”を探すことが求められている」と話した。

甲冑を身に着け、旧宿場町の景観が残る街並みを歩く参加者=佐世保市江迎町

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