上映巡る川崎市の介入に抗議声明 市民有志ら賛同募る

上映が実現した「主戦場」の観覧希望者が長い列を作ったしんゆり映画祭=4日、川崎市麻生区

 川崎市麻生区で開催された「KAWASAKIしんゆり映画祭」で慰安婦問題をテーマにしたドキュメンタリー映画「主戦場」の上映が市の懸念によっていったん中止になった問題で、市民有志らが市の対応に抗議する声明への賛同を募っている。

 声明は、文化芸術活動の自主性尊重をうたう文化芸術基本法や市文化芸術振興条例を挙げ、「市は介入することなく予算援助や会場提供など条件整備を行うべきだ。このような懸念を表明してはならない」と指摘。「予算を握る自治体の意向を無視すれば次回の開催が危ぶまれるとの危惧を主催者に与えて萎縮させる」とし、文化芸術振興への正しい理解と市の介入を肯定した福田紀彦市長の発言撤回を求めている。

 主戦場を巡っては、慰安婦問題を否定する一部出演者が上映差し止めを求めて提訴したことを受け、共催者の市が懸念を表明。主催のNPO法人が上映を取りやめた。

 上映は映画関係者や市民の「表現の自由の侵害だ」といった批判や激励が後押しとなって4日に実現したが、福田市長は「裁判でどちらの側の有利不利になってもいけない。懸念の表明は適切だった」との見解を表明。声明では「市長の立場によれば、気に入らない表現に関し司法手続きをとれば封じることができる。このような考え方は結果として上映差し止めを求める勢力の後押しをしている」と中立性を掲げる市の矛盾も指摘している。

 呼び掛け人には市内外の市民や学者、弁護士らが名を連ね、その一人で川崎市民の武井由起子弁護士は「言論の封殺は多様性を大事にする川崎市ではとりわけあってはならず、市の介入をあしき前例にしてはならない」と訴える。賛同者は17日までに以下のアドレス(sandou.shinyuri@gmail.com)に氏名と肩書、川崎市民か否かを書き込む。

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