2019年のヒット商品から考える、「複眼カメラ関連」の有望銘柄3選

年末が近付いてくると「今年の流行語」や「ヒット商品番付」などが相次いで発表されます。2019年の「ユーキャン新語・流行語大賞」には、日本のみならず世界中が盛り上がったラグビーW杯から、「ONE TEAM(ワンチーム)」や「ジャッカル」などがノミネートされているようです。

これらの流行やヒット商品から今後のトレンドや投資のアイデアが見つかることもあり、年末の恒例行事となったこれらの発表内容は株式市場でも注目を集めています。その中から、筆者が気になっているトピックについて掘り下げて考えてみたいと思います。


スマートフォンのカメラ複眼化がトレンドに

2019年のヒット商品では、9月に発売された「iPhone 11」シリーズが注目され、発売後の滑り出しが好調なもようです。上位機種である「iPhone 11 Pro」は、背面に3つのカメラが搭載され、高画質を追及したモデルとなっています。

4G-LTE端末の技術革新が進み、性能向上が頭打ちとなりつつある中で、各端末メーカーが差別化を図るため、カメラの高画素化競争に突き進んでいるようにも見えます。スマートフォンの限られたスペースで高性能なカメラ機能を実現するために、性能の異なるレンズを複数搭載することで、単眼レンズでは不可能な画質の写真撮影を可能としています。

アップル以外のスマートフォンメーカーでもカメラの複数搭載が進み、韓国のサムスン電子や中国の華為技術(ファーウェイ)は4眼搭載モデルを展開。スマートフォンの複眼化がすっかり定着しているようです。

スマートフォンのカメラ画質を左右する製品がCMOSイメージセンサーです。同製品はレンズからの光を電気信号に変える半導体で、人間の体でいえば目の網膜に当たります。このセンサーの技術が進歩し、最近のスマートフォンではカメラの高画素化が一段と進んでいます。

CMOSイメージセンサーはレンズごとに使用され、その市場規模は2眼モデルが普及し始めた2017年に大きく伸びた経緯があります。今後もスマートフォンの複眼化が牽引し、市場の成長が続くと見込まれます。

国内半導体業界で分かれる明と暗

目下のところ、国内上場企業の2020年3月期第2四半期(4~9月期)を中心とした決算発表が本格化しています。

内需関連企業の業績が堅調な一方、米中貿易摩擦が世界的な設備投資や生産に影を落としたため、輸出関連企業については減益や通期の業績計画を下方修正する企業が多いようです。

今年に入って株価の上昇が目立つ半導体製造装置の分野でも、足元の業績は減益の企業が目に付きます。メモリメーカーの生産抑制が続き、設備投資が盛り上がらないことが主因です。

一方、好調な半導体製品がマイクロプロセッサ(MPU)などのロジック半導体や、CMOSイメージセンサーの分野。旺盛な需要と活発な生産が続き、半導体分野の成長を牽引しています。

<写真:ロイター/アフロ>

かつてのお家芸で気を吐く分野

2017年のCMOSイメージセンサーの世界シェアはソニー(証券コード:6758)が52%と、2位以下を引き離しています。同社は特にスマートフォン用で高い競争力を有し、カメラ複眼化の恩恵を受けています。

かつては日本のお家芸だった半導体。メモリの分野では韓国や台湾メーカーの攻勢に押され、世界トップシェアを明け渡し、今日に至ります。一方、イメージセンサーは構造が複雑なことから、参入障壁は決して低くないようです。

ソニーにはこれまで生産してきた技術の蓄積があり、優位性が高いと考えられます。足元では積極的な研究開発と設備投資を実施し、旺盛な需要を取り込むとともに後続を突き放す構えです。

また、カメラ関連では、イメージセンサーの製造に用いられる光源装置を手がけるインターアクション(7725)や、レンズの原材料を手がける田岡化学工業(4113)などの競争力も高く、成長が期待されています。

5G普及で半導体の成長余地は?

イメージセンサーの需要拡大を牽引すると注目されるのが、第5世代移動通信システム(5G)です。

2019年に入り、米国や韓国、中国などの地域では一部の通信キャリアで5Gを用いた移動体通信サービスの提供が始まっています。5Gは現状の4G-LTEと比べて通信速度や容量、処理能力などが格段に向上し、特に上りの高速化が大きく進みます。

5Gの導入が広がれば、スマートフォンに限らず、さまざまな機器がネットワークとつながる社会が実現します。カメラはネットワーク上の情報収集で重要な役割を果たすと見られ、防犯や防災、医療、製造現場、自動運転など、さまざまな分野でカメラの活用が進むことが期待されます。

2020年以降に5Gの世界的な普及局面を迎えることで、半導体では先端分野における開発と製品化が活発化しているようです。カメラが人間の眼のように、コミュニケーションの役割を果たすようになることは、そう遠くない未来の話かも知れません。

<文:投資情報部 及川敬司>

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