インデックスファンドの父から投資の神髄を学ぼう

日本でも少しずつ投資文化が醸成されてきているように感じます。最近はこれまで投資とは無縁だった知人から、つみたてNISAやiDeCoを活用して投資を始めてみたと連絡をもらうことも増えてきました。

せっかく投資の世界に足を踏み入れた訳ですから、今後どのような相場展開になろうとも、末永く投資の世界を楽しんでもらうため、今回は先人の格言から絶対に覚えておきたい投資の神髄を共有していきたいと思います。難しい数式や用語は出てきませんので、安心してください。


先輩投資家達の影響力は大きい

投資文化が醸成されてきた背景として、前述の通りつみたてNISAやiDeCoなど投資を後押しする制度ができたこともあるのですが、それ以外にも証券会社や運用会社が投資にかかる手数料を徐々に引き下げたり、使いやすいサービスの開発など、サービス提供側の企業努力の影響もあります。

しかし、それ以上に大きいのは、既に投資をしている個人投資家達が、ブログやSNSで積極的に情報発信をしてくれていることが挙げられるでしょう。

これまでも金融機関は投資家に向けて情報発信をしていましたが、やはり金融機関が提供する情報に対しては心理的な壁があり、自分と同じ個人投資家が発信している情報の方がすんなりと受け入れやすいようです。

なかでも、インデックスブロガーの影響力は大きく、最近投資を始めた筆者の知人たちも全員インデックスブロガーが書くブログを読みながら勉強したそうです。最近は金融機関も彼らの意見を聞いて、より効果的なマーケティングをすべく、積極的にイベントに招いて意見交換などをしています。

先日、世界第2位の運用資産(※)を誇るバンガード社が開催したブロガー交流会に参加してきたのですが、そこで同社の創業者でもあり、インデックスファンドの父とも呼ばれるジョン・ボーグル氏の格言に触れる機会があり、数々の格言には投資の神髄が隠されていたため、そのなかのいくつかを共有したいと思います。
(※)Pension & Investments, “The LARGEST MONEY MANAGERS”, as of Dec. 31. 2018

日本のGDP以上の運用資産額

バンガードの運用資産は約600兆円。この金額がどれほど巨大な数字かは、2つの数字を見ると実感できます。投資信託協会によれば、2019年9月末時点で日本の公募投信6,120本あり、その合計残高は約126兆円。私募投信は6,609本で残高合計は約98兆円。日本にある投資信託を全て足し合わせても約224兆円です。その3倍弱の資産額を1社で運用しています。また、少し視点を変えれば2018年度の日本の実質GDP(国内総生産)が535.6兆円ですから、いかにその運用額が大きいかわかりますね。

そのバンガード社の創業者であるボーグル氏が世界で最初のインデックスファンドを作ったため、「インデックスファンドの父」と呼ばれている訳ですが、今年の1月に亡くなられました。彼の残した格言からは学ぶことが非常に多くあります。

インデックスファンドを勧める理由

まず、最初に紹介するのはインデックスファンドが世に出たことについての談話です。

「1976年、まさか私が世界初の(個人投資家向け)インデックス・ファンドをつくることになるなんて、今でも信じられない… ファースト・インデックス・インベストメント・トラスト(現在のバンガード 500 インデックス・ファンド)の発明は、偶発的な面もあったが、確かに革新的だった。どんなに研究を重ねても、S&P 500インデックスに連動する投資信託のリターンを継続的に上回るアクティブファンドは存在しないという結論に至らざるを得なかった。」

この談話の中に彼の主張するエッセンスが詰まっています。世の中にはより良いリターンを求めて数多のアクティブファンドが作られていますが、長期的にみると市場平均、つまりインデックスファンドには勝つことができないということです。この考え方は、以下の2つの格言としても残されています。

「干し草の山の中から1本の針を見つけ出そうとするな。干し草の山自体を買え。」

「長期に渡って株式市場を幅広く保有することは勝者のゲームだが、株式市場を上回ろうとすることは敗者のゲームだ。これは常識だ。」

の2つのです。

比較的、短期間で高いリターンを得ることができる可能性があるのが個別株投資ですが、どの銘柄が上がるかを分析して予想するのは非常に大変な作業で、しかもそこに絶対は存在しません。そんな面倒な賭けをするぐらいなら、市場全体を買う、つまりインデックスに投資をしなさいということですね。

どれだけ自分を律することができるか

最後に、2つの格言を紹介します。

「とにかく株式市場を全部買え。一旦株を買ったら、株式市場というカジノからは離れてそのままでほっておきなさい。市場全体が入っているポートフォリオを永遠に持てば良い。インデックス・ファンドの役目はまさにそれだ。この投資哲学はシンプルで洗練もされている上にベースとなる数式は否定のしようがない。しかし、この規律を守ることは簡単ではない。」

「とにかく真っすぐと航路を守れ。何があっても、決めた航路に沿って進むのだ。私は何度も「航路を守れ」と言ってきたが、毎回本気で言っている。私が提供できる投資ウィズダム(知恵)の中で最も重要だ。」

この格言は投資初心者に限らず、この数年で積立投資やインデックス投資を始めた投資家の皆さんにも共有したいと思います。なぜなら、この数年はアベノミクスで基本的には相場は右肩上がりだったことと、リーマンショックのような大きな下落相場を経験していない人がほとんどだからです。

2つの格言に共通するのは、いったんインデックス投資を開始したら、相場の変動に惑わされることなく、ずっと持ち続けなさいということ。言葉にすれば非常にシンプルですが、実際に自分のお金を運用していると、とてつもない急落や、長く続く下落相場をみていると、不安心理が強くなりすぎて、どこかのタイミングで損切りをして投資をやめてしまう人が多いのです。

しかし、それは非常にもったいない行動です。相場は常に上下に波を打つわけですから、その動きに一喜一憂するのではなく、腰を据えて投資に臨みましょう。そのような観点からすれば、原則60歳まで引き下ろせないiDeCoは長期的視点における資産運用にとっては相性のいい制度なのかもしれません。

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