強靱化計画 長崎県内自治体策定ゼロ 県が対応呼び掛け 国の予算配分で「優先採択」に

 大規模災害を想定し、自治体が地域の実情に応じた防災・減災対策を定める「国土強靱化(きょうじんか)地域計画」の策定が、長崎県内21市町で進んでいない。策定済みはゼロで、策定中(予定を含む)は16市町、未着手は5市町(10月1日現在)。国は今後、計画を策定した自治体に優先的に防災・減災対策事業の予算を配分する方針で、県は市町に早期の策定を呼び掛けている。
 地域計画は2013年施行の国土強靱化基本法で策定が可能になった。自治体が医療、交通などの分野で地域の脆弱(ぜいじゃく)性を評価し、それに基づき耐震化率などの数値目標を設定するのが特徴。
 国は地域計画を策定した自治体に対する防災・減災事業の予算配分について、19年度は「一定程度配慮」にとどめていた。しかし、20年度は「重点配分」「優先採択」に変更。21年度は「要件化」とすることも検討している。
 国は8月、こうした方針を都道府県に通知。県と県議会はこれを受け、各市町に地域計画策定を依頼している。
 地域計画の対象はインフラ施設をはじめ、防災、農業、医療、情報通信など多岐にわたり、人手不足の市町にとっては大きな負担だ。既に策定している「地域防災計画」との違いが分かりにくいとの声もある。
 内閣官房の集計によると、10月1日現在で県内で策定済みの市町はゼロ。長崎、佐世保、時津など9市町が策定中で、諫早、平戸、東彼杵など7市町が策定予定。島原、長与など5市町が検討中と回答した。全国でも策定済みは117市区町村にとどまり、全体の約7%。策定中(予定含む)は678市町村で全体の4割弱と進んでいない。
 検討中と回答した県内5市町は今後、いずれも計画策定に着手する方針で、本年度内か20年度中の策定を目指す。取材に対し、島原市は「計画の内容が多岐にわたり体制が整わなかった」と説明。長与町は「策定には膨大な事務量が必要。人手不足で専門職員もいないが、補助金の対象から外されないよう取り組みたい」としている。県は今後、各市町の計画策定を支援する意向だ。

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