読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、貯蓄総額140万円のアラフォー未婚女性。退職金が期待できない中、老後資金を自力で用意するために先取り貯蓄を始めたといいますが……。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。
若いころからずっと契約社員で働いてきたアラフォーの独身女性です。2年前、ようやく正社員になることができました。契約社員を18年ほど続けていたのですが、趣味にお金がかかることもあり、生活はかつかつの状態でした。貯蓄はなんとか100万円あったかなという状況です。
正社員になり、ボーナスがもらえるようになったため、この2年で貯蓄は40万円増え、今の貯蓄総額は140万円です。自分ではよく貯めたと思っていたのですが……。先日、老後資金は2000万円必要だとか、年金だけでは暮らせないということが話題になりました。もちろん、年金だけで暮らせると思っていたわけではありませんが、貯蓄が少ない上、40歳からの正社員だと退職金もそんなにもらえませんから、自分で貯めていかなくてはいけないだろうと思っています。
年金をもらう65歳までの間、今の会社を定年退職しても何か仕事を見つけて働くつもりです。これからの25年間でなんとか2000万円を貯めることはできないでしょうか。今年から、月2万円の先取り貯蓄を始めました。しかし、思うように貯まりません。そうであれば、iDeCoやつみたてNISAを利用したほうがよいのかとも考えているのですが、結論が出ません。今まで趣味を楽しんできましたが、自由に使えるお金がたくさんあったわけではないので、老後は穏やかに楽しく暮らせるように準備をしておきたいです。
〈相談者プロフィール〉
・女性、39歳、未婚
・職業:会社員
・毎月の手取り金額:18.2万円
・年間の手取りボーナス額:約60万円
・貯蓄:140万円(定期預金)
【支出の内訳(19.5万円)】
・住居費:5.4万円
・食費:3.1万円
・水道光熱費:0.8万円
・交通費:1.8万円(ついタクシーを利用してしまう)
・通信費:0.8万円
・交際費:0.5万円
・被服・美容費:0.3万円
・趣味・娯楽費:2.5万円(習い事ほか)
・その他:2.3万円
・先取り貯蓄:2万円
FP:ご相談ありがとうございます。老後資金2000万円の話題は、年金生活のご夫婦の暮らし方の平均的データから計算されたもので、万人に合うと言えるものではありません。ですから2000万円を意識しすぎる必要はないのですが、老後に向けて今よりも貯蓄を増やしておきたいものですね。そして暮らしにかかるお金も小さくしておくことが大切だと考えます。少しでも多く貯められるように考えていきましょう。
25年で2000万円貯めるには?
25年で2000万円貯めるのは、今の収入から見ると、少し目標が高過ぎるかもしれませんね。
いま貯蓄が140万円あるので、残り1860万円を25年間で貯めるとすると、利息を無視して考えると年間74万円、月にすると6.2万円貯金しなくてはいけない計算になります。ボーナスの半分を貯蓄にまわしても、毎月3.7万円ほど貯めなくてはいけません。実現するには、支出のコントロールが必要となります。
支出をコントロールするためにはマイルールが必要
現状、何ができるのか、今の支出状況を見ていきましょう。
基本的な生活費は、さほど支出が多いと感じません。気になるのは趣味費や交通費です。趣味はご自分でもお金がかかると感じるほどですので、優先順位が高い支出であると認識されているのかもしれませんね。
ただ、毎月固定的にかかる習い事代は6000円ほどで、あとはその月々で異なるイベント代、映画代、書籍、コンサート……ということですから、計画的に使うことができれば、支出の縮小ができそうです。趣味の行事に出かけるためについ使ってしまうタクシー代も、減らすことができると思いますよ。
手当たり次第に参加するとか、今月全部に参加しようなどとは考えず、「今月はこれとこれを優先して、タクシーに乗るなら行かない」などマイルールを作ってみると良いと思います。
好きなことやモノに、お金がかかると感じるほど、この「優先順位をつける」という支出の管理方法は効果があると思います。時間の使い方も有意義になりますから、空いている時間を自己投資に使ったり、無理のない範囲で副業で収入を得るといったことも考えてもよいかもしれません。
先取り貯蓄は少しお休みして
今年から先取り貯蓄を頑張っておられるそうですね。頑張る気持ちは大切ですが、今の家計状況ですと、先取りした分を給料日前には崩して暮らすという状況になっているでしょうから、あまり意味がありません。
先取り貯蓄をしていきたいのであれば、支出を把握し、余剰金となる部分を先取りするようにしないと、必ずと言ってよいほど取り崩す結果になってしまいます。
先にお伝えしたように、趣味代を見直しつつ、通信費や交通費、もしその他の支出に使途不明金が多ければその不明部分をできるだけ少なくし、無駄支出を減らしていきましょう。契約を見直したり、使い方を変えることで、意外と効果が現れるものです。
「今が精一杯」と思い込まず、今の当たり前だと思っている支出が、本当に当たり前なのかというところを疑って見直してみましょう。今の支出が絶対だという思いが薄らぐと、お金の管理も少しラクに感じる場合があります。少し肩の力を抜いていきましょう。
投資は家計にゆとりができてから
iDeCoやつみたてNISA等の投資にも興味があるのですね。これらの掛け金は、毎月拠出するケースが多いと思うのですが、その掛け金の拠出も先取り貯蓄と同様、毎月の余剰金の中から考えなければ長続きしません。
もし、安易にiDeCoを始めてしまうと、毎月の拠出を止めることはできますが、原則60歳まで引き出すことができない上に、その間の手数料がかかって、せっかく積立てたお金を減らしてしまうことにもなってしまいます。しかも「今月はお金が足りないから引き出しちゃおう」ということができないので、生活が困窮してしまう可能性もあります。
投資や先取り貯蓄に取り組むには、やはり家計をしっかりと見直して、無駄支出を絞り、余剰金を増やしていくことから始めないといけないということです。
支出にメリハリをつけて、できることからコツコツと
25年後に2000万円という大きな目標を掲げることはよいと思いますが、今のままでは達成できません。実現に近づくために、できることを考えて、行動に移していくことが大切です。定年後も働くという意気込みなのですから、がんばれると思います。
支出は優先順位をつけて、必要なものにしっかりと、そうではないものには控えめに。そういったメリハリをつけ、まずは一歩を踏み出してみてください。