次世代につなぐ価値 歴史文化、後世に  かまくら今昔 ~市制80周年~(4)

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鎌倉彫の解説に耳を傾ける聴講者ら。「鎌倉再発見」をテーマにした鎌倉同人会の講座には多くの市民らが参加している =鎌倉市小町

 「昨秋、今の鎌倉彫の彫り方と酷似した木片が市内で発掘された。鎌倉彫の概念がない時代のもので興味深い」。鎌倉市内で10月にあった講座。地元に鎌倉彫の工房を構える「博古堂」当主、後藤圭子さんが魅力などを語ると、参加した46人は興味深そうに聞き入っていた。

 主催は「鎌倉同人会」。設立は1915(大正4)年と市内最古の市民団体として知られ、その歩みは市の歴史よりも長い。

 豊かな自然や歴史的遺産を生かしたまちづくりなどを目指し、元外交官の陸奥廣吉ら鎌倉在住の名士が立ち上げた。駅舎改築や、街灯設置、参道「段葛(だんかずら)」の修復、鎌倉国宝館(同市雪ノ下)の建設などを手掛け、関東大震災時には被災者の救援にも携わったという。

 戦争を経て、活動の主な対象はまちづくりから文化発展に向けた事業へ。100周年を迎えた後は、多彩な催しの共通テーマに「鎌倉再発見」を置き、歴史や文化を市民に広く伝えようとしている。

 後藤さんを招いた鎌倉彫の講座も、その一つ。同会の齋藤俊英常務理事(77)は「鎌倉のまちを良くしたいという思いは、ずっと変わらない」と話す。

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 古都の魅力を伝えようと汗を流すグループは他にもある。

 前身の団体も含めて発足30年ほどになるNPO法人「鎌倉ガイド協会」(同市由比ガ浜)。平均年齢70歳超のガイド計約100人が毎月、古都の史跡やその周辺などを巡る三つのコースを案内している。

 2018年度は約2万3400人が参加。近年は英語で外国人観光客向けのガイドにも活動を広げる。

 同協会の高橋健治会長(75)は「源頼朝が元旦の初詣を広め、建長寺が日本の禅宗寺院の始まりと考えられる。この地で芽生えたものがたくさんある」と語り、「そんな歴史を伝え、鎌倉を好きになってもらいたい」と意気込む。

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 一方、市は14~19年度の第3次市総合計画第3期基本計画推進の柱に、「歴史的遺産と共生するまちづくり」を据える。その実現に向けた事業の一つに、13年に国内推薦を取り下げた世界遺産登録への再挑戦も掲げている。

 再推薦に向けたコンセプトの構築は道半ばだが、市は、世界遺産登録も歴史的遺産を後世へ確実に伝えることの手法と一つと考えている。今、進めているのは「市にふさわしい博物館基本構想」の策定。地域全体を博物館と捉え、魅力を発信していきたい考えだ。

 次世代へ継承したいという気持ちは市民も同じ。鎌倉同人会も、例えば希少の鎌倉桜「桐ケ谷」植樹を市内各地に広げ、冬には中学校にも植えた。

 鎌倉ガイド協会の高橋会長も、市内外の子どもたちへの案内に重きを置く。興味を抱いてもらえるよう、「鎌倉と奈良の大仏の違いは分かる?」などと、ガイドする際の問い掛けに工夫を凝らしている。

 「未来を担う子どもたちに歴史を伝えていきたい」と鎌倉同人会の齋藤常務理事。そんな思いを多くの人が抱いている。