東京大学などが実用レベルの極薄有機半導体ウエハーを作製、トランジスタ1,600個が駆動

東京大学、産業技術総合研究所、パイクリスタル株式会社などの共同研究グループは、高性能トランジスタとして利用可能な、分子3層分の厚みの有機半導体ウエハーを簡便な印刷法により作製した。

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有機半導体は軽量性、柔軟性、印刷適合性などの観点から、現状のシリコン半導体に置き換わり、安価に大量生産可能な次世代の電子材料として期待されてきた。しかし、有機半導体の多くは、低温での印刷性能と優れた半導体特性とを併せ持つことが少なく、世界でも実用的な電子デバイスの研究開発が進まなかった。また、高い有機トランジスタ性能を引き出すための均一性や再現性に優れたプロセス技術の確立も重要であった。研究グループは以前、分子2層分程度の厚みの極薄有機半導体単結晶膜の作成に成功していた。極薄単結晶膜の印刷では、独自手法により有機半導体インクを吐出するノズルのスキャン箇所にだけ単結晶薄膜が成長する。原理的に、ノズル幅を拡げれば単位面積当たりの印刷時間が削減できるとされた。今回、ノズル幅を従来の4倍以上となる9cmに拡大、周辺装置や印刷条件を改良して、分子3層分程度(12ナノメートル)の厚みを有する極薄有機半導体単結晶膜の4インチ級ウエハーを作製できることを実証した。このウエハー1枚から作製された1,600個のトランジスタは欠陥なく動作し、平均の電荷の移動度は、現状の有機トランジスタにおいて最高クラスの10cm2/Vsを示すことが分かった。今回の印刷方法は、従来の有機半導体印刷よりも材料消費が極めて少なく、またプロセス時間を短縮して印刷面積の大規模化が可能と考えられ、将来の産業応用において大きなコストダウンが見込まれるとしている。論文情報:

【Scientific Reports】Mechanism of Common-mode Noise Generation in Multi-conductor Transmission Lines

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