【内田直樹コラム】「認知症予防ビジネス」に関して

このような「研究成果」があるそうです。

「対照チーズ群と比較してカマンベールで血中BDNF濃度が上昇した」というだけで、「本研究の結果から、MCI(軽度認知障害)の高齢者において、カマンベールチーズ摂取によるBDNF上昇作用が示され、認知機能低下抑制、ひいては認知症予防の可能性が強く示唆されました。」とまで言ってしまうのは過大評価だと断言します。

軽度認知障害(MCI)の基準も、「自覚的なもの忘れの訴えがありMMSEの結果が22-26点の軽度認知機能低下の方」としているのも疑問です。
MCIと認知症の違いは認知機能障害の程度ではなく、生活障害があるかどうかです。

もちろん、人を対象にし二群間比較した試験でBDNFを上昇させたとすれば十分に立派な研究結果だと思いますが、まずはきちんとした雑誌で研究結果の吟味を受けてacceptされてから情報を公開してはどうかと思います。

これから、認知症予防をビジネスにしようと同様の商品が次々に出てくると予想しますが、ぜひきちんとしたエビデンスを示して欲しいところです。

内田 直樹

医療法人すずらん会たろうクリニック(福岡県福岡市東区)院長、精神科医、医学博士。福岡大学医学部精神医学教室講師を経て2015年より現職。日本老年精神医学会 専門医・指導医、福岡市在宅医療医会 理事、日本在宅医療連合学会 評議員、認知症の人と家族の会福岡支部 監事、日本精神神経学会 専門医・指導医、認知症未来共創ハブ サポーター、精神保健指定医。著書「認知症の人に寄り添う在宅医療」(出版社: クリエイツかもがわ)

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