中華人民共和国・澳門特別行政区の市街地コース(全長6.120km)で、11月14日から4日間の日程で第66回マカオGPが開催される。グランプリ・レース(メインイベント)は、F1と併催されているFIA F3の車両とチームがそのまま参戦。全日本F3選手権のチームは締め出された格好となり、日本人ドライバーはレッドブル・ジュニアでホンダ育成ドライバーの角田裕毅ひとり。なお、角田は2019年シーズンのFIA F3を戦ったイェンツァーではなくハイテックからの出場となるが、その背景を「レッドブルの指示によるもの」と語った。
エントリーリストは別表のとおり。角田のようにチーム移籍などはあるにせよ、FIA F3のレギュラードライバーが17名揃った。残り13名のなかで注目株の筆頭はダニエル・ティクタムで、2017年と2018年のマカオGPに続く史上初の3連覇に挑む。
そのティクタムに一昨年のマカオGPでは最終周の最終コーナーで事故を起こし優勝を譲った、DTMドイツ・ツーリングカー選手権ドライバーのファーディアンド・ハプスブルクも顔を見せ、「ひさしぶりのフォーミュラカーレースにワクワクしている」と笑顔で語った。
2018年のマカオGPで大クラッシュに見舞われたゾフィア・フローシュも、パドックに元気な姿を見せた。FIA F2選手権ドライバーのカラム・アイロットは5回目のマカオGP挑戦。デビッド・シューマッハーやエンツォ・フィッティパルディなど、レース名門一家の若手はフォーミュラ・リージョナル・ヨーロピアン・チャンピオンシップ(FREC)からのステップアップである。
なお、マカオGP経験のあるドライバーは13名、同じくマカオGP経験のあるチームはプレマ、カーリン、ハイテック、しばらくブランクはあるもののARTといったところ。
マカオGP経験の有無、マカオGPでの実績、ドライバーの布陣などで考えるとプレマが優勝候補の筆頭。これにハイテック、ART、カーリンが続く格好か? ともあれ、マカオ未経験ドライバー/チームも多数。車両も初導入となったため、例年以上に事故や事件が発生する可能性も懸念される。
ちなみにマカオGPが開催されるギア・サーキットのライセンスは“グレード3”に過ぎず、FIA F3車両のパワー・ウェイト・レシオでの競技は不可能だった。
このためマカオGPの主催者は国際自動車連盟(FIA)の指導と協力を受け、FIA F3車両でも走行可能な“グレード2”へ格上げするためリザーバー、マンダリン・オリエンタル・ベンド、リスボア・ベンド、山側区間、Rベンドなどに手を加えると9月12日に発表していた。
11月13日に筆者がトラックウォークで視認した限り、コースレイアウトの変更はない。比較的大きな変更を受けたのはリスボア・ベンド。進入部分右側のフェンスとガードレールが大きくコースへ張り出し、縁石とガードレールの隙間も狭くなった。
同時にベンドのエイペックに設置されていた青い“ソーセージ”も取り除かれた。リスボア・スタンド側のフェンスもコースへ張り出し、全体的に見るとリスボア・ベンド進入で姿勢を乱した車両はそのままエスケープ・ゾーンに逃れるようになった。
これまでリスボア・ベンド外側に存在したフォトグラファーズ・バンカーは、ソフィア・フローシュの昨年の事故の影響で撤去されている。合わせてリスボア・ベンド外側のキャッチ・フェンスは支柱が根元部分から強化されたほか、支柱の設置間隔も昨年より狭くなっている。
加えて、これまで一重だったタイヤ・バリアは部分的に二重へ強化されるなど、目を凝らしてみると昨年までとの違いは明白だ。
リスボア・ベンドの立ち上がりには、ガードレールのほかに衝撃吸収材がコース側に追加された。同じような衝撃吸収材はメルコ・ヘアピンの立ち上がりでも見られた。リスボア・ベンドに続くサンフランシスコ・ベンドには、従来までのタイヤ・バリアではなく、“TECPRO”バリアを三重で設置。
そしてコースを逆戻りするが、マンダリン・オリエンタル・ベンドの立ち上がりには、インディアナポリス・モータースピードウェイで採用されている、“SAFER”バリアが新設された。
とはいえ、先の9月のマカオGP主催者の発表があったあと、FIAは10月14日付けで“サーキット・ライセンス・リスト”をホームページに掲載。これを見るとギア・サーキットは“グレード3”のままで、しかもサーキット・ライセンスの有効期限は2021年11月17日となっている。
ギア・サーキットが“グレード2”へ昇格したという正式な発表や公式の文書はまだ手に入っておらず、この件に関しては現地でさらに取材を重ねたい。
■DRSはマカオGPでも使用可能。オーバーテイク増加予想も残る怖さ
そしてFIA F3車両ならではの注目がドラッグ・リダクション・システム(DRS)。シーズン中も導入されてきたこの“追い越し促進装置”がマカオGPでも使用されるのかどうかは、海側に長い直線を持つギア・サーキットでは注目だった。
これについては“FIA-FORMULA 3 WORLD CUP 2019”の冠をいただいた第66回マカオGPのスポーティング・レギュレーションの中に、「30) GENERAL CAR REQUIREMENTS」という項目があり、その中の「30.4 Driver adjustable bodywork」と題した部分に“DRS”の使用も可能という規則が載っている。
では、“DRS”の設置個所は? と知人であるHWAのトラック・エンジニアなどに聞くと、「マンダリン・オリエンタル・ベンドの立ち上がりからリスボア・ベンドまで」との回答。
実際に足を運んで調べると、たしかにマンダリン・オリエンタル・ベンドの立ち上がりに横断方向の白線とコース両脇に看板が設置されていた。そうでなくてもギア・サーキットは“トゥ(スリップストリーム)”の使い合いによる追い越しが頻繁に観られる。
追い越しを促進する“DRS”の使用が可能となると面白さは倍増するかもとは思いながら、一方では怖さも感じてしまった。
■2019 第66回マカオグランプリ
FIA F3ワールドカップ エントリーリスト
No Driver Nat Team
2 マーカス・アームストロング NZL SJMセオドール・レーシング・バイ・プレマ
3 ジェハン・ダルバラ IND SJMセオドール・レーシング・バイ・プレマ
5 ロバート・シュワルツマン RUS SJMセオドール・レーシング・バイ・プレマ
6 ユーリ・ビップス EST ハイテック・グランプリ
7 マックス・フュートレル GBR ハイテック・グランプリ
8 角田裕毅 JPN ハイテック・グランプリ
9 クリスチャン・ルンドガルド DNK ARTグランプリ
10 フェルディナント・ハプスブルク AUT ARTグランプリ
11 セバスチャン・フェルナンデス ESP ARTグランプリ
12 オリバー・キャルドウェル GBR トライデント・モータースポーツ
14 デイビッド・ベックマン DEU トライデント・モータースポーツ
15 TBA TBA トライデント・モータースポーツ
16 ジェイク・ヒューズ GBR HWAレースラボ
17 キーファン・アンドレス IRN HWAレースラボ
18 TBA TBA HWAレースラボ
19 ルーカス・ダナー AUT MPモータースポーツ
20 リアム・ローソン NZL MPモータースポーツ
21 TBA TBA MPモータースポーツ
22 TBA TBA イェンツァー・モータースポーツ
23 レオン・ホン-チオ MAC イェンツァー・モータースポーツ
24 アンドレアス・エストナー DEU イェンツァー・モータースポーツ
25 カラム・アイロット GBR ザウバー・ジュニアチーム・バイ・シャルー
26 ダビド・シューマッハー DEU ザウバー・ジュニアチーム・バイ・シャルー
27 エンツォ・フィッティパルディ ITA ザウバー・ジュニアチーム・バイ・シャルー
28 ローガン・サージェント USA カーリン・バズ・レーシング
29 フェリペ・ドルゴビッチ BRA カーリン・バズ・レーシング
30 ダニエル・ティクトゥム GBR カーリン・バズ・レーシング
31 アレッシオ・デレーラ ITA カンポス・レーシング
32 TBA TBA カンポス・レーシング
33 TBA TBA カンポス・レーシング