フリマアプリに「PayPay」参戦、王者「メルカリ」はどう迎え撃つ?

利用者の拡大が続くフリマアプリ市場に、10月からヤフーが「PayPayフリマ」で参戦しました。オークションサイト「ヤフオク!」で圧倒的なシェアを誇る同社の参入により、フリマアプリをめぐる構図が変わるかどうかが注目されています。

そうした中で、メルカリが11月7日、2019年7~9月期の連結決算を発表しました。競合の参入が相次ぐフリマアプリ市場の現状をどう見ているのでしょうか。決算説明会の内容からひも解きます。


競合出現は「初めてのことではない」

今や、フリマアプリの代名詞のような存在となったメルカリ。国内事業の直近の月間アクティブユーザー数(MAU)は前年同期比28%増の1,450万に上ります。流通総額を示すGMVは1,268億円と、同28.1%の伸びとなっています。

このように、現在は「メルカリ一強」とも言える状態のフリマアプリ市場ですが、10月にヤフーが決済サービス「PayPay」の名を冠した「PayPayフリマ」で参入。期間限定で出品者の送料無料や、20%還元キャンペーンを展開し、認知度を高めています。

一部のSNSでは「アプリの画面がメルカリを意識したものでは?」と話題になるほど、なりふり構わぬ攻勢ぶり。オークションサイト「ヤフオク!」で圧倒的なシェアを誇るヤフーの参入に対し、メルカリも安穏としていられないように思われます。

PayPayフリマ発表会の様子

しかし、決算説明会で競合の参入について質問された長澤啓CFO(最高財務責任者)は、「初めてのことではない」と冷静に切り返します。

今までもさまざまな企業がフリマ事業に参入してきましたが、出品手数料が安いフリマアプリが登場した後でも、メルカリのほうが高い成長率を保ってきたと説明。具体的なサービス名は口にしませんでしたが、販売手数料を3.5%に設定している楽天の「ラクマ」を念頭に置いた発言だと思われます。

そのうえで、フリマアプリ市場について「1つのプラットフォームでネットワーク効果が回ると、お客様が離れにくくなる。ユーザーは在庫のあるところで買いたい。単に手数料ではないのがC to Cの特徴」(長澤CFO)と分析してみせました。

出品強化のため「売ることを空気に」

前年同期は「ユーザーの購入を活性化させること」に広告宣伝費をかけていましたが、2019年7~9月期は「出品の活性化」に力を入れています。その理由は、購入にバランスが偏ると、在庫が過度に減ってしまうため。中長期的な成長に向けて、来期以降はユーザーの出品を促すための広告宣伝費をさらに増やす計画だといいます。

3,600万人という潜在出品客数の獲得に向けて、メルカリはメインユーザー層である若い女性だけでなく、普段はPCのブラウザでサイトを閲覧する高齢者や、男性ユーザーも取り込んでいく方針です。

同社では、出品拡大のため「売ることを空気に」と掲げ、写真を撮るだけで相場や売れやすさがわかる機能「売れるかチェック」を開発したり、オフライン施策として「メルカリ教室」を実施しています。今後は、購入履歴をもとに、ワンタップで簡単に出品できる機能も提供予定です。

原宿竹下通りのクレープ店で「メルペイ」を使用する、きゃりーぱみゅぱみゅさん

ここで重要な役割を担ってくるのが、同社のスマホ決済「メルペイ」。メルペイの「あと払い(現・スマート払い)」サービスを利用したユーザーは、非ユーザーと比べてメルカリでの平均購入額が約10%増加しているといいます。メルペイとメルカリの利用を循環させることで、増やした出品を高速で回転させていく戦略です。

2事業の赤字を国内で支えきれない構図

このように、メルカリの国内事業については好循環が続いていますが、その地位は盤石なのでしょうか。

実は、メルカリとの循環では一定の効果を上げているメルペイも、事業単体では赤字が続いています。これに加えて米国のメルカリ事業でも投資がかさんだ結果、メルカリのグループ全体での業績は売上高が前年同期比37.9%増の145億円と成長する一方、営業損益は70億円の赤字と、前年同期(25億円)より赤字幅が拡大しています。

赤字の主因となった広告宣伝費は主に、米国メルカリ事業とメルペイ事業に使用されています。長澤CFOはこの赤字を「プランニングされた数値」としていますが、決算発表の翌日は株価が一時ストップ安になるまで売り込まれました。

スマホ決済をめぐっては各社が膨大な費用を投じて還元キャンペーン合戦をしていますが、現状はPayPayの「一人勝ち」の状態。長澤CFOはメルカリとメルペイのシナジー効果を強調していているものの、現在のような消耗戦が長引いてしまうと、黒字の国内メルカリ事業にも影響が出てくる可能性は否定できません。

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