50歳シングルマザーを悩ます、「親の介護」と「子どもの教育費」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、2人の子どもと高齢の両親と暮らす50歳のシングルマザー。住宅ローンが残る中、教育費・介護費・老後資金の準備に頭を悩ませています。FPの薮内美樹氏がお答えします。

公務員の50歳女性です。離婚して、中3、中1の子ども二人、両親と同居しています。子ども二人は大学進学を希望しています。住宅ローンもまだ残っており、両親は80代と高齢のため、入院、介護等の費用もこれから必要になってきます。また、持ち家のため修繕費等の突発的な費用もかかってくると思います。これから教育費がピークを迎える中、介護、自分の老後の資金等やりくりしていけるか不安です。定年は64歳の予定です。その後もなんらかの形で働きたいとは思っています。

〈相談者プロフィール〉

・女性、50歳、バツイチ

・子ども2人:15歳、13歳

・職業:公務員

・居住形態:持ち家(戸建て)

・毎月の手取り金額:36万円

・年間の手取りボーナス額:160万円

・毎月の世帯の支出目安:約32万円

※両親の年金は2人合わせて月20万円ほど。車のローン返済などで毎月ほとんど残っていないようです。

【支出の内訳】

・住居費:6.2万円(ボーナス時は8.2万円×2回)

・食費:6万円

・水道光熱費:2.8万円

・教育費:6.7万円

・保険料:2万円

・通信費:1.4万円

・車両費:1.4万円

・お小遣い:2.5万円

・その他:3万円(外食、日用品代など)

【現在の資産状況】

・毎月の貯蓄額:4万円(ボーナス時40万円×2回)

・現在の貯蓄総額:定期460万円、学資保険300万円と200万円

・現在の投資総額:米国ドル建て保険年42万円(60歳完済、64歳で510万円)

・現在の負債総額:2000万円(住宅ローン:物件購入額2700万円、借入額2700万円、返済残期間25年、10年固定金利1.05%)


薮内:今回は、お二人のお子様を育てるシングルマザーからのご相談です。50歳になられ、人生の3大支出である「教育費」「住居費」「老後の生活費」に加え、同居両親の介護や医療費など、一気に不安が噴出し、どうしたものかとお悩みのご様子です。

10年後に収入が減少することを踏まえ、どのようにライフプランを立てれば乗り切ることができるのか、一つずつ解決して不安を解消していきましょう。

子どもに負担をかけないように、まずは自分の老後資金の確保から

ご両親の経済状況を心配されているように、親のライフプランは子どものライフプランに影響を及ぼす可能性があります。将来、お子様に経済的な負担をかけないように、ご自身の老後資金の確保を優先したプランニングが大切です。

<1.定年退職までに住宅ローンを完済>

75歳まで続く住宅ローンですが、今の職場の定年退職予定は64歳で、この時点でのローン残高は970万円です。できるだけ、退職金からの持ち出しは抑えたいところです。

末子が大学卒業後に400万円の繰上げ返済を実行することで、退職金からの持ち出しは500万円ほどで済みそうです。退職金を2000万円程度と考えると、1500万円は手元に残ります。米国ドル建て保険と合わせて、2000万円は老後資金として確保できる試算です。今ある定期預金は、予備資金かつ住宅ローンの繰上げ返済に備えてキープしておきましょう。

<2.老後に必要な資金の目安は、70歳までに2300万円>

定年退職後も働く意思をお持ちです。現状の生活水準から、月額の生活費は13万円程度、年間でかかる固定資産税や自動車関連費、旅行代や電化製品の買い替えなどを含め、年間約210万円あれば生活できそうです。

一方、公的年金は年間約200万円と推察されますが、将来、減額が予想されるため、170万円程度とし、社会保険料を差し引いた手取りを150万円程度とすると、年間60万円程度の不足が発生しそうです。

70歳で勇退することを前提とした場合、1500万円あれば70歳~95歳までの25年間の生活費はカバーできそうです。その他、車の買い替えや家の修繕費、介護への備え、葬儀費用などを考慮すると、老後に必要な資金の目安は2300万円です。

この目標額をもとに、今の職場を定年退職される前に、いつまでに、いくらくらい収入を得ればよいか、64歳以降の就労計画を立てていただければと思います。

図表①のシミュレーションでは、60歳~64歳まで年収400万円、64歳から70歳まで180万円を想定しています。

なお、公務員の方の60歳以降の賃金については、定年延長のスケジュールとともに国が検討しているところです。定年時期や賃金がどのように落ち着くのか、今後、注視しておいてください。

今年で住宅ローン減税が終了しますので、老後資金の積立てに、税制メリットのあるiDeCoをはじめるのもいいでしょう。公務員の方の場合、月額掛金は1.2万円が上限です。

教育費は「公立高校・私立理系・自宅通い」の予算に抑える

住宅ローンの繰上げ返済、老後資金の準備を優先したライフプランを立てる場合は、お子様の教育費は、高校は公立、大学は私立理系にかかる教育費の予算内に抑えておかれる方が安心です。

現在、年間128万円もの貯蓄ができています。そのうち、42万円は老後用の積立てもかねて米国建ての保険料にあてられるため、実質、年間収支はプラス86万円です。

お子様の教育費がかかるのはあと9年、図表②のキャッシュ・フロー表から、年間収支がマイナスになるのは、長子が大学生の間の4年間で、貯蓄の取り崩し総額は約350万円です。準備済みのお子様の学資保険500万円で十分カバーできます。

学資保険で残った資金の一部は、車の買い替えや自宅の修繕費など、突発的な支出に活用できそうです。

なお、お住いの地域によっては、他県への大学進学率が高く、仕送りが必要になる場合もあります。

教育費の予算枠を超える分については、奨学金を活用することも検討してください。将来、ご自身のセカンドライフの資金準備が完了し、余裕資金があれば奨学金の返済を支援していく、または、支援できるように定年退職後の就労計画を立てていただければと思います。

介護にかかる費用はいくら?制度をフル活用して

公益財団法人 生命保険文化センターの調べ(平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護に要した費用のうち、住宅改修や介護用ベッドの購入など初期費用の平均額は69万円、介護保険サービス利用時の自己負担分や流動食・配食サービスなどの介護食費、おむつ代などの月額費用の平均額は、在宅の場合で月額4.6万円となっています。また、介護を始めてからの期間は平均54.5ヵ月、だいたい4年半となっています。

介護が必要になったら、まず介護保険サービスが使えます。これまで支払ってきた介護保険料がようやく役立つときです。ご両親の年金収入であれば、図表③の月額限度額までなら、1割負担でサービスが利用できます。

限度額内では収まらない場合は、ご両親の年金や資産の許す範囲で、介護保険適用対象外の家事代行やホームヘルプサービスを利用するのも一考です。料金は、概ね1時間2000円~4000円程度。心身ともに「疲れない介護」を心掛けてください。

実際、在宅介護をされている方の中には、介護が必要になることで増える支出がある一方で、お金を使わなくなり、結局、自立していた時と比べてそれほど支出が増えなかったという話しも耳にします。

この機会に、一度、ご両親の家計や資産状況、加入している保険なども把握しておきましょう。経済面で不安があるようなら、車のローンが終わったら、その分を介護や病気に備え積立ててもらうなど、ご両親と話し合いをしてみてください。

また、国は、介護離職を防止するため、仕事と介護の両立支援制度を整備しています。介護休業給付金をはじめ、介護休暇・介護休業など、事前に制度の詳細について職場で確認しておくと安心です。

健康第一、ひとりで抱え込まずに

一家の大黒柱であるご相談者にとって、健康でいることがなによりも大切です。ストレスが溜まらないように、家族に協力してもらい、ご自身のための時間を作ることも心掛けてください。

まだまだご両親もお元気かと思いますが、介護のサポートが必要になったら、ご近所の方や役所、職場に相談し、お一人で抱え込まないようにしてくださいね。

※今回、概算で計算させていただいたキャッシュフローをもとに、貯蓄目標の金額を算出しております。前提条件が変われば結果も異なりますので、あくまで、今後のライフプランを立てる上で、考え方などを参考にしていただければ幸いです。より正確なプランニングをご希望の場合は、お住いの地域のFPに相談されることをおすすめします。

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