羽田空港アクセス線に転用予定の貨物線(休止中)を見る

雑草に覆われた大汐線の線路。左は現役バリバリのりんかい線の回送線

 【汐留鉄道倶楽部】JR東日本は5月、山手線の田町駅付近から羽田空港に至る約12・4キロの「羽田空港アクセス線」(仮称)の調査計画書を東京都に提出した。そのルートの6割は、休止中の東海道貨物線の支線(大汐線)を改良して転用するという。大汐線の現状はどうなっているのか、沿線を歩いて観察してみた。

 まず目指したのは品川区の大井中央陸橋だ。東京モノレールの大井競馬場前駅から15分ほどで到着。陸橋の下に数え切れないくらい線路が並んでおり、一番手前が東海道新幹線の車両基地、その隣が東京貨物ターミナル。さらにその奥に、大汐線の線路と架線柱が雑草に覆われながらもしっかり残っていた。

 休止から20年以上が経過し、隣接する東京臨海高速鉄道りんかい線の車両基地のものと比べると、古ぼけて錆が目立つのは仕方がないところだろう。

 スマートフォンの地図を頼りに、大汐線にできるだけ近づこうと試みた。陸橋を下り、大井ふ頭の幹線道路を10分ほど歩いたところで、りんかい線の回送線と大汐線共用の踏切を発見。ここでも大汐線の線路のあたりだけ雑草が伸び放題で、架線柱から架線がなくなっている部分もあった。

 さらに大汐線と並行する道路を進むと、都営バスの「3号バース前」停留所付近の駐車場から線路際まで行くことができた。この駐車スペースは約200メートルにわたって線路と近接しており、大がかりなフェンスもなく大汐線を間近に観察できる。雑草に交じってススキが群生しているエリアもあり、バックに見える広大な貨物ヤードとは対照的にローカル線の趣すら漂っていた。

(上)ススキをバックに秋らしい写真を撮りたいが、列車は来ない、(下)遮断機がない「救護センター踏切」を大型トレーラーが通過する

 この駐車場が途切れたところにあったのが「救護センター踏切」。東海道貨物線の支線を意味する「東貨支線」の表示も確認できた。列車は来ないので踏切は開きっぱなし。正確に言うと警報器はあるが遮断機は取り外されていた。

 JR東日本の計画書によると、この踏切付近は立体化される。貨物ターミナル構内に出入りする大型トラックがひっきりなしに行き交う現状を見て、せっかく線路が残っているのにわざわざ高架にする理由がよく分かった。

 踏切から先の線路はフェンスに囲われ、北部陸橋の手前で新幹線の車両基地から伸びる回送線と合流。新幹線と大汐線の二つの高架橋が並ぶ格好で田町方面へ向かうが、既に4時間近く歩いており、今回の観察はここまでとした。

 JR東日本によると、環境影響評価に3年、建設に7年を要し、2029年の開業を見込んでいるという。貨物ターミナルから羽田空港までの約5キロはほぼトンネルで新線を建設するが、それ以外は用地が確保されているのが強みか。湾岸エリアのダイナミックな車窓を想像しながら、10年後を待ちたい。

 ☆藤戸浩一 共同通信社スポーツ特信部勤務

 ※汐留鉄道倶楽部は、鉄道好きの共同通信社の記者、カメラマンが書いたコラム、エッセーです。

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