DTMドイツ・ツーリングカー選手権を運営するITR.e.Vは、バッテリーや水素によるフューエルセル(燃料電池)パワープラントを持つ、1000馬力越えのハイブリッド車両による未来のツーリングカー・シリーズのコンセプトを発表。産業用ロボットアームによるタイヤ交換など、独創的なビジョンを描いたティザームービーを公開した。
11月7日にビジョン・コンセプトのラウンチを行ったITR代表を務めるゲルハルト・ベルガーは「これは勇気に満ちた、革新的コンセプトの未来像だ」と、その意図を説明する。
「モータースポーツの未来を創造し、ファンの興味を惹きつける興奮やスペクタクルを維持しながら、地球環境に配慮した代替ドライブトレインでレースを提供するために、我々ははるか先を見据える必要があると考えている」
「モータースポーツに携わりたいと考えているメーカーが、こうした代替燃料によるレースシリーズや、そうしたコンセプトにますます注目を寄せるだろうことは明らかだからね」
このコンセプトに描かれた電動ドライブトレインは、燃料電池のシステムを軸に共通化される方向性ではあるものの「ある程度、エンジニアリング面での自由が保障される」といい、マニュファクチャラーによる新技術開発のテストベッドとして機能することも考慮されている。
そしてユニークなアイデアが描かれるピットストップでは、タイヤ交換を「産業用ロボットが担当」し、40分間のレースではピットレーンでバッテリーパック、または水素タンクをカートリッジ方式で取り外しての交換作業が行われる。
ITRによれば、この新シリーズは「将来の自動車産業に向け、ハイパフォーマンスEVの設計や開発という前例のない機会をマニュファクチャラーに提供する」ことを主要なコンセプトとし、現行のDTMシリーズと並行する形の新規シリーズ、またはサポートレースとして位置づけている。
また、このシリーズの明確な創設時期などは示されていないものの、ベルガーはそのビジョン実現はファン、メーカー、スポンサーからの潜在的な関心だけでなく、技術的および経済的な実現可能性の評価に依存していると続けた。
「明らかに、その実現には多くの要因が絡むことになり、シリーズが立ち上がるにはすべてのパラメーターに依存することになるだろう」
「何よりも最初の関門になるのが、技術的な実現可能性だ。しかし、我々はかねてよりこの分野を非常に集中的に調査しており、実現可能性を評価してきた。今後も専門家の助けを借りて現状を評価しつつ、具現化の方法を模索することになるだろう」
「その検討のなかには、たとえばピットストップ用の野心的で画期的な技術を導入する場合の、バッテリーおよびロボットのメーカーなども含まれている。当然、開発にまつわる予算や運営のバジェットも大きな意味を持つことになる。これらの分野でも、適切なバランスをとることが必要なんだ」
現在、55分のレースに1回のタイヤ交換義務のフォーマットを採用するDTMでは、この2019年から燃料使用量を制限した最新の2リッター直列4気筒直噴ターボを採用。2022年にはこのエンジンにハイブリッドシステムをドッキングする可能性を含め、持続可能なパワートレイン技術を導入する機会を随時、検討していくとしている。