勝ち星重ね棋士最高峰/行方(弘前出身)九段に昇段 青森県出身3人目

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終局後、感想戦で対局を振り返る行方九段=14日午後11時18分、東京都内

 デビューから26年あまりで、ついに棋士の最高峰に-。東京の将棋会館で14日指された第78期順位戦B級1組8回戦で勝利し、昇段を決めた青森県弘前市出身の行方尚史九段(45)は終局後、対局中と変わらない表情で報道陣の前に姿を見せた。ただ、目は少し赤らんでいるように見えた。

 この日の相手は9月に昇段し勢いに乗るベテラン畠山鎮八段。行方九段は相手の速攻を落ち着いて受けて反撃し、9月末から公式戦6連勝(テレビ棋戦除く)で、規定の勝ち星をクリアし昇段を決めた。

 八段への昇段は2007年3月。本人が「だいぶ時間がかかった」と言うように、九段に手が届くまで12年半超を要した。

 九段昇段には「竜王位2期」「名人位1期」「タイトル3期」「八段昇段後の公式戦250勝」のいずれかを満たす必要がある。「勝ち星で上がるしか昇段のすべはなかった。そうは言っても一勝一勝がなかなか重くて」。これまでの年月をかみしめるように、一言ずつ言葉を選びながら語った。

 現在の将棋界は藤井聡太七段(17)をはじめ、豊島将之名人(29)、永瀬拓矢二冠(27)ら若手が台頭している。一方、同い年で親交の深い木村一基九段(46)が今秋、王位の座に就き、史上最年長での初タイトルを獲得した。「年が一緒で当然、意識している」と行方九段。「彼の記録を抜く可能性のある棋士は自分だけだと思っている」と、自負心を口にした。

▼「タイトル奪取を」「郷土の誇り」/県内関係者の声

 青森県では3人目となる最高段位に到達した行方九段に、県内将棋関係者から祝福や長年の努力をたたえる声が上がった。

 行方九段の師である故大山康晴15世名人と長年親交があった、日本将棋連盟名誉会員の中戸俊洋さん(76)=おいらせ町=は「よくぞここまで頑張った。言葉がないくらい本当にうれしい。大山名人もきっと喜んでいることだろう」と目を細めた。

 中戸さんによると、行方九段は小学5年生の時には「プロ棋士」を明確に意識していたという。「(プロ棋士となる)四段昇段すら狭き門。そんな厳しい世界で将棋に打ち込み続けてきた。行方九段の強さは人並み外れたど根性。最後まで諦めず、本当に勝負強い」と評価。「今がまさに円熟の境地。タイトル奪取を目指すとともに、成長著しい若手棋士たちの挑戦をはねのけることで若手を鍛え、将棋界全体の底上げにも尽くしてほしい」とさらなる活躍を願った。

 行方九段は小学生時代、弘前大将棋部に通い大学生相手に練習を重ねた。当時、同部顧問だった同大の五十嵐靖彦名誉教授(78)は「当時はちょっと弱かったが、奨励会に入ったらあっという間に駆け上がった。最高段位に昇るのは、この上なくうれしいこと。これからさらに白星を重ねてほしい」と話した。

 県将棋連盟は行方九段が四段に昇段した時から後援会を組織し、応援してきた。北畠悟会長は「昇段は喜ばしいことで、まさに郷土の誇り。これからも県将棋界の発展に協力してもらえたら」と話した。同連盟の奈良岡実師範は「県連も行方九段とともに成長・発展してきた部分があり感慨深い。棋士の最高点に到達したが、まだ終わりではない。木村一基王位のように、今後はタイトルを目指してさらに精進してほしい」と期待を込めた。