フリマアプリで5000回取引、ヘビーユーザーの20代女性が買う“意外なもの”

生活者の新しい消費観・消費行動を解説する連載の第4回。今回は、フリマアプリなどを通して積極的に個人間取引を行っている生活者にフォーカスを当てていきます。博報堂生活総研が全国15~69歳の男女に対して行った調査では、フリマアプリの利用率・今後の利用意向はともに若い層ほど高くなっていますが、生活者は実際にどのように利用しているのでしょうか。ここでは都内の20代女性の例をご紹介したいと思います。


総取引数は5,000回超。あらゆるものを売り買いする

東京都在住のS・Aさん(20代女性)は、フリマアプリをサービスが登場して間もない頃から利用しています。使い始めた当初は大学生で、受験勉強で使った赤本や参考書、高校の時の制服などの不要品が売れたのをきっかけにはまっていき、これまでの総取引数は5,000回にものぼります。

売っているものは、家電や本、洋服、結婚式で使ったドレスなど多岐にわたります。買ってみたけれど合わなかったものや、もう使わなくなったものは何でも売っているとのこと。まずは出品してみて、売れなかったものは寄付サイトでまとめて寄付しているそうです。

なお彼女は、新品の化粧品や水着のほか、定価3万円以上する結婚式用のベールもフリマアプリで2,000円程度で購入。加えてゲームのプレイ時間を短縮するために、セーブデータの残っている中古のゲームを買ったこともあるそうです。こうした店頭やECで買えないものが買えるので、「ほとんどのものはフリマアプリで買うほうが得」だと話します。

今も本や家電など、様々なものを出品

フリマアプリの買い物は「生感があって楽しい」

S・Aさんがフリマアプリを使うのは、「得だから」だけではなく、「楽しいから」でもあります。

彼女は器(うつわ)が好きで、フリマアプリで一点物を売っている作家から何度も作品を購入しているといいます。メッセージのやりとりで作品について教えてもらったり、「こんなものがあったらいいな」といった要望を反映した作品を作ってもらうこともあるそうです。また、フリマアプリでは、説明欄に商品や出品者にまつわるエピソードが書かれていることがあります。

「外商から購入した」といって高級ブランドの商品をたくさん出品している人を見て「この人はいったいどんな生活をしているんだろう…」と思いを馳せたり、文章からその人の人となりをうかがい知ることができるのが楽しいといいます。

なお、地元の人同士で手渡しでものを売り買いできるwebサービスを利用している別の30代女性も、「自分と似た境遇の女性(働きながら子育てをしている)が購入者だった時は、値引きして譲ることが多い」と話しています。このような、企業から購入するネットショッピングにはない「生感」があることも、フリマアプリをはじめとした個人間取引の魅力となっているようです。

買い物が「これでいい」から「これがいい」に

フリマアプリを使うようになったことで、S・Aさんの買い物観や買い物の仕方は大きく変わったそうです。「作家物 陶器」で検索していろいろなものを見て、さらに知りたくなって本を買い、また検索する…といったことを繰り返すうちに、好きなものに関する知識がどんどん増えたのです。そして、ものの良し悪しがわかるようになったことで、行く店も変わりました。

「これでいい」と妥協して安いものを買うのをやめ、高くても「これがいい」と考えて、質の良いものを百貨店などに行って買うようになったといいます。
作家物の器を使う時も、「世界にひとつしかないこの器でご飯を食べよう」と考えて、壊れても修理しながら大切に使っているそうです。

器が増えすぎて入りきらなくなってきたので、リフォームで棚を増設

フリマアプリのユーザーは「断捨離しながら小遣い稼ぎができる」ことを重視するミニマリストだと思われることがあります。しかしS・Aさんは自らを、欲しいものを何でも買う「マキシマミスト」だと考えています。フリマアプリを利用したことで自分の好きなものが分かるようになり、百貨店などで新品の購入も積極的にするようになったからです。フリマアプリは、「とりあえず買ってみて、合わなかったら売る」といった新しい消費を生み出している側面もあるようです。

【調査概要】
・消費エクストリーマー調査
調査地域:首都圏
調査手法:家庭訪問および会議室でのデプスインタビュー
調査対象:20~40代の男女
フリマアプリ・サブスクリプションを積極的に利用している方、スマホゲームや趣味に積極的にお金を使っている方、家計簿に力を入れている方など
※機縁法およびweb・SNSを通じてリクルーティング
調査期間:2019年4月8日~6月14日

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