山本太郎氏は永田町を動かし野党共闘を実現できるのか。れいわ新選組の道のりは険しい(後編)|畠山理仁

本記事は前編・後編の二部構成です。
前編はこちら>>「愚直に街頭演説」を続けるのは消費税5%のため。山本太郎氏が目指す、野党共闘と政権交代(前編)|畠山理仁

永田町の政治家の「空気感」

山本は全国ツアーに出かけることでも外堀を埋めようとしている。有権者一人ひとりとリアルでつながり、「消費税5%」を求める声を大きくしていくことが活路になるからだ。
一方、野党側の動きはどうか。
11月6日、野党の党首クラスが中村喜四郎衆議院議員(無所属)の呼びかけで集まり、都内のホテルで懇談を開いた。出席したのは、立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、社会保障を立て直す国民会議の野田佳彦代表、無所属フォーラムの岡田克也代表、社民党の吉川元・幹事長。そこに日本共産党の志位和夫委員長も参加した。
この会合では何が話されたのか。
11月8日、岡田は記者団との懇談の場で、
「(れいわ新選組の話は)出ていませんね、私の記憶では」
と明かした。その場にいた筆者は「消費税についての話題は出たか」と岡田に聞いた。
「私の記憶では、ありませんね。話題になれば相当いろんな議論が出るはずだから、たぶん話題になってないんじゃないかな。みんな控えた方がいいと考えたんじゃないかな」
岡田はそう言って苦笑すると、控えたほうがいいと考えた理由について、
「それぞれ微妙に違いますよね。僕や野田さんは一体改革をやったほうだし」
と立場の違いを淡々と述べた。次回、他の人を呼ぼうという話も出なかったという。これが今の永田町の空気感だろう。

「新たな時空の歪み」を生み出せるか

岡田から会合の様子を聞いた11月8日の夕方、筆者は山本太郎からのコメントを取りに再び永田町へ向かった。山本が森ゆうこ参議院議員(国民民主党)のパーティーにゲスト出演すると聞いたからだ。森のパーティーには小沢一郎衆議院議員も招かれていた。

壇上でマイクを握った山本は、かつての自由党の仲間たちを「永田町で初めてできた家族」と紹介した。森や小沢との関係は、今でも良好に見える。山本は会場でサインをしたり、腰を折って支援者と挨拶をしたりと、せわしなく動いていた。

筆者はその合間に山本に聞いた。野党共闘の「外堀」はどのくらい埋まったのか、と。
「いやー、見えていないです」
山本の表情は硬い。しかし、「全く埋まっていないのか」と問うと、少し表情が和らいだ。

「それはないと思いますけどね。中からも押してくれている人がいるし、自分の支持政党にアプローチしてくださる方もいらっしゃる」
ただし、ダイナミックな動きが見えるようになるには、「まだ時間がかかる」と山本は冷静に分析した。

森ゆうこには「次の選挙で山本と一緒に闘えそうか」とストレートに聞いた。
「なるべく大勢で力を合わせないとね。みんな思いは一つだから、そのうちうまくいくんじゃないですか。そうじゃないと勝てない。今のうちはお互いにいろんな主張をしてやればいいじゃない」
森の態度はきわめて楽観的に思えた。
この日のパーティーの前半、山本と森は参加者の前で公開対談をした。山本はその場でこんなことを言っていた。

「向こう側(与党側)は普通じゃない。不真面目という言葉で収まりきらない人たち。TPP反対と言って選挙に勝ったのに、TPP賛成をする。私たちはイカれた人たちを相手にしないといけないんだから、もっとフリースタイルでいかないといけない」
山本の言葉を受けた森はこう応じた。
「野党支持者は真面目だからね。『太郎は良いけど、玉木はダメだ』とか言ってちゃダメ。応援してくださる人たちも真面目なので、排除の論理がすぐ働く。そうじゃない。結果として庶民を守れるかどうか。一つ一つ言ったらみんなで一緒にやれない。自民党は政権を握るためにはどんなことでも認める。めざせ、二階幹事長。我々もそれぐらいにならないと」
「新たな時空の歪み」を生み出す政治家には、大胆さが求められる。その行動を支えられるのは、有権者の強力な後押ししかない。つまり、有権者の思いや動きが永田町の政治家に伝わらなければ、「消費税5%」での野党共闘は実現しないだろう。
その意味で、「本丸」への道はまだまだ険しいと言わざるをえない。(文中敬称略)

(記事中の写真撮影:畠山理仁)

本記事は前編・後編の二部構成です。
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