年の差カップル 「TOKIO・城島」型は半世紀で68%減少、「嵐・二宮」型は7%増加

日本の人口の最大派閥「団塊」の次に多い人口グループの「団塊ジュニア」が生まれたのは1971年~1973年です。1年間に約200万人の子どもが生まれていました。

しかしここ数年、日本で生まれる子どもは年間90万人台に落ち込み、減少する一方です。半世紀待たずに1年間に生まれる子どもの数が半減以下という「生まれる子ども数の大暴落」という現象が起きています。

「なんだと! 夫婦がそんなにも子どもを産まなくなったのか……。2人産んでいたとすると、1人しか産まなくなったんだな!」というのは、団塊ジュニアより上の世代の発想です。


成婚数は半数以下に

結婚して当たり前、という思い込みがこの言葉の裏にはあります。「えっ? 思い込みってどういうこと?」という方は、次のデータを見ていただきたいと思います。

団塊ジュニアが生まれた頃の1970年の統計を見ると、1年間に78万2,222組が初婚同士で成婚していました。

しかし、2017年の初婚同士の成婚数は35万8,773組となり、1970年の半数以下(46%)にまで大きく落ち込んでいます。

つまり、子どもが急速に減った背景には、夫婦の間に産まれる子が少なくなった、というよりも、そもそも子どもが生まれるために必須のカップル数が子どもの数の減少割合とほぼ同程度、大きく減少した、ことがあるのです。もしこれで夫婦の間の子どもの数まで大きく減っていたならば、計算上、半世紀で半減どころの出生数ではありえません。

これではいくら「子育て支援!保育園!待機児童!」と叫んでも、子育て支援は「支援するための子どもありき」の「カップル支援」の発想ですので、結婚が増えることに対しての影響力に関しては疑問です。

「保育園ができれば、お隣の息子さんに婚約者が出来るのか……?」という視点が欠けているのです。

1970年以降、半減以下に減った成婚数(ちなみに成人人口はそこまで急激には減少していません)。しかし、唯一1970年との比較で成婚数を増やした組み合わせがあります。

それは、つい先日成婚された嵐の二宮さんカップルに象徴される「年上妻婚」です。今回は、結婚支援の現場でもいまだ思い込みが極めて激しい「年上妻婚」についてデータを検証します。

1カップルあたり「4人」?

そもそものカップル母数が半減以下となっている状況では、どんなに子育て支援をしても生まれる子ども数が大きく変わるわけがありません。

カップルが半減するということは、例えばどういう計算になるでしょうか。

1,000組カップルがいたとします。1組が2人ずつ授かったとして(ここ30年以上続く初婚夫婦の授かる平均数です)2,000人の子どもが授かります。しかし、カップルが半数の500組に減れば、子ども数も1,000人へと半減します。

そのような状況で、「そうだ! 夫婦が2人ではなくて3人産めばよいのだ」という政策を打ったところで、全カップルで成功したとしても500組×3で1,500人にしか戻りません。

カップル数が半減する中で、子育て支援だけで子どもの数を元の2,000人に戻すならば、500組が「4人産めるようにする」政策が必須です。しかし、4人もしくは3人子どもが欲しいカップルというのは意識調査でも多くはありません(2015年出生動向基本調査「18歳~34歳独身者調査」によると平均2.2人)。

カップルが欲しいと希望する子どもの数を「超えて」授かることを想定して何かを行なうということは、自由主義の時代ではハラスメント的な発想ともとらえられかねないというリスクも発生します。

唯一成婚数を増加させた「年上妻婚」

戦後の日本で2番目に人口の多い団塊ジュニアが生まれた(=戦後2番目に年間に生まれる子ども数が多かった)頃の1970年と件数で比較した2017年の、年上夫婚、夫婦同年齢婚、年上妻婚の3パターンの成婚件数の変化を見てみたいと思います。

初婚同士の成婚総数は1970年から2017年で46%に半減していますが、二宮さんと同じジャニーズで最近成婚されたTOKIO・城島さんカップルに象徴される「夫が年上の結婚」は、62万件から20万件と半世紀前の3割台にまで激減しています。

夫婦同年齢は7.9万件から7.5万件で、ほぼ同水準で推移しました。

ところが、「二宮さん型」の年上妻の結婚だけは8万件から8.6万件へと「結婚件数が大きく減少する時代に実数でも増加」という独特な動きを見せています。

計算上当然ですが、実数だけでなく全体に占める割合としても増加を続けており、1970年には10組に1組という珍しい結婚だったのに対し、今では4組に1組という脱マイノリティ婚化を果たし、夫婦同年齢婚よりも多い成婚数となっています。

一方、「城島さん型」の夫年上婚は全体の55%で2組に1組にまで急減しています。

成婚が高齢層ではほとんど発生しない(ここで女性が『独身』であるのは寿命の差から来る死別原因がメイン)こと、50代までは男女ほぼ同数であることを考えると、2組に1組で男性が年上ということは母数から考えて全く特殊な話ではありません。

つまり、「男性が年上の結婚が当たり前」という考え方は、もはや統計的にみるならば「非常識」の時代であることがわかります。

男性年上婚の幻想

先日も20代女性から「私の周りの若い男性が『やっぱり男が年上のカップルが普通だよなあ。俺の周りなんてそういうのしかいないし』と話していて、先生のデータを聞いていたのでなんだかなあ、と思いました」というお話を頂きました。

その女性は「やはり私の周りの男性はエリートが多いからでしょうか?」ともつぶやいていました。

しかし、若い男女の理想の結婚観をみてみると、三高男子モテ時代は終焉を告げていることを過去の「結婚難民の羅針盤」で調査結果とともに示しています。

そうはいっても相変わらず、「報道で目立つ結婚」では男性年上婚が多いように思います。例えば元アイドル男性や芸人さんたちの結婚ですが、男性の年上婚(それもかなり年の差の)の報道が目立ちます。40代のTOKIO・城島さんの20代女性との結婚は、その年齢差も含めて大きく報道されました。

ここでよく考えればわかることですが、そもそも2人の結婚がわざわざ報道されるケースは、「ありきたり」な2人の結婚ではないからです。つまり、結婚マーケットで普通の組み合わせの2人ではないからこそ取り上げられており、その「統計的外れ値」度合いが高ければ高いほど、大きく取り上げられることになるのです。

一方、嵐・二宮さんカップルのケースは2歳差ということもあり、2人の年齢差がとくに強調して取り上げられませんでした。年上妻ということを読み飛ばした読者もいるのではないかと思います。

また、これは一般的傾向としての話ですが、「目立つ結婚相手となる夫」を特に望む女性だけが、芸能界の方などには近づける傾向にあります。元アイドルや芸人さんにが人気者であればあるほど、「普通の女性」は接点さえないのです。ですので、なんとか彼らにたどり着こうという強い目的意識を持つ女性だけが一部、近づけるかもしれないという程度の状況です。

そういった特定の目的への意識の強い集団の彼女たちの価値観や行動をもって、世の中の女性がすべて「統計的外れ値の男性」に群がる(年上の男性の年の差婚が叶う)、という証拠には全くなりません。

報道上目立つために採用されやすいカップル像に毎日触れる中での「サブリミナル効果」がリアルからはずれた思い込みを作り出しやすいこと、そして、その思い込みに一致する事例ばかりをつい自分の夢にあてはめて身近に求めてしまう状況が発生しやすいということ。

「アクセス重視のネット報道情報過多の時代」だからこそ、結婚希望者やその親族、支援者にはとくに気をつけてほしいと思います。

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