トランプ氏が推し進める経済政策で、トヨタなどが長期的米国戦略を示せない深刻

©株式会社エコノミックニュース

 「パリ協定」は2015年にパリで開催された「COP21」で採択された地球温暖化対策のグローバルな枠組みだ。温室効果ガスの排出量を2050年以降に実質的にゼロにすることを目標に掲げており、187の国と地域が締結して、2016年11月4日に発効した。

 ところが米トランプ政権は、その「パリ協定」からの離脱を国連に正式に通告し、来年11月に離脱することになったと、大手マスコミが11月4日に一斉に報じた。トランプ大統領は支持母体のひとつである石炭産業などに配慮し、就任前から協定からの離脱を公約に掲げ、その公約を実行に移したわけだ。

 こうしたなか、米自動車産業はトランプ大統領の「米国第一主義」政策に翻弄され、長期的な経営戦略を示すことが出来ていない。

 経営戦略でも協働歩調を執るトヨタとマツダは、2018年1月に米国アラバマ州で、合弁新会社「Mazda Toyota Manufacturing, U.S.A., Inc.」を設立し、2021年に新工場の稼働開始を発表していた。

 ところが、今年2019年7月になって、トヨタが新工場で生産する予定のクルマを「カローラ」から、SUVに変更すると発表。同時に2020年前半に稼働するメキシコの新工場でも、予定していたカローラではなく中型のピックアップトラックへ生産切り替えを発表した。

 この異例とも言える生産車種見直しの背景にあるのは、トランプ氏の時代に逆行する環境政策だ。つまり、2017年1月の大統領就任以来トランプ氏は、燃費規制緩和を訴えており、これに呼応した米自動車メーカーはピックアップトラックなど大排気量車販売で攻勢をかけている。ハイブリッドなどでエコで強みを発揮してきたトヨタも現実的な対応に踏み切らざるを得なかったというわけだ。

 ただ、米国の自動車環境規制は、厳しい排出基準を重視するカリフォルニア州が主導している。そのため、トヨタは11月20日に開催する米国ロサンゼルス自動車ショーで、ミドルサイズSUV「RAV4」のプラグインハイブリッド車(PHV)を展示・ワールドプレミアする。カリフォルニア州に配慮したモデルの発表だ。自動車各社はカリフォルニア州の環境規制強化とトランプ政権の燃費規制緩和策を両睨みした経営戦略がしばらく必要となりそうなのだ。

 トランプ氏の輸入経済政策に揺れる自動車企業だが、それを支える部品メーカーの経営はより深刻だ。グローバルな自由貿易体制を受け世界各国に工場を建設してきた日系部品メーカーだが、トランプ大統領は米国内以外で生産した自動車およびその部品に大幅な関税を課すという施策を打ち出す。

 標的になったのはメキシコだ。トランプ政権は今年6月、メキシコからのすべての輸入製品に5%の追加関税かけ、メキシコ政府の不法移民対策が十分と言えない場合には、25%まで引き上げると発表。人件費が安いメキシコでピックアップトラックなどを組み立て、米国へ輸出している米自動車産業への影響は小さくない。

 トヨタは2014年にメキシコでの工場新設を決める際、国内部品メーカーにもメキシコ進出を求めた。北米自由貿易協定を前提に米国向けの輸出を見込んでいたのだが、そのメキシコが大きな重石になりかねない。(編集担当:吉田恒)