酒飲み放題、ローストビーフ…有権者に無料飲食「買収に近い」識者 大岡衆院議員パーティー

大岡氏の後援会が主催した政治資金パーティーの来賓向け招待状。会費1万円の文字の上に「御招待」のスタンプが押されている

 自民党の大岡敏孝衆院議員(滋賀1区)が、政治資金パーティーに地元有権者らを無料で招待したことが15日、明らかになった。同様のケースは過去にも各地で発覚し、地元の選挙管理委員会から「有権者への寄付行為に当たり、公職選挙法違反の恐れがある」と指摘されてきた。10月には、菅原一秀前経産相が地元有権者への金品配布疑惑で辞任に追い込まれるなど「政治とカネ」の問題が取りざたされたばかり。専門家からは、改めて議員と有権者双方に法令順守を求める声が出ている。

 4日夜、大津市のホテルで開かれた「大岡としたかを囲む会」。出席者によると、会場には円卓が並び、前方に無料招待の来賓席が設けられた。約2時間の会合で知事や国会議員ら来賓数人のあいさつや、大岡氏の国政報告などがあった。あいさつを終えて途中退席する来賓もいたが、多くは残った。ローストビーフや魚料理などが出され、酒類は飲み放題だったという。
 大岡氏の説明では、パーティーは2015年から開催。「政治課題について意見を聞き、どれだけ得るものがあるか」を自身で判断し、知事や首長、県議、市議、学区自治連合会長らを来賓として無料招待してきたという。自治連合会長らの無料理由は「地域の声を聞き、国の施策に反映させるため」としている。
 これに対し、公選法に詳しい上脇博之・神戸学院大法学部教授(憲法学)は「会費を払い、初めて飲食する権利が生まれる。『会費(飲食費)の代わりとして地元の意見を聞かせてもらっている』などという理屈は苦し紛れに聞こえる。会費を払って出席し、意見を伝えた人たちもいるだろう。特段支持をしていない人から無料で飲食を提供されたら、『票を入れてやってもいいか』と思ってしまい、事実上の買収に近い効果さえある」と指摘する。
 実際に出席し、あいさつや意見交換をしなかったという自治連合会長らは困惑する。ある会長は「自治連会長という立場がこれほど特別扱いされるのかと驚いた。寄付行為に当たるかもしれないという認識はなく、猛省している」、別の会長は「自治連のテーブルの出席者は起立して会場で会釈しただけ。個別の意見交換はなく、周囲も飲み食いがメインでええんかなと思っていた。寄付なら良くないので、今後求められれば会費1万円は払う」と話す。
 同様の問題では、発覚後に会費を徴収したというケースもある。2016年、福島市長だった小林香氏の後援会が政治資金パーティーで、有権者10人に無料で飲食を提供。京都新聞社の取材に、福島県選管は「公選法に抵触の恐れあり」とし、当時の後援会役員は「同法違反の恐れがあると報じられ、未払いだった10人から会費を徴収した」と話した。
 また05年には、当時の福岡市長の後援会が国会議員、県議ら76人をパーティーに無料招待し飲食を提供。同市内選出の県議も04年、パーティーで有権者約150人に無料で酒食を振る舞った。ともに福岡県選管から同法違反の恐れがあると指摘を受けた。
 日本大法学部の岩井奉信教授(政治学)は政治とカネの問題が後を絶たない中、「政治家も有権者も『寄付とは何か』『寄付行為になるかもしれない』という法令順守の意識が欠けている。各地で同様の事案があると思うし、政党として改めて議員の教育や引き締めを行うべきだ」と指摘する。

 

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