【プレミア12】侍Jはベストメンバー、韓国は“主力温存”… 決勝前哨戦にあった日韓双方の思惑は

侍ジャパン・稲葉篤紀監督と韓国代表のキム・ギョンムン監督【写真:荒川祐史】

2日間試合のなかった侍ジャパン、決勝まで3連戦となる韓国の違い

■日本 10-8 韓国(プレミア12・16日・東京ドーム)

 野球日本代表「侍ジャパン」は16日、東京ドームで「第2回 WBSCプレミア12」(テレビ朝日系列で放送)スーパーラウンド最終戦の韓国戦に10-8で勝ち、スーパーラウンド首位での決勝進出を決めた。3回に一気に6点を奪うなど、打線が14安打10得点と爆発。韓国の猛追に遭いながらも、何とか競り勝ち、17日に行われる決勝の“前哨戦”を白星で飾った。

 日本と韓国。どちらも17日の決勝進出を決めた状態で行われた、このスーパーラウンド最終戦。本当に大事な試合はもちろん決勝で、この日は言うならば“消化試合”だった。いかにして、翌日の決勝に繋げる試合とするか、が両国にとって大きなテーマだった。

 まず、この試合を迎えるにあたって日程面に違いがあった。侍ジャパンは13日のメキシコ戦を終え、2日間試合がなかった。一方の韓国は12日のチャイニーズ・タイペイ戦の後、2日間の空きがあり、15日にメキシコ戦を戦っていた。17日の決勝まで3連戦となるところだった。

 侍ジャパンはスタメンはほぼベストメンバー。首の違和感でメキシコ戦を欠場した菊池涼介内野手も復帰した。稲葉篤紀監督は「2日間空きましたので試合勘、試合の入りというのを大事にした。早い段階で交代して、打席がこれまで少なかった選手を打席に立たせて。明日は総力戦になるので、そういところも含めて1試合やりました」と語った。試合勘を取り戻させつつ、状態の上がってこなかった打者の復調のキッカケとなることを狙った。

 一方で、韓国はスタメン5人を入れ替えてきた。キム・ギョンムン監督も「今日の試合は、ずっと試合に出ていた選手には休息が必要だと思った」と主力を“温存”させたことを試合後に明かしている。まずは選手たちの疲労を取り除くことを優先。試合途中で選手を入れ替えつつ、主力を休ませた。

 試合は侍ジャパンが14安打で10点を奪い、競り勝った。試合こそ乱打戦になったが、日本は終盤になっても犠打や四球を絡めて1点を奪いに行く本来の野球を徹底。稲葉監督も「今日は雑にいかないようにいこうと。これまで通りの野球をやっていこうと思っていました。明日に向けてというところでは(やりたいことは)やれたと思います」と頷いた。

両チームとも投手陣は手の内隠し、エースも勝ちパターンも使わず

 韓国も一時は6点のビハインドを背負いながら、サブ中心のメンバー構成で侍ジャパンを猛追。4回に一挙に5点を奪うなど、こちらも12安打で8点を奪った。主力のコンディション調整を優先させたキム監督は「日本も今日は勝ってきた投手は出てきていないので、あえて言及する必要はない」と語っていた。

 両チームともに投手陣の起用に関しては、翌日の決勝を見据えて手の内を見せなかった。侍ジャパンは今大会初先発となった岸孝之投手(楽天)が先発。2番手からは大野雄大投手(中日)、山岡泰輔投手(オリックス)、嘉弥真新也投手(ソフトバンク)、大竹寛投手(巨人)、田口麗斗投手(巨人)が登板。リードした展開でも“勝利の方程式”は見せなかった。

 稲葉監督は試合後に「投手陣はある程度プランがあったので代えづらかった」と語っている。この日の投手起用は予め想定されていたもの。決勝は先発の山口俊投手(巨人)に加え、高橋礼投手(ソフトバンク)も中4日でスタンバイ。ここに勝ちパターンの甲斐野央投手(ソフトバンク)、山本由伸投手(オリックス)、山崎康晃投手(DeNA)の3人を中心にして韓国打線をねじ伏せる算段だ。

 韓国もこの日は手の内を隠した。先発のイ・スンホ投手はここまでわずか1イニングしか投げていなかった投手。2番手以降も勝ちパターンの投手は投げていない。決勝は2本柱の1人であるヤン・ヒョンジョン投手が先発。“日本キラー”キム・グァンヒョン投手もスタンバイ。キム監督も「我々も明日はベストな投手を出す」と宣言していた。

 その中で、双方は1試合を通して相手の選手たちのデータを徹底的に集めることに注力したはず。乱打戦となったのには、それぞれのバッテリーが打者を抑えること以上に特徴を掴みにいったところにもあるはず。稲葉監督も「どのコースを振ってくるとか、いろいろキャッチャーとバッテリーコーチも試合中からやり取りしていましたし、明日もまたミーティングからやっていきたい」と語っており、それは韓国サイドも同じだろう。 

「今日の試合をどう明日に繋げるかが大事だと思います」と稲葉監督は言う。侍ジャパンにとっては、決勝に勝ってこそ、このスーパーラウンド最終戦が意味を持ってくる。日本も、韓国も、それぞれの思惑を持って臨んだ日韓戦の第1ラウンド。その成果は決勝が終わった時に分かる。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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