【プレミア12】無得点も4回の攻撃に侍Jの底力 元オリ監督森脇氏「打順の巡りは常にプロセスがある」

侍ジャパンは韓国代表相手に10-8で勝利し17日の決勝に臨む【写真:荒川祐史】

元オリックス監督の森脇氏が韓国戦の勝負のポイントを解説

■日本 10-8 韓国(プレミア12・16日・東京ドーム)

 野球日本代表「侍ジャパン」は16日、東京ドームで「第2回 WBSCプレミア12」(テレビ朝日系列で放送)スーパーラウンド・韓国戦を10-8で勝利し、17日の決勝戦に向けて弾みをつけた。宿敵・韓国との一戦をソフトバンク、巨人、中日でコーチ、そしてオリックスでは監督を務めた森脇浩司氏は、3回のそつのない攻撃で1点ずつ積み上げ6点をもぎ取った攻撃、5回無死満塁から開き直って無失点で切り抜けたバッテリー含めたディフェンスは勿論だが、0点に終わった日本の4回の攻撃を勝負のポイントに挙げた。

 やはり日韓戦はどのような形になっても接戦、タフなゲームになる。3回に6点を奪うビッグイニングを作りワンサイドゲームかと思った直後の4回に韓国打線が5点を奪う展開。これが国際大会であり好敵手ともいえる韓国戦だ。

 まずは今大会打線が一番繋がったともいえる6点を奪った3回の攻撃から。先頭の坂本が二塁打、そして続く丸のバントが見事に決まった。韓国側からすれば最低でも1アウトは欲しい場面だったが安打となり無死一、三塁とピンチを広げた。

 インフィールドの中で投手が絡んだプレーでアウトを取れない場合は一番失点する確率が高いと見ている。投手自身も目に見えない“ダメージ”があり、続く打者は日本の主砲で好調の鈴木。この好機を逃さず詰まりながらも中前に落とす適時打など打者一巡の猛攻は見事だった。

 全ての打者が自分の役割を果たしタイムリーも飛び出したが、6点目を奪う直前の一死一、三塁、打者山田の場面で1-1から外崎がスチールを決めたことでゲッツー態勢から前進守備に変わり相手を更に追い詰めた所も見逃せない。その中でも、浅村のタイムリーは続く攻撃陣の力みを取り除き勢いをつけるものだったし、2点リードの無死満塁で代わった投手から松田がもぎ取った押し出し四球は韓国ベンチに大きな落胆を与えた。

 相手投手は変わったばかりの右腕イ・ヨンチャンだったが追い込まれるといつものようにバットを短く持ち、粘りながら大きな4点目を奪った。意識だけでなく形もはっきりと変えて最善を尽くすスタイルは、控えに回った時などに大きな声で仲間を励ましたり、常に元気でプレーするだけではない。沢山の気付き、学びを頂いた選手の一人だった。伸び伸びプレーすることは必要だが、その中で状況を把握しながら伸び伸びプレーすることが大事だ。本当に効果的な1点だった。

「タフなゲームでは、3者凡退で終わることで相手に流れを渡すことにも」

 そしてこの試合で一番注目したのは無得点に終わったが4回の攻撃だ。直前に韓国打線の猛攻を受け1点に迫られた。次の1点が流れを左右する場面で日本は先頭の丸がヒットで出塁したが鈴木が併殺。3人で終われば嫌な流れだったが浅村が四球を選び吉田が2打席連続の安打で一、三塁の好機を作った。

 タフなゲームでは3者凡退で終わることで相手に流れを渡すことにもなる。結果的に0点で終わったが勢いに乗っていた韓国に“日本の粘り”を与えることができた。結果論と言われるとそれまでだが、続く5回の攻撃では山田、丸のタイムリーで2点を奪いリードを広げた。私は0点に終わった4回こそが5回の2点に繋がったのではと感じている。時間を経て、即席ではなく本当のチームになったと強く感じた瞬間だった。

 不思議なものでチャンスでの打順の巡りは常にプロセスがある。勝手に回るのではなく、打順は必然的に回っていくのだ。たとえ凡打、無得点に終わったとしても必ず流れはあり、それをいかに持ってくることができるかが勝負を左右する。牽制死を含めたミスは勿論だが、一塁までの全力疾走を怠る凡走こそ流れを変えることを肝に命じておかなければならない。流れを掴む強さ、掴んだ流れを決して相手に渡さないしぶとさが短期決戦では特に不可欠だ。日本は14安打10得点、韓国は12安打8得点と打ち合いになったが見応え十分のゲームだった。

 しかし、韓国との試合は最後まで何が起こるか分からない。彼らの一番の長所は反発力だ。決して点差が開いても諦めることなく一気に攻め立ててくる。これは見事だ。

 いよいよ17日は決勝戦。相手は再び韓国だがこの日とはまた違ったゲーム展開になるはずだ。チームが一つになった攻撃が見えた日本、そして反発力で向かってくる韓国。決勝戦に相応しい素晴らしいゲームになることは間違いない。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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