「はいたいコラム」 土地の課題を知る旅

©株式会社琉球新報社

 島んちゅのみなさん、はいた~い! 福島スタディツアーに参加して飯舘村へ行ってきました。

 食と農と地域をつなぐNPO法人コミュニティスクール・まちデザインの主催で、まず訪ねたのは、被災から8年を経て再開した農家レストランです。「気まぐれ茶屋ちえこ」を営む佐々木千榮子さんは、村特産の凍(し)み豆腐、凍み餅などの伝統料理にどぶろく免許まで持つ手作り名人ですが、震災後に夫を病で亡くし、自身も大病を患いました。中でもつらかったのは、「することのない」避難生活でした。

 失われた8年を経て再開に踏み出した理由を、千榮子さんは「この家に来ればお父さんと一緒にいられるから」と語ってくれました。震災前、飯舘村に6500人いた村民のうち、帰村したのは2割。それでも千榮子さんは週3日、店を開くことで、この家とお父さんと会話をしているのでした。ふるさとに帰る理由は、千榮子さんが自分らしく生きる権利なのです。

 今回の旅には、希望もありました。福島大学に今春、「食農学類」が新設されたのです。原子力災害それ自体の復興だけでなく、人口減少や土壌回復などの課題を負った福島から新しい農学を創造しようと、最先端をゆく研究者が集まりました。石井秀樹准教授は、遊休農地の活用と地域コミュニティーの再生を掲げ、菜の花、エゴマ、雑穀の共同栽培に取り組んでいます。住民の集いではエゴマと小麦を使ったうどんを総出で作り、研究報告会ではいくつも質問が出るなど、農村と大学が一体となっていました。

 もう一つの希望は、このツアーは7回目で、首都圏在住の会員が実に7年間も福島の生産者に寄り添い続けていることです。このNPOのはじまりは、会員40万人を有する生活クラブ生協で、都市と産地が協働して生産に関わるCSA(コミュニティーが支える農業)活動をしています。

 地域振興のカギは「関係人口」にあると言われます。現地を旅して人と関わることは、地域のやる気や誇りの回復と同時に、訪ねた側の心にも変化をもたらします。地域の課題を「じぶんゴト」にするスタディツアーは、今で言うサスティナブルツーリズムですが、国内に浸透したのは、震災の後ではないでしょうか。楽しい旅も大いに歓迎ですが、課題を知る旅には、都市と地域の双方を変える力があるのです。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
・・・・・・・・・・・・・・・・
小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。
(第1、3日曜掲載)