五島市・島民の買い物事情 住民組織などサービス開始「協力者確保が課題」

おくうら夢のまちづくり協議会が運行する買い物支援バスの利用者(右)と、荷物を運ぶ手伝いをする支援者(左)=五島市平蔵町

 自力で買い物に行くのが難しい高齢者が増える中、五島市でも住民組織や社会福祉法人を核とした移動支援サービスが動き始めた。
 同市奥浦地区のおくうら夢のまちづくり協議会(浦勝彦会長)は2017年から月4日、地区の14集落とスーパーを往復する買い物支援バスを運行。国の交付金で9人乗りの車を購入し、町内会長や民生委員ら約15人がドライバーを務める。同行して重い荷物を持ったり袋詰めを手伝ったりする支援員4人も配置。市の交付金や利用客の謝礼金を活動費に充てている。
 当初から利用する平山ヌイ子さん(83)は「路線バスは乗り降りも大変だけど、買い物バスなら油やしょうゆなど重たいものも持ってくれるので助かる」と笑顔。ドライバーの赤尾一美さん(66)は「利用者が喜んでいるのを見て、やりがいを感じる」と語る。
 同協議会の鍋内秀喜事務局長によると、利用する住民は17年度479人、18年度523人と増え、本年度はさらに上回るペース。鍋内事務局長は「利用者が増えうれしい半面、ドライバーの確保が課題。事業を継続していくためにも定年退職後の60代を中心に協力を求めていきたい」と話す。
 社会福祉法人では、さゆり会(同市下崎山町)が運営施設の多い崎山地区で、買い物支援に向けた仕組みづくりを模索している。先月は初めて、所有する車両で長手町の住民約10人をスーパーなどに送迎。今後も月1回実施するという。
 ただ通常業務との兼ね合いで同法人単独での事業継続は難しく、現在の取り組みは「きっかけづくり」。将来的には同法人の車を貸し出し、ボランティアの住民に運行してもらう形を目指す。同法人は「まず自分たちが動き始めることで、地域の力を引き出したい」としている。
 ただ、こうした民間の活動も市内では少数派。市長寿介護課の担当者は「活動が始まれば協力してくれる人はいるが、中心となって動く人や組織が少ないのが現状。住民を交えた座談会を通して、地域の状況に応じた解決策を考え、サポートしていきたい」と語る。

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