五島市・島民の買い物事情 互助で「生きがい」に Fineネットワークながさき・山本倫子氏

山本倫子氏

 地域における移動支援事業の成功の鍵が、住民同士で支え合う「互助」。各地で事業運営に向けた助言をしているNPO法人「Fineネットワークながさき」の山本倫子代表理事に、住民が主体となって動くメリットや課題を聞いた。

 -過疎地に暮らす高齢者の買い物を巡る現状は。
 独居や夫婦2人きりの高齢者世帯が増え、公共交通機関は採算の合わない路線を減らす。タクシーを使える人は限られ、経済格差が広がる。自ら「移動」できない地域は人口が減る一方で、消滅に近づく。

 -住民主体で移動支援サービスを行う効果は。
 住民が支援を受けるだけでなく「運転」や「買い物補助」など各自が持っている能力を発揮することで、生きがいや介護予防につながる。特に退職後の男性は、女性に比べ地域に溶け込めないケースが多いが、運転手などとして参加しやすく新たな居場所になる。

 -運営の難しさは。
 「白タク」行為などを禁じた道路運送法に引っ掛からないかと心配し、事業開始に踏み出せない人が多いと感じる。行政機関の福祉部門などが制度を深く理解した上で、住民に「何が違法か、違法でないか」とはっきり示してあげることが必要だ。

 -五島市は「運営の中心となる人や組織などが少ない」ことを課題に挙げる。
 まずは幅広い世代の地域住民や、行政機関の担当者、移動支援事業に詳しい専門家などを交えて意見を交わす座談会を地域で繰り返し、事業に取り組む必要性をしっかりと伝えることが大切。例えば移動支援は子育て世代にとっても暮らしやすさにつながる事業で、多くの人に「自分ごと」として考えてもらうことで、核となって動きだす人は自然と現れるはずだ。

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