「におい」京都の景観に入る? 焼き鳥「煙」巡り、店側と地元対立

観光客でにぎわう祇園新橋かいわい(京都市東山区)

 「におい」は景観に含まれるのか-。京都市東山区の祇園新橋かいわいに開店した焼き鳥店を巡り、店と地元の「祇園新橋景観づくり協議会」が対立している。国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定され、落ち着いた風情が京都屈指の人気スポットだけに、協議会は臭気や煙といった目に見えない環境も守るべき地域の「景観」の一つとして徹底した対策を要望。店はコストの面で難色を示し、平行線をたどっている。

 石畳の道と白川の静かな風情が人気の一角に今年4月、大阪市内に本店のある焼き鳥店の京都初店舗がオープンした。同協議会では、新たに営業行為を行う場合はできるだけ早い段階での事前協議を求めていて、今回は2月に協議を開始。外観の変更について話し合ったほか、ごみ出しのルール厳守など地域で商売をする際のマナーについての同意を確認した。
 同意事項の中には「近隣に対する騒音や悪臭などを発生させません」との内容があり、店側は同意を示す欄にチェックした。だがオープン直後から、室内にまで入ってくる煙とにおいに悩まされる住民が続出。焼き鳥店の近くにある日本料理店は「お客さんを迎えられる状態ではない」として4月は急きょ10日間ほど臨時休業した。
 その後、5月半ばに「排気設備に不備があった」として改良工事が行われたものの、現在も風向きによって煙や臭気が漂う日があるという。協議会では、より高機能の脱臭機や集じん機の設置を要望しているが、店側は「予算として難しく設置はできない」と回答、折り合いはついていない。
 協議会には、新規出店などを考えている事業者に対し、まちづくりの方針を示すために策定した「地域景観づくり計画書」がある。計画書には「祇園新橋を訪れる人が風情を味わえるように(中略)近所や観光客の迷惑になるような行為はしない」との記述がある。協議会では、この項目には建物の外観といった目に見える部分だけでなく、地域独特の「空気感」も含まれると考える。「ここは、先人が築き上げた文化が息づく街。地域を置き去りにした勝手な営業はなじまない」。永田一郎副代表が強い口調で非難する。
 ただ、計画書は市の認定を受けてはいるものの法的な拘束力はない。また、市環境指導課によると、「悪臭防止法」で規制される物質はアンモニアや硫化水素などに限られるといい、飲食店のにおいなどで住民から苦情があった場合、一般的には市環境共生センター職員が現地を訪ねて当該店舗に指導するが「基本的には当事者間の話し合いに委ねている」という。
 協議会では焼き鳥店の近隣店舗にアンケートをとって臭気と煙による意見を集約する構え。一方、店を運営する企業は「協議会と進行中の話のためコメントは控える」としている。
 景観づくり協議会を管轄する市景観政策課は「『景観』としては建物の姿形に対する支援や助成が中心。建物の使い方までは関われない」としている。

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