「スマホで錬金術」 ネット上で広告を打つ悪質な儲け話に乗ってみたら

「毎月10万円をプレゼントできる」と宣伝して、9億円以上を集めたGIFTプロジェクトのメンバーが逮捕されたように、ネット上には「簡単に、稼げます!」という話が溢れています。情報商材の購入をきっかけに、騙される人は後を絶ちません。私があえて、悪質業者の手の内に乗って、巧妙な騙しの手口を暴きます。


電話をかけると相手の思うつぼ

11月7日、消費者庁が超簡単「スマホで錬金術」と謳っていた業者に多額のお金を払ってしまったという相談が多く寄せられていることを公表したように、たびたび、この種の情報商材への注意喚起がなされています。

昨年10月には「タップイズマネー」というサイトの運営業者への注意喚起がなされました。今回は、その騙しの手口を紹介しましょう。

広告に「スマホをタップするだけで月収200万円が得られる」という文言を載せて、サイトに登録させます。さらにSNSを通じて、このビジネスがいかに儲かるかを訴えるメッセージや、この錬金術を考案した「加藤あやこ」(あやパン)なる人物による説明動画を送ってきます。そこでは、スマホを操作するだけで、一日2万円以上の収益を得たとする彼女の成功話や、高額月収を得ているという人たちの談話も流れます。

それを見て、儲かるかもしれないと思う人は申し込みます。金額は、18,000円。

購入すると、PDFファイルが送られてきます。その内容は、商品を安く仕入れて高く売るいわゆる方法「せどり」について書かれていますが、肝心な儲かる方法については、何も書かれていません。ものの数分で読めてしまう、ひどい内容で、情報はとても金額に見合ったものではありません。そう思って、最終ページに進むと、電話相談窓口があります。実は、ここにからくりがあるのです。

業者に連絡すると「儲かるためには、有料コースに入る必要がある」と言われて、高額な契約をさせられます。すでにこの業者は消費者庁から行政処分を受けていますが、契約をしても簡単に稼げるような仕組みにはなっておらず、さらに「あやパン」やVTRの成功者は、すべて架空で役者が演じていたといいます。

実際に電話をかけてみると

では、実際に悪質な業者に電話をかけると、どうなるのでしょうか?

私は、テレビ番組の企画で「月収300万円以上目指せる」と謳う、情報マニュアルを5千円で購入してみました。内容は、やはりひどいもので「ブログを作り、そこに企業のアンケートを載せて、高額の報酬をゲットする」とありますが、肝心な稼ぐ方法の記載はありません。そこで、業者に連絡しました。

秋田(仮名)という男が出てきて、最初こそ「ご購入ありがとうございます」と紳士的な対応でしたが、ものの数分で「当社には『SS』『A』『B』『フリー』のコースがあり、あなた様は、収益目標が月収100万円の『B』コースが良いですね。55万円の契約になります。いかがでしょうか?」「月収をもっと稼ぎたい人は、手厚いサポートをする『SS』コース100万円も良いですね。どうでしょうか」と、しつように勧誘を始めてきます。

しかし、ここで「はい」と頷くわけにはいきません。なぜなら、口約束でも契約は成立してしまうからです。多くの人は契約書を書いてから、契約の成立と思う人が多いのですが、そうではありません。電話勧誘では、「はい」と同意した時点で契約は成立します。男もそれを十分にわかっていて、私から「はい」といわせようと必死です。

「本当に儲かるんですか?」と尋ねると、「僕らがしっかりとサポートします。お任せください。いかがでしょうか?」さらに「お金を払って損したことはないのですか?」と質問すると、「一人もいないのです。あなたを笑顔にする自信があります。ぜひ、やりましょう!」と。

どんな質問をしても、契約を取り付けるような展開に持ち込みます。私が押し黙ると、「では、すぐに、ご決済を取らせて頂いて、すぐにスタートしましょう」。

反撃に出る

あまりに強引なので、私は、反撃に出ました。

「このマニュアル5千円の価値ないですよ!」

相手は一瞬、驚いたようでしたが、手慣れたもので「それは、弊社に対する悪口です」と切り返します。「悪口ではありません。一体、どういう方法で稼ぐんですか? そういうのが、マニュアルに書いてあると思って、5千円で買っているわけですよ。でも書いていない!」

「だから、電話で説明している……」。しかし、言葉を遮って「全然、していないじゃないですか。電話で契約をさせるために、5千円でマニュアルを買わせているようにしか、思えない」。

「こちらは、ちゃんとした会社ですから(そんなことはありませんよ)」
「ほう、ちゃんとした会社なのですね。では、住所はどちらですか?」
「HPに書いてありますよ。東京都〇〇区〇〇です。」
「本当に、そこにあるんですね」
「はい」
「実は、事前にその場所に行って調べていますが、会社の場所は、ただの単身用のアパートですよね。今、行けば、(あなたは、そこに)いるんですね」
「はい」
「会社の人は、(みんな、そこに)いるんですね」
「15人いますよ」
「いるわけないでしょう」
「本当の事務所の場所をちゃんといいましょうよ」

すると、「携帯電話の電波が悪いようで……」と言い出します。「そういったごまかししないの!」と一喝するも、ガチャリ、と電話は切れました。

当然、私は許しません。間髪入れずに再び電話をかけます。

「嫌なことでもあったんですか」

「秋田さんはいらっしゃいますか?」
「少々、お待ちください」
「お電話変わりました。秋田です。」しかし声の主が明らかに違います。
「声が変わりましたね。あなた、本当に秋田さんですか?」
「ええ」
「それでは、私が先ほど、何を言ったか覚えているよね、言ってみなさいよ」

ちょっとした沈黙ののちに、「私は秋田じゃないです」と言います。「そうでしょう。嘘を言わないでください。なんで嘘をつくんですか」そして、再び、契約をするか、しないかの口論が始まります。

「じゃあ、やめますか?」
「そうじゃなくて、あなたの住所を知りたいのです!」
「やりますか。どっちですか」

もはや会話が成立していません。私の追及をかわそうと、男は「なんでそんなにストレスたまっているんですか? 嫌なことでもあったんですか」と言ってきます。あまりに「何があったんですか?」を繰り返すので、「あなたに嘘をつかれたの。それがストレス」と言うと、再び、ガチャリと電話は切れました。

この種の業者は、「必ず儲かる」という、法律に抵触するような誇大広告を出して、興味を持った人を誘います。しかし、相手の言う住所も嘘で、しかも平気で他人に成りすまして電話応対をするなど、すべてが嘘で塗り固められています。他にも「儲からなかったら、返金しますので、ご安心ください」とも話していましたが、到底、信じられるはずもありません。

あの手この手で、契約に「はい」と言わせようとする、悪質な業者には、ご注意のほどを。

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