アース・ウインド&ファイアー「セプテンバー」と80年代の六本木ディスコ事情 1978年 11月18日 アース・ウインド&ファイアーのシングル「セプテンバー」がリリースされた日

アース・ウインド&ファイアー「セプテンバー」に乗せて思いを馳せた六本木のディスコ

音楽ファンなら誰しも一度や二度はこう思ったことがあるはずだ… 「もっと早く生まれたらよかったのに」と。例えば「あと10年早く生まれていたら、ザ・ビートルズをリアルタイムで聴けた」とか「グランド・ファンク・レイルロードの後楽園球場のライブを観に行けた」といった具合だ。ちなみに、僕の場合はこんな感じだった。

1978年に中学生になった僕は、毎月数千円のお小遣いを貰えるようになったので、次第にレコードを買いに行くのが習慣になった。小学生の時はエアチェック(死語?)だけだったから、当然の成り行きだ。そして、その頃に買ったのがアース・ウインド&ファイアーの「セプテンバー」。この曲によって、僕の「早く大学生になりたい病」が発症した。

どうしてかと言うと、六本木のディスコで毎晩アース・ウインド&ファイアーが流れているという話を聞き、どうしても行きたくなってしまったのだ。愚かなことに、好きな音楽を大音量で聴けて、きれいなお姉さんと仲良くなれる… と妄想を膨らませた訳だ。その頃の僕は既に『POPEYE』などの雑誌を読み始めていたし、六本木のディスコが「ポパイ少年」や「JJガール」が集う空間に変貌しつつあることも知っていた。しかし、当時の中高生にとって、六本木はあまりにも敷居の高い街、と言うより別世界だった。

大箱ディスコとユーロビートの台頭で激変した六本木界隈

その後、「レッツ・グルーヴ」が流行る頃には渋谷までは出掛けるようになったが、それすら勇気のいることだった。僕の自宅は練馬区で学校が文京区だったから、渋谷は明らかに生活圏外だったし、当時の渋谷は今よりはるかに大人の街であった。その上、更に青山トンネルを抜けて六本木に行くなんて、想像するだけで恐ろしい… そんな風に感じていた。だから、大学生になって堂々と六本木を闊歩できる日を心の底から待ちわびていたのだ。

ところがである。ようやく僕が大学生になった頃、その夢は儚くも崩れ去ることになる。六本木界隈の状況が一変したからだ。辺り一帯は『MAHARAJA』『AREA』など大箱ディスコとユーロビートに侵略され、『XANADU』というディスコ(後の『NIRVANA』)があった場所には『PARADISO』というカフェバーができた。その時、僕が何を思ったかは言うまでもない。

「もっと早く生まれたらよかったのに…」

Song Data
■ September / Earth,Wind & Fire
■ 作詞・作曲:Maurice White,Al McKay,Allee Willis
■ プロデュース:Maurice White
■ 発売:1978年11月18日

Billboard Chart
■ September / Earth,Wind & Fire(1979年2月10日8位)
■ Let's Groove / Earth,Wind & Fire(1981年12月19日3位)

※2016年9月5日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 中川肇

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