「仲間が馬鹿にされたから」 顔面をサッカーボールのように蹴りまくった男 私は法廷で被告人の正義ヅラに反吐が出そうだった

死にます、普通(写真はイメージです)

「仲間や友人を大切にする」という考え方はだいたいの場面において良いこととされています。もちろん自分が大切だと思う人を守ろうとすることは素晴らしいことです。少年漫画ではありがちですが、仲間を傷つけられたり侮辱されたりした主人公が怒って敵をやっつけるような展開のものはたくさんあります。誰もがそういったものを1度は読んだことがあるのではないでしょうか。漫画の中のお話であれば読んでいて感動することもありますし、悪い敵が倒されるのを見るのはとてもスッキリするものです。

しかし、現実の社会の中で「仲間を大切にする気持ち」をもし漫画のように発揮し行動に移してしまえばどうなるのでしょうか。

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傷害罪で起訴された石崎秀章(仮名、裁判当時21歳)の犯行動機は、「仲間を侮辱されたから」でした。

彼は高校中退後、上京してきて事件当時は建築会社で勤務をしていました。仕事終わり、同僚2人と都内の居酒屋で呑んでいた彼らは近くの席で1人で呑んでいた被害者男性と意気投合し一緒に呑み始めました。

しばらく一緒に呑んでいた彼らでしたが、おそらく呑みすぎたためでしょう、彼の同僚の1人が吐いてしまいました。被害者は吐いてしまった男性に対し、

「汚い」

などと言い始めました。その言葉を聞いた時の感情を彼は法廷ではこのように話しています。

「仲間を侮辱されている、と思いました。なめられてる、と思って腹が立ちました」

彼らは被害者に対して

「表に出ろ」

と外へ連れ出し殴る蹴るの暴行を加えました。暴行を加えたのは起訴されている石崎だけのようです。犯行を目撃した人の証言では、

「犯人は無抵抗の被害者の顔面をサッカーのボレーシュートみたいに蹴ってました。その後、血まみれになってる被害者をそのままにして『ヤベエ、ヤベエ』と言いながら逃げていきました」

被害者は顎の骨を骨折するなど全治4ヶ月の重症でした。事件後2ヶ月以上は話すことができなくなったばかりでなく、固形物を食べることもできなくなり流動食での食事を余儀なくされました。

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「酔ってたので感情的になってしまいました」

「酔ってたので顔を殴ったりしては危ないとわかりませんでした」

「酔ってたので被害者を置いて逃げてしまいました」

このように被告人質問では「酔ってたので」を連発していました。

しかし暴行に関して聞かれた時だけは、

「殴る時も蹴る時も手加減はしていました」

と答えています。暴行時も当然酔っていたはずですが、彼の証言によればこの時だけは何故か冷静な判断ができていたようです。

彼には前科前歴もありませんし、少年時の非行歴もありません。今までに酔って人に暴力をふるったこともないそうです。

しかし、今回酒を呑んで刑事事件を起こしてしまったことを踏まえ、

「当分はお酒は控えようと思ってます」

と、今後の酒とのつきあい方について話していました。

無抵抗の人の顔を蹴るという犯行です。被害者が亡くなってしまったかもしれない危険な行為であることは言うまでもありません。

被害者との間に示談が成立していることもあり執行猶予付きの判決にはなりましたが、「酔っていたから」で済むような話ではありませんし「当分はお酒を控えよう」という彼の言葉を被害者が聞いたら何を思うでしょうか。

仲間を馬鹿にされて腹が立つ、ということは理解はできます。しかし、この場合はただ単に「仲間のために」という大義名分をつけて暴力で相手を屈服させたかっただけのように感じます。

自分の暴力行為の正当化のために「仲間」を持ち出すという彼の考え方は「仲間想い」という言葉から最もかけ離れたものです。どんなに美しい言葉で表面を取り繕ったとしても中身が悪意ならそれは単に悪意でしかありません。

暴力をどう理由付けしたところで暴力以外の何物でもなく、現実の社会では刑事罰の対象なのです。(取材・文◎鈴木孔明)

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