ホンダ田辺TDブラジルGP優勝インタビュー:「セナと本田宗一郎さんのふたりに胸を張れる結果が出せた」

 2019年F1第20戦ブラジルGP決勝はマックス・フェルスタッペンがレースをコントロールし、今季3勝目を達成。チームメイトのアレクサンダー・アルボンはラスト2周のところでルイス・ハミルトンと接触し、惜しくも初表彰台獲得はならなかった。しかし一方でトロロッソ・ホンダのピエール・ガスリーが2位に入り、ホンダ製エンジンを搭載したマシンのワンツーは1991年鈴鹿以来の快挙となった。ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターにレースの感想を聞いた。

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──まずは今シーズン3勝目、おめでとうございます。率直な感想をお願いします。田辺豊治F1テクニカルディレクター(以下、田辺TD):うれしいです。レッドブル・ホンダにとって今シーズン3勝目に加えて、トロロッソ・ホンダのガスリー選手が2位に入り、ワンツーということで。

──フェルスタッペンは横綱相撲でした。田辺TD:いろいろあった中で、マックスは予選のQ1からQ3までトップタイムでポールポジションを確実にとり、スタートを決めて、ハミルトンのペースを見ながらレースを展開できました。チームのストラテジーも良く、ある意味危なげない勝ち方ができたかなと思います。

── 一方、アルボンは残念でした。田辺TD:アルボン選手も予選ポジションを守って確実に走っていて、色々あった中で最後はフェラーリを従えて走ってくれた。ラスト2周はタイヤを交換したばかりのハミルトンとの戦いとなり、厳しい状況の中、果敢な走りで、ああいう結果(接触)になってしまいましたが、一時はレッドブル・ホンダがワンツーで走るような状況を作ってくれた。彼が今年新人ということも考えると今後に向けて心強いレースが見られたかなと思います。

──そのアルボンに代わって、表彰台にガスリーが上がりました。田辺TD:トロロッソに関してはガスリー選手が予選7番手で、(ルクレールのエンジン交換ペナルティによる10番手降格で)6番手からスタートしました。中盤の激しい戦いの中できちんと予選で良いポジションをとって、そこからスタートして、ポジションをキープして、最終的に中団を従えて走る中で前のトラブルがうまく作用して2位。ホンダとトロロッソ、そしてレッドブルがきちんとした形でワンツーでフィニッシュしたことは、非常に良い結果だったと思います。

(ダニール・)クビアト選手に関しては最終的に10位でポイント取れるところまで頑張った。ミスで16番手からのスタートでしたが、他のチームと戦う中で最後まできちんと走れた、ペースも良かった。

2019年F1第20戦ブラジルGP ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)が2位表彰台を獲得

■今もブラジルで絶大な人気をもつアイルトン・セナ

2019年F1第20戦ブラジルGP 1988年にアイルトン・セナが搭乗していたマクラーレンMP4/4をドライブするブルーノ・セナ

──今年はセナが亡くなって25年目のブラジルGPということで、ブルーノ(・セナ)がマクラーレン・ホンダを走らせるイベントがレース前に行われました。田辺TD:私もレース前にMP4/4が走る姿を、見ていました。スタンドからはセナ・コールも起こって、物凄い応援でした。いまでも多くの人々から愛されてることを肌で感しました。そして、あらためてセナの偉大さを実感しました。

 そのブラジルGPで勝てたのは良かった。今日はもうひとり天国から見てた人がいました。本田宗一郎さんです。ふたりにも、胸を張れる結果が出せたんじゃないかなと思います。

──終盤、ホンダPU搭載車がワンツースリーになりました。あのときはどういう心境でしたか。田辺TD:うしろにタイヤ交換したばかりのルイス(・ハミルトン)がいたので、まだまだ楽観できる場面ではなかった。そうはいってもピットイン・アウトの見た目の順位とかではなく、あと残り2周という状況でのワンツースリー。どうなるんだろうと……。

──ホンダ製エンジンのワンツーは91年の鈴鹿以来という快挙でした。田辺TD:同チームのワンツーなら過去にも経験はありますが、異なるチームでワンツーは珍しい。われわれはレッドブルとトロロッソのコアになっているレッドブル・テクノロジーとも一緒に仕事してます。そういう意味で、レッドブル・グループにとっても非常に素晴らしい結果になったと思います。

──フェルスタッペンはレースの序盤はスタートダッシュしてすぐに2秒離しましたが、そこからは差が広がりませんでした。広がらなかったのか、それとも広げられなかったのでしょうか。田辺TD:基本的にタイヤをマネージメントしてました。序盤にプッシュすると(デグラデーションが)心配されますので、後ろを見ながらという話でした。

■協力パートナーとともに成長を続けるホンダ

──後半にハミルトンが迫ってきたときは、エンジン的にもかなり攻めた使い方をしたんですか。田辺TD:一応頑張っていました、ガスリーとアルボンは。マックスはまあまあです。

──ハミルトンとのバトルはハンガリーGP以来です。あのときは逆転負けしましたが、今回はその借りを返したといった感じでしょうか。田辺TD:そうですね。向こうは、もう1回ハンガリーと同じことを狙ってきたようでが、今回は届かなかったという感じでしょうか。

──今回は速さだけではなく強さもあったと思います。田辺TD:アルボンの走りも強さがあったと思いますし、ガスリーの走りも強さがあったと思います。

──今回の勝利は、ホンダの強力なターボが大きく貢献していたと思います。そのターボにはホンダR&Dのテクノロジーが入っていたと聞いています。田辺TD:初優勝のときも述べたと思いますが、ホンダだけでなく、昨年からパートナーを組んでいるトロロッソ、そして今年から組んでいるレッドブルと共に、ホンダは成長し、パフォーマンスを向上させてきました。

 当然ホンダとしても開発の手を緩めることなく、ここまでやってきました。今回、こういう結果を得られて、オーストリアに続いて、皆さんにありがとうと言いたいですし、これからも一緒に頑張りましょうと伝えたいと思います。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

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