出産後に赤字転落した20代夫婦、固定費が圧迫し貯蓄50万円

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、結婚後すぐにマイホームを購入した20代の若い夫婦。子どもが生まれると家計が赤字に転落し、貯蓄が減る一方だといいます。FPの横山光昭氏がお答えします。

地方在住の20代の夫婦です。結婚後すぐ、実家に勧められたことと、多少援助してもらえるということで、マイホームを購入しました。その後、子どもが生まれ、9か月経ちました。子どもが生まれる前までは、住宅ローンがあってもなんとか家計管理を頑張り、毎月少し貯金できていました。ですが、子どもが生まれてからは家計を管理するゆとりがなく、赤字続きになってしまいました。そう多くない貯金が減る一方です。ボーナスは貰えていますが、自動車税や固定資産税、結婚式のご祝儀などでなくなってしまいます。

来年ぐらいにはもう一人子どもが欲しいと思っていますが、このままでは貯金がなくなってしまうのではないかと不安です。なんとか赤字を解消することはできないでしょうか。

〈相談者プロフィール>

・女性、25歳、既婚(夫:28歳、会社員)

・子ども1人:9ヵ月

・職業:専業主婦

・毎月の手取り金額:24.1万円

・年間の手取りボーナス額:約36万円

・貯蓄:約50万円(普通預金)

【支出の内訳(25.5万円)】

・住居費:5.4万円(住宅ローン)

・食費:3.6万円

・水道光熱費:1.2万円

・通信費:1.6万円

・車両費:2.1万円

・日用品:0.6万円

・小遣い:2万円

(夫1.5万円、妻0.5万円)

・生命保険料:3.7万円

・奨学金返済:3.4万円

・その他:1.9万円


横山:ご相談いただき、ありがとうございます。若いご夫婦ですね。しっかり家計のことを考えていらっしゃるようで、大変良いと思います。今の収入の中で上手く家計をやりくりしていく方法を考え、第2子誕生に備えておきましょう。

食費は絞れているけれど、家計を圧迫しているのは…

食費や日用品代など日々の生活での支出は、かなり頑張って引き締めているように思えます。それでも赤字になってしまい、貯金ができないというのであれば、もしかすると固定費が原因になっていると思えます。

固定費とは、毎月決まって出ていくお金のこと。これが多いと、自由なお金が少ないということになります。相談者さんのお宅では、住宅ローンをはじめとし、生命保険料、奨学金の返済といった固定費が支払いの大きな部分を占めています。また、金額はそれほどではないかもしれませんが、通信費や自動車にかかるお金も合わさると、結構大きな金額になります。このあたりを見直せると、少し家計はラクになるのではないかと思います。

固定費は一度見直すと、翌月も、翌々月もずっと支出を抑えることができます。改善効果がとても高いのです。

ただ、奨学金は支払方法の見直しが難しいかもしれません。また住宅ローンを急に借り換えることも難しいでしょう。その効果が出る条件を満たしているかどうか、実際どの程度の効果があるかを、調べたりシミュレーションサイトで試していただいたりして、ご検討いただくのがよいと思います。

ですが、生命保険は見直す価値があると思いますし、スマートフォンの契約も、今は安いプランが出されていますし、通信業者を変えると安くなるということもありますから、情報を集めてプランの見直しか業者の見直しをしてみるとよいと思います。

生命保険料は収入の5%が目安、必要な保障にだけ加入を

固定費の見直しの話をしましたが、相談者さんのご家庭の生命保険料は、収入に対して少し多めなように感じます。内容はわかりませんが、きっと貯蓄性のある保険も含まれているのではないでしょうか。保険は本来、「保障」と「貯蓄性」の二つに分かれます。この貯蓄性の割合が多くないか、一度確認してみてください。

生命保険料は、一般的に収入の5%前後にするのが目安です。ただ、それで必要な保障が揃えられないという場合は7~8%程度でもいいでしょう。相談者さんの場合は12000円~19000円程度が目安です。一般的に、貯蓄がなく必要な保障を得ようとするだけで、このぐらいの金額になってしまうことは多々あります。そうなると、貯蓄性のある保険にまでお金が回らないのが現実なのです。保険の重要性を考えると、いまは特に“必要な保障”にだけ保険の役割を持たせるべきです。

お子さんが生まれたご夫婦の場合、病気になった時の入院費や生活費を補てんしてくれる「医療保障」、夫に万が一のことがあってもお子さんなどの生活を保障できる「死亡保障」を最低限そろえておくと望ましいでしょう。また、公的な制度として、病気になれば高額療養費制度、亡くなってしまった場合は遺族年金がありますから、それらを踏まえて自分やご家族にはどういった保障が必要なのかを考えるとよいですね。

貯蓄が十分にある方ですと「保険に入らなくてもよいですよ」と言えるのですが、相談者さんのようにお若いご夫婦の場合は、貯蓄が十分ではない場合がほとんどです。自分に、または家族に何かがあった場合、どれだけの保障があると良いかを、ご夫婦でしっかり話し合い、それに備えるために保険を利用すると考えていきましょう。

貯蓄の目標は、まずは生活費の7.5ヵ月分

相談者さんご夫婦の今の貯金は50万円ほど。約2ヵ月分の生活費と同等です。第2子を考えると、出産費用だけでなくなってしまう金額ですので、お子さんが増える前に貯金ができる家計に戻しておく必要があります。そして、できるだけ早く生活防衛資金をきちんと確保できる家計にしていくことが大切です。

ご主人はいまは若くて健康ですが、1年後、1ヵ月後、明日のことは保障されていません。保険に入ったとしても、それとは別に、万が一に対応できるための貯蓄を作りましょう。準備しておきたいお金は、「生活するためのお金」と「生活を守るためのお金」です。

生活するためのお金は、イレギュラー支出にも対応できるよう生活費の1.5ヵ月分。生活を守るためのお金は最低限6ヵ月分、合計で7.5ヵ月分です。そのほか、ゆっくりと教育費や自動車の買い替え資金も貯めていくようにしましょう。7.5ヵ月分の貯蓄は、相談者さんの場合は約181万円です。少し遠いと感じるかもしれませんが、コツコツと頑張っていただきたいと思います。

また、児童手当が出ていると思います。これはどうしているでしょうか。生活費のあてにしなくてもよいということでしたら、お子さんのために貯めていくことも教育資金作りの1つの手段です。生まれ月によっても異なりますが、中学3年生の受給終了まで積立て続けると、200万円前後という金額になります。

お子さんが小さいうちに、改善できる部分はしておくと、その後がラクになると思います。将来をしっかりとしたものにするために、いま気が付いたことを頑張っていただけると、良い方向へ向かうと思いますよ。頑張ってください。

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