【プレミア12】「目指す野球が見えた」侍ジャパン、10年ぶり世界一の鍵となった敗戦

侍ジャパン・稲葉篤紀監督【写真:荒川祐史】

10月31日に行われたカナダ代表との強化試合を稲葉監督はポイントに挙げる

「第2回 WBSCプレミア12」で10年ぶりに世界一に輝いた野球日本代表「侍ジャパン」。17日に行われた韓国との決勝では、山田哲人内野手(ヤクルト)が逆転3ランを放って5-3で勝利した。4年前の第1回大会で敗れた雪辱を果たし、悲願の初優勝を手にした。主要国際大会で侍ジャパントップチームが世界一となるのは2009年のWBC以来となった。

 10月22日に始まった宮崎合宿から沖縄での2次合宿、台湾でのオープニングラウンド3試合、そして日本でのスーパーラウンド4試合と決勝と、実に1か月近い期間、稲葉篤紀監督とコーチ、選手は寝食を共にしてきた。コミュニケーションを重ねて結束力を高め、そして優勝を掴み取った。

 プレミア12優勝へと駆け上がる道中、稲葉篤紀監督には“ある手応え”を感じた試合があったという。韓国戦後にも、そして一夜明けた18日の取材対応でも、指揮官は10月31日に沖縄で行った「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2019」のカナダ戦をポイントに挙げた。

「強化試合のカナダ戦からですね。あそこで先に点数を取られて、そこから1点ずつ返していった。負けてしまったんですけど、あそこで目指す野球というのが見えてきた」

 この試合、先発の山口俊が2回に6点を失って大量ビハインドを背負う展開となった。それでも侍ジャパンは徐々に反撃。四球や犠打、相手の失策などに付け込んで得点を重ねて1点差まで詰め寄った。5-6で敗れ、不安を感じさせたが、この敗戦の中に稲葉監督は光を感じていた。

「敗戦の中で得たものがあった。選手が感じてくれて、バントもシーズンではしない選手にもお願いしたり、1点を取る大事さを理解してやってくれました」

 この少ないチャンスを、どうやって着実に1点に結びつけるか。カナダ先発のオーモンの前に序盤苦戦を強いられたこともあり、この試合の中で、後の「プレミア12」、そして東京五輪に向けて標榜すべき戦い方を見定めることができた。

 一夜明けた18日に、指揮官も「スピード&パワーを掲げてきて、それに変わりはないですが、連打をして点を取るというのは難しいと感じた。機動力とバントを使ってやっていく必要がある」と、東京五輪に向けた戦い方のイメージを膨らませていた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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